北海道の鯉釣り日記2025年 Seven Star

釣行日時 7月11日19時~
7月13日17時  
釣行場所・ポイント名 第二Nダム

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 夏至の落陽を見送り、小暑の朝に何を思う。私が本気になれる釣りの時間をどこでどう過ごそうか。それはあのダムかあの池か。前回の釣行記を書いてから約2ヶ月。これまで募った想いは重なって平たく押し潰され、実行に移すのに何から行動を始めれば良いのか分からなくなっている。どうか天気だけは良くなりますように。私が本気で釣りをしようとする日に限って、まるで貧乏草でも摘んだかのように雨が降る。出来るだけ早く釣行を重ねなければ。季節の尻尾を掴み損ねてシーズンオフなんて御免だ。

 ■7月11日

 予定外に釣りに行ける時間が出来た。あまり芳しくない体調ではあるが、釣りをしているうちに良くなると思って車を出した。向かうは第二Nダム。去年秋に良い釣りが出来たが、夏場でも通用するだろうか。

 14時。山を越えてダムに到着した。キャリー二台分の荷物を携え、どこからか現れた美しいコムラサキが一頭、私と一緒に橋を渡る。その橋の下の浅場には小鯉が見られ、水の色も悪くないことで一応は安心出来る。やはりというか、夜に雨が降るという予報が出てしまっているので、まずはテントから設営して濡らしたくない物や私自身が避難できるようにしよう。

寄せ餌は低刺激のものを多めに撒く

気温は23℃と低く、水温も22℃となっている。今回狙うのも去年と同じ向こう側の島の際から数メートル離した、飛距離65~70m地点とする。エサは古のガルプカープのボイリーがいくつか手に入ったのでそれを使ってみる。10年程前のものだが、使えないこともなさそうだ。香りは健在。ただ水分を含み、若干柔らかくなっているのが注意点だ。エサ換えのタイミングを考える必要がある。

 エサとするフックベイツはガルプカープ 「シーフードワン20mm」 とダイナマイトベイツ 「クレイブ ポップアップ15mm」 のスノーマン。PVAストリングスにシーフードワンを4個数珠繋ぎにしたものを針に縛る。

オモリ部(セイフティーシステム)
ユニット:コバートシンキングリグチューブ50センチ、コバートテールラバー、カープセイフティレッドクリップブラウン三角オモリ35号ブラック

仕掛け:(ブローバックリグ)
 ハリス:アモ グレーベル/クレイ 25lb
 針:伊勢尼15号

寄せエサとして 「巨鯉Ⅱ」 と 「スーパーワンスペシャル」 を組み合わせたダンゴに、「シーフードワン」 と一緒に手に入った 「スクイッド&レバー15mm」 をベイトロケットでポイントとその下流に投入する。

 ここはやはりウェーディングの方が投げやすい。ダムに立ち込み島へ向かってキャスト。二本の仕掛けをポイントに落ち着かせ、ロッドポッドに寝かせると穂先が下流へと大きく曲がった。水の流れは強いみたいだ。夕陽の反対側で雨を降らせそうな鉛色の雲が迫ってきている。どうしてこうも雨に好かれるのだろうか。まぁ、予報を見るに長く降り続ける雨にはならないだろう。

ダムの水は嵩を増やしており、濁りもあって吊り橋の上から鯉の姿が見えない。濁りの下に居るのか居ないのか、どちらともおぼつかない。濁りは問題があるようなものではなく、寧ろこのくらいが此処での普通だろう。水温は22℃と思っていたよりは上がっていない。

さあ始まったぞ、釣れない釣りが。今回も二泊の釣行を予定しているが、タモが濡れることはあるだろうか。リキュールを1本開けながら、今後の展開を思う。

 17時。小雨の到来に身を潜める。雨が頭上の木の葉に溜まり、それが大きな滴となってテントに落ちてくる。だが、一時間もしないうちに止んでくれた。テントから出てチェアに戻る。悪かった体調も回復した。心の準備は十二分に調った。



彩る。蚊取り線香芳しく、感じるもの全てが普段の生活にない非日常。ここに来れただけでも良かった・・・なんてね、ちゃんと釣る気でいるさ。

 カチッという音が時折聞こえてくる。アラームは鳴らないがリールのスプールが1ノッチずつ回っている。竿を手に取れば思ったとおりにラインが草を絡めて上がってきた。もう片方の二番竿もまた同じ。まだエサ換えをするつもりはなかったが、仕掛けまで上げてしまったので、ボックスに用意してあるセット済みの仕掛けに付け替えてキャスト。回収したボイリーに傷はない。シーフードワンはかなり柔らかく変質していたので心配だったが、問題はなさそうだ。

