北海道の鯉釣り日記2024年 15年目の正直

釣行日時 5月15日9:00~
5月16日17:00  
釣行場所・ポイント名 石狩川公園

(画像はタップ、クリックで拡大)


花時の雨は桜散らす雨。散った花びらの破片を見下ろせば、白い鈴のような小さな花が小さく咲き誇っているのが目にとまる。鳥語花香。春鯉の目は私のエサにピントを合わせてくれるだろうか。次の釣りは嫌でも小型が多くなる。或いはボウズか。そんな場所だが、改めてやってみたい事がある。


 走る轍は懐かしくもあり、少々変わってしまってもいる。釣り場へは9時に到着。気温20℃、水温14℃。風は南東6m程と強めだが、それが晴天に照らされる肌に心地よい。

 今回のフィールドは約15年前の2009年度に着手した懐かしの石狩川公園沼で、しかもまるっきり釣れずにほとんど連続ボウズという結果になった因縁のポイントでだ。当時からこの沼で一番釣れる場所はすぐに分かり、それはすぐに証明された。しかし、私が次に選んだ第二候補のポイントと、その周辺では何故かどうしても釣れなかった。魚は居る。そして釣れる条件を満たしていながらもアタリがない。あったとしても30cm程の鯉が辛うじて釣れるだけ。デイでもナイターでも泊まり込みでもだ。何が悪くて釣れないのか。投入点も、エサもダンゴ、コーン、生エサ、ボイリーと手を変え品を変えて奮闘するが、釣れない理由が分からない。地元の釣り人から 「そこは釣れないんだ」 「お前は今日はボウズだぞ」と小馬鹿にされながらも、釣れない理由を知るために、自分で納得出来るまでボウズを食らってやった。


2009年 ボウズに暮れた石狩川公園

 結局、「釣れない理由」 は分からないまま、釣れる場所に逃げてボウズ逃れをし、それでもアベレージサイズが小さいということから、すっかり釣り場のレパートリーとして外していた。

 しかし数年前、釣り仲間で地元人のSASAYANからその沼の、しかも釣果の出なかったポイントの辺りで良型を出した報告が上がった。私も様子だけ見に行くと、昔は見られなかった場所で大規模なハタキが行われており、この沼が変わっていると確信した。そして15年の年月を経て再見するために、今回ここを訪れた。釣りやすい場所は無視し、釣れなかった場所を選ぶ。

 オモリを正面に投げ込んだところ、水深1.2mか、それより浅い泥底フラットで、その右手から少し深くなるのは昔からあまり変わらない。今回はボイリーでやってみると決め、ベイトボックスからフルーツ系のボイリーを取り出す。使用するのはPt.フラワーロードや新川で実績のある 「カープテク ストロベリー20mm」 。そしてもう一つ、食いが悪い鯉や警戒心の強い鯉に備えて小さい 「カープテク プラム15mm」 も用意。ブローバックリグで、針は15mmボイリー用に伊勢尼14号、20mm用には伊勢尼15号を採用している。


使うのはストロベリー20mmとプラム15mm

 まず、ポイントを選定。目標物らしい目標物もないので足元から7mの地点と17mの地点をマーク。7mラインより17mラインの方が若干泥が浅いようだ。水深はどちらも1.2m。フィーディングも行い。寄せエサは 「鯉夢想」 にストロベリーとプラムを砕いたものを入れ、水を加えて粘りをつけて使うが、ここは水深が浅く、流れもほとんどないため、水面からの落下中にバラけて広く散ることはない。寄せエサをダンゴ状にするとダンゴがポイントにそのまま存在し、その場だけでバラける形となる。そうなればダンゴ用の袋仕掛けや釦仕掛けを使う 「ダンゴ釣り」 という手も出てくるが、2009年当時はそのスタイルの釣りで連敗しており、その他釣れる場所での釣行でも、ダンゴよりコーン一本針などの方が強かった。最近の釣りで実施している寄せエサの微粒子を広範囲に展開させて鯉にエサの「気配」を認知させ、ボイリーで食わせるという手法は、ボイリーの市販があまり普及していなかった当時はやっておらず、今回ここでやってみたいと思う。

