鯉釣り日記2023 囀り

釣行日時 6月8日12:00~
6月9日18:00
釣行場所・ポイント名 Pt.フラワーロード
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 窓の外で湿りきった空気が騒いでいる。蝦夷梅雨の到来か。暫く晴天の日は来ないだろう。これなら6月の風物詩、エゾシロチョウも、うかうかと蛹の中から出てこれない。次に釣りに行ける時には彼らを見られるだろうか。他のシロチョウ科には見られない力強い翅が夏らしくて好きだ。風が吹き、雨が降り、川はいまどんな姿でそこにあるのだろう。水温の低下に魚達の活性が下がるか、或いは水が動くことによって、釣れない要素となるものをひっくり返してくれるか。

 釣りに行けるのは数日も先。不安定な気候でその数日後の天気予報を見たってしょうがないのに、ついつい日本気象協会にアクセスしてしまう。釣行日が近くなると体が戦慄く。指の先まで血が巡りざわついて、感覚は不安になっている時や緊張している時のそれに似る。それほど私の釣りへのモチベーションは高い。

釣行当日

 嬉しくも雲と雲の間に生まれた晴天に釣行日を迎えられた。釣り場には正午到着。現在東の風3m、気温24℃、水温21℃ 、中潮の上げ7分で17時頃満潮になる。

 雨の後であり、潮も上がってきているタイミングなので水位は前回に比べて高い。しかしここ最近はあまり気温が上がらずに雨も降ったため、水温は21℃と若干低くなっている。だが川は良い顔をしている。釣れないこともないだろう。久しぶりの晴天で初夏らしい空気感が心地好い。昨日の激しい運動で太股が酷い筋肉痛になり、膝の上げ下げが苦しいのが凄く癪に障るが、取り敢えず車から荷物を降ろそう。

 今回は特に何を試したいなどの目論みはない。やり方は前回と一緒でそれを継続してみる。エサは一番竿に 「クレイブ18mm」 + 「バランスドワフター スパイシークラブ18mm」 のスノーマンで、二番竿はクレイブ18mmダブルのボトムでいく。

オモリ部(セイフティーボルトシステム)
ユニット:コバートシンキングリグチューブ50センチ、コバートテールラバー、FOXカープセイフティレッドクリップ
オモリ:小田原30号 (ブラウン)

仕掛け:(ブローバックリグ)
 ハリス:エジスカモテックスセミスティッフ25lb(カモ)
 針:伊勢尼14号

 投入地点も前回アタリがあった距離に設定し、その位置に寄せエサとして 「神通力」 単品に水を加えたものをベイトロケットで投下するが、前回より神通力に粘り気を持たせ、あまり広い範囲に拡がらないようにした。投下の仕方も同じ距離に上流から下流にかけて直線的に打ち、ポイントを絞って鯉を誘導する。寄せエサが切れてしまうような時間、状況になったら少量追加するが、アタリが芳しくないようであれば若干広範囲に拡がるように配置し直してみる事にする。寄せとしてのボイリーはクレイブ18mmをカタパルトで一掴みほどの量を飛ばしておく。今回はこんな感じだ。

寄せエサ「神通力」単品をベイトロケットで クレイブ18mmをカタパルトで飛ばす

 ハタキの状況であるが、今は狭い水域で小、中型の鯉が産卵し、それよりも多くの数のヘラブナやマブナが産卵しているようだ。何れも水温が上がりやすい小さく狭い止水域で、私のスタイルで竿を出せる場所ではない。広いフィールドでありながら鯉が産卵しそうなワンドのある場所も見てきたが、期待に反してハタキは見られなかった。

ハタキがありそうな所を探すが…

 セットを完了させたのは13時を回った頃になった。腰を据えての昼食は何年も前から好んで、夏季の釣行前に食べるコンビニのとろろ蕎麦。安物でも、わさびの香りが実に爽やかだ。食後には夏によく似合う色をしたラムネで締めて、あとはゆったりとした時間を過ごす。柔らかな植物の綿毛が舞い、前回まで飾り気の無かった木もすっかり肥えている。明日はまた雨が降るらしい。なら蒼翠の初夏の景色を楽しむのは今しかないだろう。