 22時。気温は17℃まで落ちたが、水温は22℃をキープしている。草の絡まりでラインが出されてしまうことの対策として、穂先を高く掲げられるようにロッドポッドの脚を伸ばし、ドラグも少し強めたが、今穂先を見る限り、特に下流へ向かって曲がっていかないことから、流れが弱くなったことが分かる。夏であれば釣れるのは夜なんだ。ケラケラと鳴くアマガエルの合唱は声援か嘲笑か。二泊三日の釣りを開始してたったの数時間なのに、もう 「ボウズを食らう」 のではないかと何故か不安が大きくなっている。やる事をやって、それならそれで正直な気持ちで現実を食らえばいい。何が悪いのか、と考えるのは早くて明日の夕方。いや、釣行終了後でいい。引き出しは多く用意していて、ベイトボックスなどまるで安いレストランのように様々なエサがある。だからといって釣行中に迷わないように。引き出しの多さは、いま正解だと思っている釣り方の信念を惑わせる。余計な事をして結果の出方を曖昧にしてしまう諸刃の剣。それで何度この手を切ったことか。


このような藻がラインに絡んでくる

 ■️7月12日

 午前0時10分。気温の低下で冷えた体をテントで温めていると、一番竿のアラームが反応した。最初は単発で鳴るウグイのようなアラームだったが、リールのクリック音とアラームが急に激しく鳴りだしたことでヒットを確信した。魚は私がテント内でモタモタしているうちに、対岸近くから左へ大きく湾曲してこちら向きに走った。そっちはまずい。流木が沈んでいるエリアだ。そしてそれらしき物に擦れる感触。やがてハンドルが巻けなくなった。嫌な予感を覚えながらも、一度掛出しをしてみるが外れない。今度はスプールを開けてラインを弛ませる。すると魚が動き始め、流木から離れようとしたところで、ラインを張らないままスプールを抑えて掛出しの動作をする。するとなんとか流木から外すことが出来た。現れた鯉は色白で細身の個体だ。鯉の入ったタモの柄を上げる腕は勝利を掲げる事を意味する。スマートでありながら力強く張る大きな鰭が勇ましい。70cmといったところか。このサイズでも、此処で釣ったことに意味がある。ボウズだって覚悟していたのだから、喜びも一入だ。

3時頃。二番竿のアラームがテントの外から私を呼んでいる。二匹目到来か?しかし外に出てよく見てみると、アラームが鳴ったのは鳥がラインにぶつかったためだった。仕掛けを回収し、ついでに一番竿もエサ換えをする。

 やうやう白くなりゆく山ぎは。もうライトも必要ない。どこからか小さく軽い口笛を吹くような寂しい鵺の声。トラツグミという小鳥がその正体だと知らなければ、確かに昔の人が不気味なモノノ怪の声だと思ってしまうのも頷ける。それよりも重要な魚の跳ねの音は遠いながらも頻繁に聞こえてくる。次はあるか・・・。ここ数日、病的に寝不足なのだが、この愛しい癒しの環境であれば眠れそうな気がする。シュラフにくるまり目を閉じる。

 二回程目を覚ましたが、竿に異変はない。そして三度目の就寝ではすっかり熟睡できてしまい、現在11時。気温は上がらず、日陰となる此処では21℃となっている。長袖のYシャツを着て、とても7月の気温とは思えない空気の中でこれを書いている。


 少しずつ気温が上昇し、待ってましたとばかりに蝉が鳴く。空に雲は無く、ふわりと蝶が目の前を通り過ぎてゆく。これが私の望んだ世界だ。久しぶりの解放感と開放感。どこまで満喫出来るだろうか。どこまで満喫しても、帰ったらまたすぐに此処に来たくなるのは明白だ。

 釣り場から少し離れたところに行ってみたい場所がある。そこは釣り場近くにある神社。昔からその存在は知っていたが、手を合わせたことはなかった。折角なので祈りを提げよう。手水舎に水は無く、賽銭箱も片付けられているが、ニ礼ニ拍手一礼で誠意を伝える。それだけで何か心強さを貰った気がする。鯉釣りは思い描いた通りに作戦を実行出来れば、あとは運と心の強さしか味方はなくなる。信心深い訳ではなくても、神頼みのようなことで強い心をホールドするのも手の一つだ。しかし願ったところで、祈ったからといって釣れてくれるほど甘い釣りではない。


釣り場の近くにある神社に挨拶を

 12時にエサ換えを行ったがエサ、仕掛けに問題はなく、15時を過ぎた今も仕掛けは同じような状態で返ってきた。やはり昼間は分が悪いのか、秋のようにアタリが続くことはないようだ。暗くなる前にまたフィーディングからやり直そう。それまではまたリキュールやブラックストーンを手に、橋の上からまるで水族館で観るように、泳ぐ鯉を眺める。