 ポイントを中心に、握るか握らないかといったタッチの寄せエサを少量、ベイトロケットで一、二発打ち、その周辺にほとんど握っていないそれをまた一、二発打つことにした。風が強いためにベイトロケットがあさっての方向に飛ばされそうなのが怖いが、風が弱まったタイミングを見て予定通り寄せエサを打ち込んだ。

 一番竿はストロベリー20mmを距離17mラインに。二番竿はプラム15mmを取り付けて7mラインに投入。針には同じボイリーを3粒入れたPVAを引っかけておいた。

寄せエサは鯉夢想とボイリーを砕いた物を セット完了

 タックルのセットを完了させたのは10時頃。あとはアタリ待ちのスペースを作り、釣り場を整理する。そして時刻が11時になりかけた頃、二番竿のアラームが小刻みに鳴りだした。緑のスウィンガーが上下し、ラインが張ったり弛んだりを繰り返している。早速ウグイ様のお出ましか?開始してすぐにウグイが掛かってしまうコンディションならやっかいだ。ロッドポッドの橫で暫く様子を見ていると、穂先が右へ曲がりだした。ウグイではないのか?手に取った感触、これは小さな鯉だ。50cm程の溌剌とした小鯉が、日に照らされた水面から現れた。フッキングも良く決まっている。


開始一時間後 50台の小鯉がヒット フッキングも良い


 こんなにすぐに釣れてしまうとは・・・。15年前からあったトラウマのようなものから解放された。多分次がある。ただ、この小さな沼だ、結局サイズはこんなものだろう。プラムを新しいものに付け替えて同じポイントにキャストする。

ここはPt.フラワーロードのような硬い地面じゃないし、コンクリートのトンネルの中でもない。柔らかい草と暖かい土の上。長閑なこの沼だが、変わったのは柳の老木が少なくなっていることだ。昔は大きな柳が低い位置に太い枝を張り、夜中になればさながら 「妖しの森」 といった雰囲気であった。現存しているものは倒れ、更に歪な形になっている。こういった倒木の危険性があって伐採されたのだろう。生えている比較的若い木も、かつてより枯れかけているものが多い。何がそうさせたのだろうか。


歪だった老木は倒れ 更に歪に

 13時頃、二番竿のアラームが単発で鳴った。窓を開けた車の中から竿を伺うが、竿先がノックされて以降動きが止まった。小型のウグイか鯉の空アタリか、どっちとも付かない。しばらく待ってから回収したが、仕掛けにもボイリーにも何かにやられた痕跡はない。反応のない一番竿も一緒に投げ返すため回収したが、こちらのストロベリーも無事に返ってきた。

 さっき見た予報よりも強いと思われる風にキャップが飛ばされそうになる。風は沼の行き止まりになっている奥へ吹き込み、水を活かす良い材料になると考えられる・・・が、そういったポジティブな考えも15年前には頑なに裏切られた。この向きの風でも、逆の風でも坊主を食らっている場所だ。先の小鯉に心踊らされたが、あまり欲は出さないでおく。


 ここで釣りをしていると、地元民の釣友SASAYANとの釣行を思い出す。最初に会った時は彼はまだ中学生だったか。私がここに来るようになった頃 「この沼にはカッパとポケモンがいる」 と戯け事を言われた事。雨天の釣りの朝、二人で眠るテントの浸水で目が覚めたこと。夜中にSASAYANの釣り場を遠目に見たら、彼の自転車と立てかけていたロッドバッグ、バケツ、下に置かれたランタンが奇跡的に、本当に奇跡的に白い襦袢を着た髪の長い女性のように見え、マジで戦慄した事。色々あった。あれもこれも昔の話。今の彼は相変わらずな面を残していながら、すっかり大人になった。私は見た目が老けただけで、アタマはガキのあの頃のまま。全く違うタイプの人間同士で、普段やっていることもまた違うのに、彼との繋がりは消えていない。