夏の釣行時にいつも食べるとろろ蕎麦 ラムネなんて何時ぶりだろうか

 この時期となると厄介な邪魔者ウグイはどのような様子なのだろうか。ウグイを極力釣らない方法を考え、実行して、ここまで鬱陶しい程の数のウグイは釣っていないが、作戦が効いているかいないのか分かるのはこれからだ。まず、ウグイの活性が強まる夜を待とう。数多く釣れてしまったら作戦失敗。釣れなかったら次に疑いの目を向けるのは最活性期の真夏場となる。去年の祖父の命日の釣りでは派手にフィーディングを展開させてしまった故、鯉の数を出せたものの釣れたウグイの数も酷かった。正直、それがトラウマに近い物になっており、作戦を考えた。だが、私の考える事だ。どうせまた失敗スレスレか、無意味だったりもするだろう。あまり自信を持たずにいよう。

 16時。トンネルの中を吹き抜ける綿毛の数が多くなった。風向きが変わったのだろう。これまでよりもやや斜め、南東から吹いてきている。今回もアタリは遠そうだ。満潮を経たら午前2時近くの深夜まで下がってゆく。ここでのアタリは夜間に多い。期待してみよう。それで今は・・・。また物思いにでもふけるとするか。釣行での長考。お供は糖分が摂れるチュッパチャプス。口をお留守にしていたら、また無駄にブラックストーンばかり咥えてしまう。

釣り座はこんな感じ 物思いの友にチュッパチャプスを

 BGMとするのは道路の音から切り抜いた小鳥の鳴き声。しかし鳥類の知識はなく、何が鳴いているのか分からない。YouTubeで鳥の鳴き声を紹介する動画に飛んでみたが、みんな同じに聞こえてしまってしょうがない。イソヒヨドリ?シロハラ?ホオアカ?キビタキ?彼らはいったい何を喋っているのだろう。釣りをしていてよく思う。一本の木に集い、夜中も休むことなく鳴いている。もちろん鳥は呼びかい、警戒音、ヘルプコール、求愛などを発信するが、それだけではない気がする。もっと濃密な語らいがあり、夜が明けるまでお喋りしているのではないだろうか。全てを翻訳できる術があるのなら、ずっと聞き耳を立ててやりたい。そこに笑えるような話でもあったりすれば、こっちも連れて笑えてしまうだろう。

 18時。そろそろ打ち返しをしてもいいだろう。ただ、バイトアラームは一度も鳴っていないので、大きな問題はないことがわかる。回収すると一番竿の仕掛けが絡まっていたが、カニや小魚にやられたような嫌な絡み方ではなかった。PVAリングに通した新しい仕掛けに付け替える。PVAリングはバッグに比べるとかなりキャスティングしやすいため気に入っているが、PVAテープとしての商品ではなく、バッグを解体して作る場合は硬い素材のものでなければ、ニードルからボイリーを通す際に千切れてしまう。ダイワの 「カープPVAバッグ」 くらいの硬さであればさほど困難しないかもしれない。


 トンネルの外の景色の中で木のシルエットが濃くなった。19時。この時間でも空はまだ灯るんでいる。一番好きな季節の一番好きな時間帯かもしれない。他のフィールドなら太陽が沈みきるまで見送るが、ここはトンネルの中。もうヘッドライトもランタンも必要になってくる。光に寄せられる虫たち。その中には御呼びでないものもいる。蚊取り線香に火を着けたが、これは虫を避けるためというより、この香りを楽しむために着けたようなものだ。去年の合同釣行以来だろうか。保存状態が悪かったために少し香りに濁りがあるが別にいい。夏を鼻で楽しむアクセントとなってくれる。


 20時20分。今日はアタリがなくアラームは鳴らないんじゃないかと、何の根拠もなしに思った。しかしその次か、次の次の瞬間に二番竿のアラーム鳴響し、ラインが走っていると報せてくれた。やっぱり根拠もなく決めつけるのは良くない。私には鯉が来る感も、来ない感もなかった。

