北海道の鯉釣り日記2025年 Seven StarⅡ

釣行日時 7月23日19時~
7月25日17時  
釣行場所・ポイント名 第二Nダム

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 上がる花火に足を止める人達。冷やしたスイカの甘味が乾いた舌を喜ばせる夏の盛り。その中で一人、頭の中に熱い絵を描く愚かな釣り人。蛹の中の蝶のように、今にもフィールドへ飛び出したくて仕方がない体は、ベッドの上で何度寝返りを打っただろうか。時が来て、汚れたDaiwaのキャップを深く被り、オニキスとヘマタイトを身に付ける。



 昼間の気温は36℃でピークを迎え、夕方まで暑さは終わりを見せなかった。仕事を切り上げてから約3時間。辿り着く苦行のフィールド。現在18時30分。全てのセットが終わる頃には真っ暗になってしまうだろう。まぁ、気ままにやろう。今回も二泊の時間を用意してきている。


釣り場まで二往復

ダムの水は嵩を増やしており、濁りもあって吊り橋の上から鯉の姿が見えない。濁りの下に居るのか居ないのか、どちらともおぼつかない。濁りは問題があるようなものではなく、寧ろこのくらいが此処での普通だろう。水温は22℃と思っていたよりは上がっていない。


 前回の釣りでは、寄せエサを多めに撒いて効果を持続させたことが釣果に繋がったと考えている。今回もそうするが、ボイリーは前回の 「スクイッド&レバー」 の在庫が切れ、別のものを使うしかない。あまり刺激の強いボイリーでそれをやってしまうと、ウグイにやられてしまう危険性があるため、低刺激の物を選び、カープロードの 「スウィートコーン」 を選んだ。

 竿やロッドポッド、仕掛けと組んでいく間に空は暗くなり、目標とする向こうの島が見えなくなってしまった。だが、ラインにマーカーを着けてキャストしていたのはもう過去のこと。感覚だけで充分だ。

 仕掛けは前回釣行記参照。ブローバックリグに 「スウィートコーン20mm」 + 「スウィートコーン ワフター15mm」 でスノーマンスタイルに。20mmに五つPVAストリングスを通し、針に結びつける。

春に活躍したスウィートコーンをスノーマンで

 仕掛けはこれでいい。次にフィーディングだ。低刺激の物を多く撒くというスタイルなのでパウダーベイトは 「巨鯉Ⅱ」 を単品でダンゴにし、スウィートコーン16mmと共にベイトロケットで釣り場正面から上流、中、下と打ち込む。そしてメインの仕掛けをその中と上に配置するようにキャストした。

寄せ餌は低刺激のものを多めに撒く

 時間は待ってくれない。次は自分の居住環境のセットだ。テントを張り、シートを敷き、マットを敷き、寝袋を入れる。テントの横にはクーラーバッグ。そしてピクニックバスケットとランタン、蚊取り線香。どれだけ汗をかいただろうか。これは昼間にやらなくて正解だ。

テントとチェアもセット完了

 腰を落ち着けてコーラを飲んだのはもう21時に迫る頃になっていた。どうかうまくいきますように。そう思っていると、タックルボックスの方から小さな物音。ヘッドライトで照せば、出しっぱなしになっていたボイリーの袋をネズミが抉じ開けようとしていた。待て、お前にはあげない。追っ払ったネズミを見て、私も腹が減っていることに気づいた。クーラーバッグから買ってきた串団子を取り出す。疲れている時にはどうしてこう甘い物に癒されるのだろう。

●もう夜中になってしまった ●疲れた時は甘味を

 改めて落ち着けば、染み渡るのは自然の音。アマガエルの声に被せるようにしてツチガエルが鳴いている。キリギリスがあちこちで刻み、鹿の鳴き声がすると思えば吊り橋よりも奥の浅場にエゾシカが入り込んでいた。ダムの下流からは魚の跳ねらしき音も聞こえてくる。風は無く、気温は21℃まで下がって火照った体を静かに冷ましてくれた。

 23時。二番竿のアラームが一度だけ鳴ったが、それ以降動きがない。流れは弱く、草が絡んできたというわけでもなさそうなので、多分ウグイの悪戯だ。今の感じならばボイリーは取られていないと思う。エサ換えは日付が変わった後とする。