 14時10分。懐古に浸る中、アラームに呼び戻された。また二番竿。だが今度のアラームは鳴り止まない。スウィンガーが下がり、弛んだラインを張るとその先に鯉の気配。ここの鯉は食い上げてこちらに向かってくるものが多いのか。サイズはまたか・・・といった50台。まぁこんなもんか。接続する石狩川の鯉がハタキに上がってくるタイミングならいざ知らず、そうではない今は目立った跳ねもない。水深の浅いこの沼で大型がいるのなら、もっと姿を現してもいいはずだ。


2匹目ここはサイズが多い

 14時48分。初めて一番竿に来た。今度はスウィンガーを送信機まで上げながら走っている。また同じくらいのサイズだろうが、浅場であるということもあり、ある程度締めているドラグをギリリと鳴かせた。小さいがこれまでと比べたら良い方だ。3匹目は60台の腹部が膨れた個体だ。抱卵しているのだろうか。

 リリース後、一番竿のセットをし直しているところに二番竿のアラーム。アタリラッシュか?と期待するも、弛んだラインを張っても手応えがない。少しリールを巻くと何かが掛かっているのがわかる。あぁ、やっぱり来やがったかウグイの野郎め。婚姻色の入らない真っ白な魚体をばたつかせている。こんな白いウグイは私が釣る中では珍しい。

3匹目 やっとの60 これ以上のサイズが釣れるか疑問 婚姻色の入っていない白いウグイ

 正直、この数時間でここまでアタるとは思っていなかった。あの時の釣れなさは何処へいった?苦悶の表情を浮かべているのが自分でも分かるような、そんな釣りになることだって覚悟はしていた。後はサイズアップを期待する。とはいえ、やることはやっているし、何かが私の心を動かすまでは黙っておこう。

 最近ではアタリの遠い釣行が多く、油断している時こそ来るだろうと携帯で動画を見たり、音楽を聞いたり、視界を画面に、耳をイヤホンで塞いで、わざと気を逸らしていたりした。だが今日は違う。小さいながらも、この沼ではレギュラーサイズの鯉が良いテンポでアタっているし、優しい色の空、木々と草、鳥の声、それらを嗜みながら時間を使う。釣りとは喫するものだ。風が強いため外の椅子には座っていられないので、窓を少し開放した車の助手席に腰を置く。期待するのは夕まづめ。何かが起きてほしいと心が望む。

 16時30分。夕まづめに向けて餌換えをする。強風にキリキリと軋む枯れ木。この風は明日も続くそうだ。強風は好きじゃないが、まぁいいか。サイズアップもそうだが、SASAYAN曰く、鬼走りする鯉がいて、これまで三回ブッシュにやられて負けたという。そんな奴とも勝負したい。


 17時45分。一番竿のラインが出されたが、途中で止まってしまった。そして魚どころか仕掛けの手応えもない。ラインブレイク?何故?掛かりも無ければ、ラインだって新しい。対岸まで走られたわけでもない。もうどこにも繋がっていないラインに擦れるなどした傷もない。ある程度上の部分から依れてはいるが、結びがほどけた?あの程度の走りで?疑問を拭えずにいると、二番竿のラインもアラームの音と共に走り出した。やる気のある鯉だ。上がったのはやはり50台。これまでよりもふくよかな美しい個体だ。


4匹目もふくよかな美しい個体

 やはり夕方に来たか。4匹目も良く走ったが、SASAYANが負けるような鬼走りするような奴とはまだ出会えていない。多分それも特別大きい鯉というわけではないと思う。石狩川から流入した細く軽い、筋肉質な川鯉なのではないだろうか。