水族館代わりに浅場の小鯉を眺める

 次に動くまでにまだ時間がある。携帯の充電をしながらまた横になろう。目覚ましを18時30分にセットして体の力を抜く。眠れずとも目だけは閉じてリラックスタイムを設ける。

 18時30分。さぁ出動だ。フィーディングの内容は同じダンゴとボイリーだが、ボイリーの量を昨日より増やしておいた。続いて仕掛けを投入。こちらはこれまでPVAストリングスに シーフードワン4個を取り付けていたが、今回からはシーフード3個、 スクイッド&レバー 3個の計6個のボイリーをセットした。これは在庫の関係上、フィーディングに使えるボイリーがシーフードワンよりもスクイッド&レバーの方が多くなってしまったからである。ならばスクイッド&レバーを食わせにすれば良いかとも考えたが、あまりにも柔らかく変質してしまっていて、試しに仕掛けのヘアに通したまま振り回すと簡単に割れてしまうような状態だった。流石に使えないので食わせはシーフードワンとクレイブポップアップの組み合わせのまま続行する。


 20時を越えても空に残る光の名残。子供の頃、よく大人に 「9時には寝なさい」 と言われていた。眠れるわけがないじゃないか。だって、ついさっきまで昼間だったんだぜ?赤ん坊の頃から夜型だった私には酷なことだった。

 アマガエルの合唱が始まり、どこか遠くから花火の音。夏の夜の一幕がここにあり、また次にここに来る時、それがまだ夏だったら、また違う音や香りのする毛色の変わった一幕があるだろう。毎年のように此処へ通うが、同じような夜など一度もない。

 22時。果たしてアタリはあるのだろうか。ここまで珍しくウグイが全くアタってこない。これはどういった状況だろう。今夜、これまでの夏の此処らしくアタリが無いと決めつけた場合、去年秋との差は一体何か。此処での秋の釣りの経験は去年しかないが、特にシビアだとは感じなかった。回遊ルートが変わっていると考えるのが一番簡単だが、回遊ルートは何故変わる?何がそうさせる?本当に変わっている?

 気温は21℃まで落ち、かなり肌寒い。水温は昨日から22℃をキープしている。円い月が見守る夜の地上。合唱団から外れた蛙が、蜘蛛の糸を手に引っ掛けて四苦八苦している。糸をとってやると 「やれやれ」 と言わんばかりに枝から飛び降りていった。


蜘蛛の巣に絡まっていた蛙

 最近、私の趣味は何かと聞かれる事が多い。そして私はこんな釣れない釣りばかりをしていると正直に話す。何故そんなことをして楽しめるのか。この世界にいる人間なら当たり前の話だが、釣れない魚をいかに釣るか、そのために様々なアイテムと作戦を持って挑む。それでも鯉は手強く簡単に人間の罠を躱す。そして針を口にしてもそれを外すことが上手く、また引きも強くて障害物に巻かれたり、ラインを切られたりと難題の上に更に難題がある。鯉なんて誰でも知っている、鯉のぼりや公園の池にいる魚だ。でも1mを超える鯉なんて見たことがある人は少ないだろう。何十年も生きてそこまで成長し、そんな存在がいることは確かで、それを見たい、釣りという手段で手に入れたい。釣って美味しく食べようなんて世界じゃない。感覚的にはそんな存在に 「会いたい 」 のだ。幾つものプロセスを経て、釣れれば盛大に喜ぶ。釣った鯉には愛着がわき、〆て食べようなんて思えない。そんな話を人に語ってしまうと、特に女性には笑われたり、呆れられたりする。それもそうだ。男性にだって分からない世界だと思う。でもそんな男性も幼少期に 「大きなカブトムシが欲しい」 なんて思った事がある人がいるのではないだろうか。私のコレはその延長線上にあり、目標は夢とロマンに満ち溢れている。それを地でいくいい大人。子供っぽくてバカらしいと思われるだろうが、これもこれで男の生き方として正しいのではないかと思う。男には幾つになっても夢や野心、ロマンが必要だ。分からないなら笑うがいいさ。

■️7月13日

 0時を回り、3日目へと突入した。寒さでチェアには居られず、テントの中へと入り、シュラフに入りながら携帯を眺める。しばらく動画を見ていたが、一度目を閉じると開かなくなってしまった。