 雲がなく、吊り橋から見上げて満天の星空に心を掴まれた。去年の最後の釣行の夜もこうして星を見た。あの時の星は明るく賑やかに瞬いていたが、今夜の星々は静かに空に敷き詰められている。こんなに窮屈そうな星を見たのはいつ振りだろう。釣り座に戻っても頭上の木の葉と木の葉の間から星が覗き、まるでイルミネーションを飾られてるようだ。リキュールに口をつけながら、煌めく天井を見上げる。この場所のこんな顔は初めて見る。色も音も光も、北海道の刹那的な夏を流麗に語る。



 ■二日目

 午前0時20分。一番竿がウグイらしき反応を見せた。1分程様子を見るが、掛かってしまったようだ。前回、動物系のボイリーを使って一度も反応の無かったウグイだが、それは非常に濃いマッドコンディションであった時以外では初めてだった。今回はきっちり登場してくれた30cm程のウグイ様。あまり来ないでくれと仲間に伝えてほしい。


やっぱり来てしまったウグイ様

 一度アラームが鳴った二番竿も回収するが、こちらはエサ、仕掛け共に異常無く上がってきた。さて、エサ換えだ。セット済みの仕掛けを入れたボックスに、隙あらば飛び付こうと狙うネズミに気をつけながら、ウェーディングでキャストする。
魚の活性は高いようで、跳ねの音が頻繁に聞こえてくる。それでウグイの活性も高いという訳か・・・。

 ウェーダーを脱いだら、チェアと飲み物を持って吊り橋に上がり、また星空を仰ぐ。去年の秋にもこんなことをやって、冷えた空気に震えてテントに戻った。今夜はもう少し長く橋の上に居られそうだ。チェアの背もたれに頭をかけて天体観測もどき。北斗七星、カシオペア、それと蛇行しながら飛ぶ何か。水面に映る山と揺れる星。強い光を放ちながら落ちる流れ星にはっとさせられ、あれを最後に見たのがもう10年も前のことだったということに驚く。


吊り橋にチェアを持ち込んで星を眺める

見たことで運を使い果たしたなんて言わないでくれよ?横になり、テントの天井にぶら下げたランタンの明かりを切る。

 午前6時頃、自然と目が覚めた。結局アタリはないまま一夜が明けてしまった。昼間はあまり期待出来ない場所だが、やるだけやってやろう。両竿共回収してボイリーの無事を確認。続いて、改めてフィーディングをする。寄せエサを多めに撒いたのが前回ボウズを逃れた理由ならば、今回もそれに倣って、ポイントにダンゴとボイリーの存在を多く持続させる。ウェーダーに小さな穴が開いたのが物凄く癪に障るが、致命的なものではないし、この場で修復できるだろう。仕掛けも入れ直して朝の一仕事が完了。ミンミンゼミが鳴き、もう猛暑の頭角を現している。


 午前10時。気温は容赦なく32℃まで一気に上昇した。ダムの水は流れ出しているようで、水位は低くなった。橋の上から小鯉の遊泳を確認。どの鯉も夢中でエサを探している。チャンスはある。だけど橋の下の小鯉はいつだって見られる。釣れた時だって釣れない時だって。油断も期待も出来ない。夕方までこのままやってみるしかない。

 二泊三日でボウズを食らったとしても、「それじゃあ赤字だね」 なんて言われたりしても、それ相応の対価は充分に手にしていると思うから私は此処へ通う。ボウズだから楽しくなかった、などと不貞腐れるような精神では、望んでいたはずの一入の喜びも、それに繋がる一縷の時機も手に入らない。私の釣りはボウズがあって尚も生きんと血潮が巡る。


キクイモモドキとヒカゲチョウ

 正午。ダムの水はかなり減水しており、水温は25℃まで上がっていた。その恩恵なのか浅場の鯉が多く流入して土煙を上げている。ここまでアタリや変化は何も捉えられず、日向では温度計が37℃と示す気温であるため散歩も出来ない。釣り座では丁度木陰になり、また風もあるので昼を凌げるが、熱中症などの体調不良だけは注意が必要だ。