 とりあえず、まずは早急に一番竿の復帰だ。シンキングリグチューブから付け直す。二番竿は新しいプラム15mmを付け、PVAと共に投入する。しばらく寄せエサの追加も必要ないだろう。まだ底残りしているだろうし、フィーディングなしでもPVAさえ着けていればボイリーの力だけで反応させられる。

 風が止み、小鳥たちの声がくっきりと聞こえるようになった。二番竿の上に乗るカワセミ。なんて絢爛な姿だろう。 「川の宝石」 「空飛ぶ宝石」 とはよく言ったものだ。うまく写真を撮らせてもらえる前に、竿を僅かに揺らして飛び去ってしまった。風が止むのはこの釣行で今だけだろう。静かにこの夕景を楽しむ。


 夕と夜の狭間の刻。思ったよりもアタリが続かない。エサは着いているはず。これまで回収したボイリーに傷がついてきたことはない。PVAに入れた寄せのボイリーも無事であると考えられる。ここで気を短くしてリキッドを使うなどの小細工をすれば、小魚達が目を光らせるだろう。助手席のシートに座るのも疲れてきた頃だ。後ろの席はフラットにしてシュラフを敷いてある。そこに横たわり枕に頭を預けて一息。そういえば昨日から眠れていなかった。変に悩むような展開の釣りになっていれば、何か間違えを起こしてしまいそうな頭だ。釣りはこのまま方針を変えずにいく。



テントは寒いので今回も車中泊

 暗くなって、BGMが小鳥の声からカエルの合唱に変わった。いつぶりに聞いただろうか。この声を好きになったのはいつから?2008年の篠津湖で、初めてのソウギョを釣った夜も、無風の闇の中でアマガエルの声を聞いて過ごした。その頃?いや、もっと前だ。

 父の実家は田舎の農家で田圃があり、小学生の頃には盆休みに遊びに行く度にアマガエルを捕まえて、観察したりと楽しんだ。そして中学二年の頃。同じく盆休みに父の実家に墓参りがてら遊びに行った夜、アマガエルの声を聞いて過ごし、その次の日の日中、眼を疑うような光景を見た。中学二年当時は鯉釣りを始めて一年を過ぎた頃。その日、近くの清流にルアーで虹鱒を釣りに行くと、そこには90cmを余裕に超える鯉が居た。それも一匹や二匹じゃない。橋の上から見えるのは創成川で目にしてきた鯉の倍以上の大きさで、橋脚の周囲を中心にざっと数えて10匹は確認できた。その川は山女魚や虹鱒をルアーで狙えるフィールドで、私もそのつもりでトラウトロッドを握っていた。鯉が居るとは知らなかったため、鯉釣り道具は持って来ていない。大鯉は時折、スプーンやスピナーに反応し寄って来るが、30cm程の鱒しか想定していないロッドで戦える相手じゃない。大きさだけではない、明らかに強いとわかる、たじろぐ程の鯉だった。次の年、大鯉専科を携えて勇んで川へ行くも、未曾有の大氾濫で釣りができる状態ではなく、その次の年には環境が変わってしまい、鯉も鱒も姿を消していた。目に焼き付いて、今も離れないあの大鯉がいた光景。あれを見た日のその夜も、次の日の夜も、興奮冷めやらぬ気持ちで、田圃でアマガエルの声を聞いた。多分その時だ。それが私の中に根強く残り、アマガエルの声を聞くと特別な感情を抱かせるのだ。