 魚はアラームを止め、動かなくなった。でも掛かりに入ってるとかではない。単純に動くのを止めたようだ。フッキングのタイミングは?ロッドポッドに置いたままの竿がゆっくり穂先を曲げた。手に握り竿を立てる。60台か軽い70台だろう。しかしこの魚は一気に此方へ向かって走ってきた。仕掛けを回収する時と同じような速度でハンドルを巻き、ラインのテンションをなんとかキープ。ネットインしたのは68cmの綺麗な鯉だった。私のカメラは夜の鯉を撮るのに向いていない。何枚か撮り直さなければならなくなったが、そのうちに今まで大人しかった鯉が暴れ始めた。空中で回復でもしたのか、ヤケにでもなったのか。水をかけて落ち着かせてやり、写真が撮れていることを確認してから川に帰してやる。体勢を整えるのが早く、元気そうに遠ざかってゆく。何とも変な性格な鯉だ。タモを洗い顔を上げた時、ライトに照らされて焦った蛾が、私の上着の懐の中に飛び込んできた。まったく、どいつもこいつも・・・。

まず一匹 68センチ

 交通量が少なくなり、鳥達の囀りが明瞭に聞こえるようになった。やはり気になるのはここにいる鳥達の正体。鳥類には縁がなく本当に無知だが、今夜はそこにスポットを当てたくなった。海と田畑や住宅地に挟まれたフィールド。そこに住む鳥とは?YouTubeにまた繋ぎ、生の鳥の声を聴ける環境でイヤホンをして鳥の声を扱った動画の音声を聞く。しかしどれとも覚束ない。今ここに何種類が何羽いるかわからない中で、雄雌がおり、囀りや地鳴きなどといった声色の使い分けをする。それらが交ざりあって聞こえすぎ、耳が麻痺しているような感覚だ。これは愛鳥家であり、専ら聞こうと努力している人でなければ全てを処理できないのではないだろうか。そういう人は音感が良く、音楽に通じられるのかもしれない。私は多分、そんな人達が憧れる声をどこかで聞き流している。

鳴く鳥の正体を知りたくYouTubeで調べる

 アタリは続かず、耳も疲れてしまった。気が付けばもう22時58分。本日最後のエサ換えをしようと準備している時に背後で鳴ったのは二番竿のアラーム。しかし、これはやられた感じ・・・。仕掛けを上げてみて案の定、40cm級のウグイだった。丁度いい、一番竿も上げて釣り座で作ったPVAリングを持ってこよう。痛めた両足が鉄のように重い。走ることはできない。アタリが遠いのは不服ではありながらも、足には優しい。スローテンポで釣りたいか、足を引きずりながらでも連続ヒットで釣りたいかで言えば前者だ。釣れればだけど・・・。

大きなウグイ様が今夜も来た

 午前1時。夜間にアタリが集中すると思っていたが、どうだろう?このアタリの遠さは・・・。またチュッパチャプスの包みを開けながら考える。気温は15℃。風は少し強く冷たくなった。水温が下がっているとはいえ、前回釣行と比べて1℃や2℃の差だ。初夏のこの時期にしてはアタリが無さすぎはしないか?少し我慢できなくなってきた。動こう。二番竿のボイリーを 「モンスタータイガーナッツ レッドアモ」 に変えてみる。 「レッドアモ15mmポップアップ」 + 「レッドアモ20mm」 ボトムのスノーマン。もうすぐ潮が止まる区切りのいいタイミング。これから仮眠もしたい時間帯であり、アラームが鳴らないまま眠り続けてしまっては、当然その分動くべきところで動けない。なら一番竿はクレイブを続行。二番竿だけボイリーを変え、レッドアモ20mmと14mmダンベルを入れたPVAバッグと共にキャストして朝までやってみよう。それでもダメなら・・・?いや、きっと大丈夫。考えるのは後でいい。

二番竿のボイリーをレッドアモスノーマンに変更

 午前2時。風は昨日見た予報より強くなっている。昼間は雨が降るらしい。厳しいのか?一応、どっちのボイリーにヒットが来てもすぐに打ち返せるよう、仕掛けとPVAは作り置きしておく。午前2時37分。体も冷えてこれを書く手も震える。シートを倒した車のシュラフへ入ろう。