●夏らしく赤と青のラムネを
●熱中症対策は必須

 17時。このままではまずい。二つ目のプランを実行しよう。前回のガルプカープのボイリーは前回使用したものの他に 「パイナップルフィーバー16mm」 を入手している。古いものでもフルーティーな香りは健在で、質も前回の 「スクイッド&レバー」 よりは良さそうだ。これを 「スウィートコーン」 と一緒に使い、パイナップルフィーバーの香りでアピール力を増す。仕掛けにはスウィートコーン16mm、一緒にパイナップルフィーバー16mmのコンビのダブルベイツで攻める。フィーディングも夜に向けてやり直すため、また 「巨鯉Ⅱ」 単品のダンゴと二種類のボイリーを撒く。ウグイが多くなる怪訝があるが、鯉も一緒に寄ってくれれば御の字だ。


●スウィートコーンとパイナップルのコンビで
●寄せエサのボイリーも2種類撒く

 フィーディング中、キャストしたベイトロケットが投げた先で突然動かなくなった。よく見ると対岸近くでゴミが帯状になって流れてきている。重たくなったベイトロケットを少しずつ引き寄せて回収すると、切れた水草がごっそりと上がってきた。この流れ藻の帯が通過し終えないと次のキャスティングが出来ない。待つこと15分。やっと作業を再開出来る。草が流れ去ったと分かるのは明るい時間帯であるからだ。これが夜なら唯々混乱していただろう。


目標地点に流れ藻が 過ぎ去るのを待つしかない

仕掛けを投入して第2ラウンド開始とするが、急に水の流れが速くなった。また水草が絡み付く。挙げ句の果てには陸生植物の根がラインを襲い、二本共引き上げなくてはいけなくなってしまった。そんな時に起きたライントラブル。何故こう絡まるのか分からないようなそれは、私の指を煩わせ、結局仕掛けを組み直さなけばならなくなった。大きく傾いてゆく陽は、本当はゆっくりと橋の上から見送りたかった。全ての復帰に1時間も要し、やっと床を据えることができたのは19時を越えた頃になった。波乱から始まった第2ラウンド。大丈夫なのかこれは?まだこれからエサ持ちのチェックなどやることはある。何だか思ってたのと違うな・・・。まぁいいけど。


この漂流物のせいでライントラブル

20時30分頃、一番竿のラインが少し弛み、降りたスウィンガーをゆっくり上げながら再び張った。これは草などではない。アラームも鳴らさない小さなウグイのアタリだ。掛かっているわけではないようだが、仕掛けを上げるとボイリーが消えていた。打ち直したが、今度は21時頃に二番竿にアラームを鳴らす明確なウグイのアタリを捉えた。30cmクラスのウグイのお出ましだ。スパイスなどが入った動物性のボイリーでなくても、香りの強いボイリーを多めに撒いてしまうとウグイなどが活発になってしまう。それに今回はウグイの標的にされやすい固形物を中心にしたやり方だ。多少は覚悟の上だ。

 21時20分頃、またも一番竿にウグイが掛かり、そして二番竿の仕掛けのボイリーはウグイに噛まれたのだろう、半分崩れた状態で上がってきた。これはちょっと酷すぎないか?短時間でヒットするウグイが多すぎる。しかもエサ持ちまで悪いとなると面倒見きれない。食わせを戻そう。

 昨夜からウグイのアタリが少なかったスウィートコーン20mm+スウィートコーンワフター15mmのスノーマンに戻す。PVAにはスウィートコーン16mm2個とパイナップルフィーバー16mmも2個。そして大きさの違うエサだけを残されるパターンも考えて、針の近くに配置出来る位置にスウィートコーン20mmも2個着けた。これでどうなるか・・・。


●ウグイが酷いためスウィートコーンダブルに戻す
●PVAのボイリーの配置も変更

 背中の疲れに、横になりたいと体が言う。テントの中に飲み物とランタンだけ持って入り、小休止。いつの間に潜り込んだのか、サカハチチョウがマットの上で勝手にリラックスしていた。踏んでしまう前に外へ逃がしてやり、イヤホンでインストゥルメンタルを聴きながら眼を瞑る。