懐古 変わり果てた かつて大鯉がいた川

 時刻は21時30分。暗くなってからすっかりアタリがなくなってしまった。口の中で溶けるベリー味のチュッパチャプス。それを見て、何となく思い立った。エサ換えのついでに、泥が深い二番竿のボイリーを、ポップアップを入れたスノーマンにしてみよう。勿論、これまで15mmボトムシングルで通してきて問題なかったのだから、そのままにしておいても良いのだが、心の虫が騒ぎ出した。ボトムはプラム15mmで変わりなく、トップに 「BFM クリル&クランベリー ポップアップ15mm」 を加えてスノーマンにし、より泥底で目立たせる。これでウグイ等が来るようなら、即元のボトムシングルに戻す。アタリが無くて思ったよりも落ち着いた夜になってしまった今、試してもいいだろう。


二番竿をクリルクランベリーP15mmでスノーマンに

 22時40分。寝不足という事実のあるアタマが思想の邪魔をする。三日三晩起きていられる体質ではあるが、その状態で事を上手く運ばせたことはない。仲間と一緒の釣行なら、構わず夜通し談義と洒落こむだろう。だが単独釣行なら、言いたいこと、誰かに伝えたい事、それを思っても、声に出すか出さないかで脳の働きも変わってくる。独りぼっちの今、一人で喋れるほど器用じゃない。何を考えようにも曖昧模糊。このアタマじゃどうしようもない。眠ろう。次に目を覚ますきっかけは、どうかアラームの金切り声でありますように。そして寝起きに冷たいコーヒーでも飲めば、私の針は鋭くなるはずだ。

 0時20分。アラームの音が反響する車内。ヒットは二番竿。やれやれ、やっと来たか。手に取ってわかる軽い感触。あぁ、また小さい。今回最小ではないだろうか。40台の鯉にメジャーを当てることも忘れ、すぐに水温14℃の沼に帰してやる。一応は5匹目。小さいながらも、別にこのサイズしか釣れなくたって文句の言えるフィールドでもないし、釣りをするタイミングも良くはない。本当にデカいのが来るのは、ハタキが始まる時だ。SASAYANに聞けば、5月初旬に一度ハタキがあったようだが、残念ながら今回はそれに当たらず、全くそれらしいものは見られない。第二陣のハタキはいつになるだろうか。


二番竿に5匹目 脇になんらかの怪我をしている

 すっかり書くのを忘れていたが、潮は小潮で、釣れた時間帯は上げから満潮を経た頃に集中している。次の干潮は4時20分頃。そして13時までにまた上がってゆく。目安は潮の上げ前後になるだろうか。それまで二度寝しよう。SASAYANの言う走る鯉に対応するため、ドラグテンションはいつもより若干強めにしている。アラームはしっかり鳴らしつつ、遅れを取ってラインを出し切られたりはしたくない。

 この沼には確かに鬼走りする鯉がいる。2011年の事だった。SASAYANと石狩川本流で竿を出すも、釣果を見込めず、石狩川公園へ移動した。安定したアタリがあるポイントで坊主逃れの釣りをして過ごした昼に、センサーの類いを付けていなかったSASAYANの竿に異変があった。

 以下 引用:2011年「本流・前編」


 「正午になって、SASAYANの竿に大きな異変があった。ちょっと竿から目を離している隙に、リールに巻かれたラインのほとんどが出し尽くされていたのだ。沼と合流する水路の中で竿を出していたSASAYAN。ラインは水路から沼へ出て、そのまま左岸際の私の釣り場を越え、更にC字型になっている沼の奥にまで達していた。ブッシュに立ちこみながら高速でリールのハンドルを巻き、それを回収してゆくSASAYAN。しかし、草の塊に絡まって上がって来た仕掛けの先にその正体はない。それどころか、ハリスに使われた巨鯉ハリス5号は、切れ味の悪いハサミで切ったかのような容で針を失っていた」