 眠りに入れるか、微妙なところでアラームが鳴った。小さく小突かれたようなアタリ方で大型のウグイを思わせる。アラームのランプは物陰に隠れて見えなかった。釣り場に降りると二番竿のスウィンガーがアラームのところまで上がっている。ウグイってことも無さそうだ。今度の魚も一尾目と同じくあまりと走ろうとしない。アラームが止まるわけだ。しかし引き寄せると果敢に抗い、なかなかタモ入れをさせてくれない。深み戻ろうとする引きはある程度締めているはずのスプールを回した。サイズは65cmといったところだが良い鯉だ。レッドアモが正解だったのか?まだわからない。寝床に戻り今度は眠りに入ろう。疲れた頭では的確な判断はできない。できるだけ悔いのない釣行にしたい。

二匹目 65センチ レッドアモに変更したのは正解だったか?

 午前6時、自然と目が覚めた。空は曇り、雨を予感させる。風も強くなって、もはや小鳥の声も聞こえない。気温は低いままで、水温は19℃まで低下していた。ここまで来ると鯉の活性は悪いと言っていいだろう。今後の雨でどうなるか・・・。

 強力で刺激的なクレイブを使うか、優しい香り漂わせるレッドアモを使うか・・・。どちらでもアタリはあったわけだが、水温や風の状況において一番近い最後のアタリを取ったレッドアモに焦点を合わせてみることにする。一番竿、二番竿ともにレッドアモのスノーマン。パウダーベイトの寄せエサとして 植物性の 「巨鯉2」 を単品で水を加えたものを少量作る。二番竿はこれまで通りのポイントにキャストするが、一番竿は飛距離を抑え、ブロック帯から15m程のところを狙うことにした。

今度の寄せエサは植物性で レッドアモに焦点を絞る

 車に戻り、ブラックストーンに火を着けるが、それを邪魔する奴がいる。一番竿のアラーム。ウグイの反応だ。一度鳴ってからしばらく止んでいたのでフッキングはしていないと思っていたが、二度目の反応。これは?トンネルを出るともう雨が降ってきていることに気づかされた。風も強く吹き付け、水面が揺らぐ。回収した一番竿にウグイは掛かっておらず、鳴り方から考えるとこの強い風の影響でスウィンガーが揺れて反応しただけだろう。満潮を迎えるのは終了時刻近くの17時台。とりあえず、その時間までは待ってやるとしよう。風は南側からトンネルを吹き抜けてゆく。静かな車の中で、北海道を舞台とした漫画でも読もうか···。

北海道を舞台にした漫画の電子書籍を

 10時40分。完全に油断していたところに一番竿からのコール。今度は鳴りやまない。咥えているチュッパチャプスをどうしよう・・・まぁいいか。咥えながらファイトしよう。釣り場へ降りると一番竿のスウィンガーが落ちていた。かなりラインが弛んでいる。ハンドルでラインを張ると行き先は左だった。ヒット地点からこちらまで走ってきて、ワンドに突っ込む気だ。竿を絞ると、これまでより重い魚がラインの先にいる。前にも書いたが、ここの 「やる奴」 は左へ走る傾向がある。こいつも針掛かりしたと気づいた瞬間から真っ先にそっちへと向かったのだろう。重いが大きい感じではない。でも何度もスプールを回し、竿もいつも以上に曲げられる。やっぱり 「やる奴」 だ。ランディングしたのは72cmの肉付きの良い鯉だった。フッキングは上々。針を外した後、彼の胸鰭と握手してからタモに入れ、川へと下ろした。レッドアモに変えたのは正解だったかもしれない。次がある。そう信じていこう。

三匹目 肉付きの良い70台

 11時10分。また一番竿に反応。だが鯉じゃない。単発で二回だけ鳴って止まってしまった。30~40cm級のウグイならもっと首を振ってアラームが反応するはずだが、これはどうか・・・。また風か?いや、でも心配だ。小さいウグイかもしれない。強風の中、キャップが飛ばされないように一段締め、一番竿を手にする。魚は付いてない・・・。ボイリーも無傷なのでまた風なんだろう。単発のアラームは余程しつこくない限りはスルーしようか。雨がジャケットに弾け、パチパチと音を立てる。だが、まだ霧雨に毛の生えたくらいのものだ。でもそのうちに本降りが来る。