勝手にテントでくつろいでいたサカハチチョウ

 ■️三日目

 午前0時30分。突如として来た止まらないアラームに眼を開ける。キャップ、ヘッドライトを被り、カメラをポケットへ。ブーツを履くのも慌てず外へ出る。アタっているのは一番竿。竿を持ち、ドラグを締め、ラインを張りながら欄干代わりのロープをくぐる。くぐり終えたら竿を持ち直してファイト開始。魚は引っ掛かった草を背負いながらゆっくりと移動している。この草は魚と仕掛けのすぐ上にあるようなので藻切りは出来ない。竿を立てて距離を詰めると魚から草が外れたようで、ここから魚が本領を出し始めた。タモを眼前に潜り直そうとするがサイズは小さく、容赦なくタモの奥へ送り込んでやった。

 せめて70cm欲しいと思っていたがサイズは60台。疲れ知らずな奴で、暴れるのを止めたのはカメラのシャッターを下ろした瞬間くらいだ。色や形は前回の鯉と似た、銀色が強く、スマートな体型の鯉だ。落ち着けよ、と声をかけたくなる暴れ様なので、早々にダムへ帰してやった。


なんとか手にした一尾

 パイナップルフィーバーは寄せエサとしてのみ使い、食わせエサにスウィートコーンを使うのが正解だったようだ。新しい仕掛けをキャストしロッドポッドに載せながら、「まだ終るな」 「もっと続いて欲しい」 と釣れるようにすらなってないダムに、かけてはいけない望みをかけるのは、まだまだ最後まで諦めないという意志からくるもの。さっきの60がボウズ逃れの一匹で終わる未來なのだとしても、最後までやり遂げる事に意味がある。

 チェアに戻り、これを書いていると二番竿に怪しい反応。やっぱり来ちゃったか、ウグイの奴め。太くふてぶてしい雰囲気のやっかい者を丁寧にリリースし、作り置いているエサ、PVAをセット済みの新しい仕掛けをすぐにポイントに戻す。

 午前3時。朝の光がじわじわと星空を食い潰してゆく。もう暗くなくなった水面を背景に、タックルのシルエットが浮かぶ。最後の夜が終わった。


ピアニストの演奏動画を見ていると・・・

 携帯でピアニストの演奏動画を観ていた午前3時50分。曲が盛り上がると同時に来たアタリ。二番竿のアラームが持ち主を急かす。昔ならアラームを聞いた瞬間に形振り構わず飛び出していた。それがテントの中であればもう軽いパニックだ。だが、今では冷静になることを覚えた。慌てて息を荒げる必要はない。竿、ライン、鯉の各動作をしっかり眼で捉えてからファイトに移る。今度の魚も草に絡まれているが、ゴンゴンと首を振っている感触が伝わってくる。さっきのよりはサイズアップか?二匹目は70cm台の、これもまた勇ましい風格の鯉だった。引き締まった体に威嚇を表す張った鰭。良い鯉ではないか。


二匹目70台 勇ましさを魅せた一尾

 鯉をリリースして次に進もうという時に、またライントラブルが起こってしまった。鯉とのやりとり中に一番竿のラインに干渉してしまったのが原因だ。ほどいて組み直して1時間。やっと全てを元に戻して再投入できた。今回の私はテンポが悪い。

 まだアタリは続きそうだが、睡眠不足で視界が霞んで見えてきた。しょうがない、睡眠時間をとろう。今日も猛暑日となるので、暑くなるのを見越してテントの出入口は内側のメッシュ以外はファスナーを全開にして風が通るようにする。そしてマットの上に転がり、眠るか眠ってないかというタイミングで一番竿のアラーム。リールのクリック音は魚がかなり速い走りをしていることを表す。竿を持ってじんわりとテンションをかけると少しずつ大人しくなり、感触からして魚はかなり小さいことが分かる。岸に近くなるとまた深みへ戻ろうと暴れたが、タイミングを見てスルッとタモに入れやる。サイズダウンどころか60cmにも満たない小鯉。でも威勢のいいじゃじゃ馬な小鯉は好きだ。いつの間にかダムの水位が上がっていたので、足場から手でリリースすることが出来た。