 午前4時頃。良き悪きか自然と目が覚めた。結局、夜間はあの小鯉しか釣れなかった。干潮の少し前。どうしようか、昼に備えてフィーディングしてみる?小規模なフィールドだ。寄せが無くてもボイリーの力だけで鯉に食わせることができると考え、開始時から寄せエサの追加をしなかった。この沼にはモツゴ、タイリクバラタナゴ、タモロコ、ウグイの稚魚等小魚が多く生息している。それらが集まってしまうきらいがあったことからも、寄せエサの追加はしなかった。しかし回収したボイリーはこれまで何かに齧られた痕が残っていたことはなく、寄せエサも朝から夕までの長い時間残り、効いていての釣果だったのかも・・・?と想い始まった。優柔不断の取捨選択。これから昼、夕に向けてのフィーディングを行うことにする。まずは一番竿、二番竿の回収。そしてそれぞれのポイントに開始時と同じ配合の寄せエサを柔らかめのタッチで作り、ベイトロケットで投入してゆく。

 気温10℃、水温12℃。もう少し暖かくなればきっと。せめて70台は欲しいところだが、この沼の元々釣れるポイントでも、そのサイズが出るかどうかといった小鯉の楽園。坊主は回避しても、そこからのサイズアップが難しい場所だ。それも承知の事。まぁ、ラフな気持ちでいこう。


 寒い外からそそくさと車内に入るが、フロントガラスから照る朝日が私に起きろと言っている。起こしてある助手席のシートに座り、窓を開けて止めどない小鳥の長話を聴く。ここは空気も悪くなく深呼吸だって出来る。気温は20℃まで一気に上がり、昨日のような冷たい風も今はない。水温も14℃と上がっている。

 ダッシュボードの上の受信機が鳥たちの声を遮った。二番竿だ。これはかなり走られている。だが止めることは簡単に出来た。意外にも素直にタモに収まった鯉。鰭は大きくないが、良い表情をしている。6匹目のサイズは65cm程か。この沼のアベレージは超えている。このまま70台が来てくれと願う。

 打ち返してから13分、もう8時になる。時計の数字を確認して顔を上げた時、またも二番竿が弧を描くのを見た。7匹目はまた50台。サイズアップ成らず残念に思うが、小さいからといって無碍に扱うことはない。子気味良いファイトをしてくれた。

3匹目 やっとの60 これ以上のサイズが釣れるか疑問 7匹目 サイズアップならず

 ここまで二番竿にアタる事が多い。二番竿の投入ラインが正解なのか?ならば一番竿も少しそのラインに近づけて入れてみようか。エサはストロベリー20mmを変えず、ストロベリーとプラムを3粒ずつ入れたPVAと共にキャストする。良い日和だ。何のストレスもなく過ごせている。

 10時30分。思っていた連続アタリは出ず、車内から窓の外の竿を覗いても何も起きやしない。13時頃に満潮となる上げ時。昨日アタリが多かったのは上げのタイミングだったので、期待してはみたが、昼夜の関係もあるし、来るときは来る、来ない時は来ない。汐見表を見て一喜一憂してもしょうがないか。

 鮮やかな緑が広がるフィールド。歌う小鳥の正体は何かと想いながらずっと景色を見ていたが、さすがに飽きてもくる。携帯とイヤホンで外の世界へ繋ごう。最近ベースギターで練習している曲を演奏する動画。これがいい。音をなぞり、帰ったらそれを弾くイメージトレーニングをする。


 11時30分。アタリが止まって4時間近く経つ。短気は損気とばかりに竿を放置していたが、そろそろ動こう。両竿とも回収してみる。すると一番竿のストロベリーがボロボロに、二番竿のスノーマンはポップアップが無くなった状態になっていた。小魚に齧られている。昨日からずっと無傷のまま返って来ていたボイリーだが、ここにきて初めて異変が出た。小魚が活性化している。早朝にフィーディングしたのが裏目に出たか。スノーマンのポップアップは小魚達の格好の的だ。しかし唯一、スノーマンのボトム、プラムだけは何故か無事だった。ならばここから一番竿はプラム15mmのダブルベイツに変えよう。一番竿のストロベリーは・・・全く失くなっていたわけではないし、このまま続けてみる。このジャミ異変が早朝の寄せエサのせいなのだとしたら、エサを食いつくして収まるのはいつになるのか・・・。二本竿ともフィーディングベッドから外れた位置に投入する。一番竿をこれまでより近距離に、二番竿はこれまでより若干遠目に入れて、小魚から距離をおく。