 受信機がまたも一番竿からの単発のアラームを捉えた。一回、二回、三回。これは・・・。四回目、1分置いてまた五回目。これこそはウグイだろう。仕方ない。しかし、しばらく見ていたが竿先はノックすら捉えない。仕掛けを上げてみるもウグイの子すら付いていなかった。風のせいか・・・でも同じ感度であるはずの二番竿のアラームにはそういった動きはない。何故だろう。まぁ、単発は無視しようか。寄せエサにボイリーはあまり撒いてないのでPVAが必要になるが、PVAだって安くないものだ。無駄に消費したくない。

一番竿のアラームにだけ謎の反応

 トンネルに置いた車の中で過ごしていたため気づかなかったが、いつの間にか雨が本降りになっていた。やれやれ、早く止んでくんないかなぁ・・・。雨は私にとってはストレスが降ってくるようなものだ。いや、どこかに私でも雨を楽しめるシチュエーションがあるのだろうが、今のところは見つけていない。ちょっと今は、アタって欲しくないかも・・・。

 14時20分。何気なく受信機に触れた瞬間アラームが一度鳴った。手に持って握るとまた単発で鳴る。まさか接触不良か?まずい事になったかもしれない。そう思いながら受信機を置いてみると、単発のアラームが早いテンポで鳴り出した。違う、アタリだ。ランプは青の一番竿。トンネルから出ると雨は霧雨になっており、キャップさえ被っていれば、ジャケットのフードを使う必要も無さそうだ。一番竿のスウィンガーが垂れ下がり、ラインが大きく弛んでいる。張ったラインが示すのは左側。だがかなり軽い。弱いわけではないが、リラックスしてやり取りできた。サイズはダウンして60cm。でも雨脚が弱まったタイミングで来てくれたのがありがたい。打ち返しだが、やはりPVAバッグでは霧雨で弱ってしまう。露出の少ないPVAリングを用意し、新しいボイリーを装着したブローバックリグを通す。そして問題なく着水した。

四匹目 サイズダウンして60センチ PVAは雨の干渉の少ないリングにする

 少しずつだが、眠気が強くなってきた。横になろう。でも前回のように眠り込まないように注意が必要だ。コーヒーを一口飲んで、半分上げていたシートを倒す。今回の釣りは18時頃の満潮までとしよう。アラームが鳴ったら飛び起きられるように左耳元に置く。

 瞑った目の中で観たのは釣りの夢。でもつまらないものだった。外はまだ明るいが、時計は満潮時刻の1分前。長いため息をつきながら、車から降りる。うん、やることはやった。後ろ髪を引かれるような事もない。バイトアラームの電源を切った時、あまり上手じゃない飛び方で叫びながら水面を横切った鳥がいた。あぁ、あいつなら知ってる。初めて泊まり込みの釣りをした夜に私を脅かした喧しい奴。アオサギだ。

 今回ヒットした鯉は何故か大きく走ろうとはしないものばかりだった。バイトアラームも囀ずるように小さくしか鳴らず、私を興奮させるような事があまり無かった。極端な食い上げ、これは沖の方に緊急避難出来るポイントがなく、こちら側のカケアガリか、左手のワンドしかなかったためだろう。しかし、ヒットしてから掛かりに入ったわけでもないのに、走るのを止めてしまう鯉はこれまであまり見たことがない。何のつもりか・・・。此方としては恐れる事ではないのでまぁ良いのだが、鯉の心を読めているようで、まだ生兵法、何故かそう実感させられる釣行となった。次回は・・・まぁ、あまり遠出はしたくない。無理のない釣りでもしよう。大きく動くとすれば夏本番の頃だろうか。暴虎馮河とも取れるような、そんな釣りをして自分に刺激を与えるような事もしてみたい。まだ夏は始まったばかり。今年は何をやってどう転んでみようか。