●小さいが威勢のいい3匹目
●3日目の朝が明けた

 眠気がなくなったのはこの三匹目を上げたり、仕掛けを入れ直したりしていた瞬間だけ。すぐにテントに入って眼を閉じた。

 目を覚ましたのは10時を過ぎた頃だった。本当はもう少し早い時間に起きて、フィーディングとエサ換えをするつもりでいたのだが仕方がない。両竿とも回収。ウェーダーを履いてベイトロケットでボイリーのみを軽く撒き、次に仕掛けを入れる。手早く動かなければ、あっという間に日が傾いて終了時刻を迎えてしまう。


 正午。少々雲が出てきたか。気温は昨日ほど上がらず、釣り場では30℃といったところだ。昼間になるとアタリが遠いこの場所。去年秋はこの時間帯でもアタリが出たが、それは鯉の生活サイクルが変わっていたためだと思われる。例外的に前回の夕方にヒットがあった事を除けば、夏には一度も昼間にヒットしたことがない。だからと言って次のヒットの望みを全て失ったわけではなく、今回の作戦ならまた何か新しいものを見つけられる可能性もあるし、怠惰な釣りにはしない。


 15時少し前の頃。一番竿のラインに流れてきた草の塊が引っ掛かった。しかし何か変だ。草は下流ではなく、ゆっくりと上流へ動き始めている。竿を手にリールを巻くと、草が滑り落ちる感触と共にその先に重いものが付いているのが分かる。まさか、鯉か?水位が下がっているダムに立ち込み、ラインの草を避けながら距離を詰めていくと、これまでの鯉よりも少し大きい魚体が見えた。鯉はあまり体力を使っていないはずだが、思ったよりも攻撃的な動きをしないので難なくランディングに成功。これまでと全く印象の違う鯉を持ち上げアンフッキングマットに下ろす。サイズはギリギリ80cmといったところで、金色を帯びた鱗が鈍く輝く。これは喜んでいいと思う。まさか昼間に、しかも80台が出るなんて。


これまで不利だった昼間に予想外の80

16時30分。ダムの流れが速くなり、同時にさっき鯉をリリースした時よりも減水が進んで底が露出している。水位が釣果に影響するかが気になっていたところだが、増えていても減っていても、釣れる時はどちらでもアタリが来ている。特に明確な差は無いように思える。


減水時でも増水時でもヒットはある

 今回の釣りももう終ろうとしている。あぁ、やり切ったといえる満足感だ。もう釣れないだろう。というか釣れなくてもいい。ただ竿はこのまま出して仕掛けは水中に入れておきたい。それは釣りをしているというシチュエーションだけで楽しいと思えるからだ。小学生の時、まだ自由に釣りに行けなかった時は、こうして糸を垂らしてウキを眺めているだけで最高の時間を過ごせていた。ウグイの子1匹釣れなくたって、魚に会える可能性があるだけでよかった。その時の精神が今も存在しているということだ。


終了間際の釣り場

 17時。最後のブラックストーンの火を消し、荷物を纏める。次はいつ来られるだろうか?まだ夏であれば、本当に夏の此処を克服出来たのか確かめたいし、秋なら去年のような釣りがしたい。

 浅場の鯉ではなく、本流での本気の釣りをし始めてから、夏は釣れる時がたまにある程度で良い釣りが出来ず、終いには今回も釣れないと決めつけて怠惰に過ごし、釣れるわけがないような釣りをしてしまったこともあった。そんな紆余曲折あって今回の結果。エサの種類、寄せエサの撒き方、ポイント、そして鯉の活性と流入数、食い気。全てのリズムが合っていてのことかもしれない。ならば鯉のリズムを探り、私もそれに合ったビートで釣りをする。それがかなえば、今回の再現や、もっと良い結果を出せるかもしれない。初めて私に見せてくれたこのダムの優しい顔。その機嫌を損ねないように丁寧な釣りをする。それが私に課せられた次の任務だ。釣れてしまった、で満足する私じゃない。まだ納得していない自分が、自分自身に厳しく当たる。それは厳しすぎるくらいが丁度いいんだ。私はまだまだ修行僧なのだから。