 午前4時。二番竿のアラームの響鳴に飛び起きた。出されるドラグ。スプールに手を翳すと止まったがかなり重い。しかしこれは魚だけの重さではないようだ。草がかなり絡まっている。しかしその状態でも魚はトルクフルに引きずりまわしている。タモに入ったのは70cm程の色白の鯉だった。なんとなく一匹目に似ているが、同じ魚ではないだろう。とにかく来てくれたことに感謝を伝えたい。水位上、タモでリリースするにも、手からリリースするにもやりにくい状態になっていた。ならば魚をタモに入れた状態で水中に入れ、ウェーダーを履いてダムに立ち込み、タモから出して魚にダメージを与えないリリースをする。


二匹目 草に絡まりながらも良いファイトをしてくれた

 一番竿も回収し投げ直す。思っていたとおりボイリーは無傷。スクイッド&レバー程ではないが、このシーフードワンだって多少柔らかく変質しているのだが、ドジョウが吸いついた痕さえ残っていない。憎たらしくも愛らしいウグイ達はどこへ行った?

 二匹目のリリースから約一時間後の5時15分頃、今度は一番竿に来た。魚は島近くを大きく左へ走ってからこちらへ向かって来た。あぁ、またこのパターンだ。流木エリアに入る。魚は意図的にこれをやっている。そして案の定、また流木の餌食にされてしまった。去年よりも釣り場に近い位置に、新たに流木が沈んでしまっているようだ。魚が岸に寄る度に強くなってゆくラインが擦れる感覚。そして動きが止まった。今度は掛出しをしてもびくともしない。魚も動いてくれず、このままで打つ手がない。とりあえず、またラインを緩めて魚が出てくるのを待つしかない。嫌な思いが過るが、簡単にラインを切ったりなんてしたくない。しばらくは動かないだろう。そう思って近くのコンビニへ買い出しに出ることにした。そして戻ってくるとラインを弛めた状態で置いたロッドポッドの上で竿が左に大きく曲がっていた。動いてくれたか。まだ流木の感触があるが、二回程竿を煽ると魚の感触だけが竿に伝わってくるようになった。よし、これで捕れる。現れた鯉はこれまでよりも少し色が着き、体高のある一尾だった。サイズは60cmと小さくなってしまったが文句はない。よく出てきてくれた。ラインを切ったりして、おまえを犠牲にはしたくなかったんだ。鯉を放し、新しい仕掛けをキャストした後またテントに入る。



三匹目 絡んだ流木からなんとか引き出して

 9時。この釣行も残り僅かだ。昼間の時間帯となってアタリの期待は薄れてしまうが、一応鯉に食われた分の寄せエサを追加する。仕掛けも定位置に入れ直し、あとはこのまま、何事もなければもう動かすことはないだろう。今日も晴天。無風のフィールドでこの非日常を謳歌しよう。

 時刻は11、12と数字を大きくしてゆく。モンシロチョウにコムラサキ、シジミチョウ。陽のアゲハと陰のヒカゲチョウ。これだけ蝶に囲まれていては、虫取少年だった小学生の頃の私なら垂涎ものだろう。



 陽の色が濃くなってゆく。終了時間はもう間近だ。そんな時、一番竿が反応した。間違いなく鯉のヒットだが、ラインの出し方に違和感を覚える。走ったり止まったり。竿を持ちファイトに入るが、特に問題なく鯉との距離を縮める事が出来た。しかし岸までもう少しという所で急にリールを巻けなくなった。これはまた障害物にやられている。でも流木じゃない。擦れる感触はこれまで一度もなかった。どういう事だ?何に引っ掛かっている?ラインを弛めれば鯉は沖の方へ逃げ出すが、寄せればまた同じ地点からそれ以上こちらに来なくなる。流木でも石でもなければ何なんだ?正体が掴めない。動かなくなる地点は岸から近いので、ウェーダーを履いてこちらから迎えに行こうとするが、もう少しという所で届かない。20分程奮闘するが、なす術なくラインを切ることになった。ラインを張らなければ鯉は泳ぎ出せていたので、あのまま動けずに死んでしまうということはないだろう。嫌なため息をつきながら仕掛けの無くなった一番竿を上げる。もう仕掛けを組み直して釣り続ける時間はない。撤収しようか・・・。二番竿も回収し48時間の釣りを終える。

ボウズは免れ、小さいながらも三匹の釣果を得られた。このダムの夏の釣行では苦戦ばかりだったが、夏だから駄目だという訳でもないようだ。しかし、釣果は小さいものばかりだし、次もこう上手くボウズを躱せると思ってはいけない。フィーディングのやり方の微妙な違い、そしてポイント。何かが少しでも違えば今回もボウズだったかもしれない。そう思えば次回の釣行は更に慎重にならなければならない。同じ釣りを再現すること。私に出来るだろうか?あと幾つ甘い汁を吸えば、あと幾つ痛い思いをすれば、此処を 「釣る」 ことができるようになるだろう。