ボイリーがボロボロになった 小魚が沸きだしたようだ

 正午を越えて、また南東の風が強くなった。気温は20℃程だが風は少し冷たく、半袖のシャツか、その上に何か羽織るか迷う感覚。雲は多くなり、予報を見るに夕方には雨になるらしい。まぁ、雨を終了サインとするか。今回はあまり粘っても多分・・・。

 13時丁度。小魚の猛攻があるならばボイリーの持ち具合を確認しておきたい。その前に一口・・・。コーヒーが喉を流れていったと同時に一番竿のアラームが控えめに鳴り出した。ヒットするようなウグイまで出てきやがったか?しかしスウィンガーは上がりきり、穂先が暴れている。50cmあたりの鯉が、水中で激しく首を振っている様が見えるようだ。

 珍しくも魚は左へ走った。左手前には枯れた水生植物の群集。そこを通過されないよう、竿を、もとい腕を伸ばしてテンションをコントロールする。その後すんなり上がってきたのはやはり50台。仕方がない、これが石狩川公園サイズなのだ。これで8匹目。これだけ釣れてるんだから良いじゃないか。思い出してもみろ、いくらやってもアタリのアの字さえ貰えなかったポイントだぞ。それを考えたら目覚ましい変化じゃないか。これでハタキのタイミングに合えば、大型だって狙える。鯉の口にぶら下がっていたストロベリーは無傷だった。二番竿も回収してみるが、こちらのプラムも綺麗な状態だ。恐れる程の小魚の量ではないと知り安心する。


8匹目初めて左へ走った鯉 性格が違うのか

 15時。やはり小魚にボイリーをやられてないかが心配になり、仕掛けを回収するが、どちらのボイリーも綺麗に整った形で戻って来たので、小魚の群れはかわせているようだ。それとももう去ったのか?8匹目が来たことだし、小魚対策のフィーディングベッドから外した飛距離を続行。アタリがなければこれを最後のエサ換えとする。鯉が来るのが先か、小魚にやられるのが先か、雨が降るのが先か。風の速さと感触が変わってきた。多分、これが夕方に降るとされる雨を連れてくる。

 17時頃。川の向こう側の町に住む人から雨が降り始めたというメールが届いた。こちらでは西日が柳を煌めかせ、今回二度目の夕景が終了時刻が近いと美しく語る。ここから雨雲は見えないが、局所的に大きく降り、今は虹が出ているらしい。こちらでもいつ降り出すか分からないことだし、そろそろ切り上げよう。無理やりシャワーに入れられる猫のように私は相変わらず雨が嫌いだ。


 仕掛けには無傷のボイリー。あの一時的なジャミ異変は何だったのだろう。フィーディングベッドから離したポイントに仕掛けを入れたが、対岸がすぐそこの小さな沼だ。多少投入位置をずらしたからといって、それで綺麗さっぱり凌げるものではないはずだ。

 このような石狩の沼や三日月湖では、昼夜通して小魚達が活動し、特にフナなどの魚の放流が行われているところではモツゴ、タモロコなどの本州の国内移入種の小魚が混じり、北海道でも繁殖する。この沼にも、外来種のタイリクバラタナゴ含め、国内移入種が3種以上はおり、それに在来種も含めれば相当な小魚が居るはずだ。数ある池沼の中で、特に酷い密度ではないものの、2011年時点では籠を仕掛ければタイリクバラタナゴやモツゴといった移入種を多く占めた大漁になってしまう程だった。粉エサに柔らかい食わせエサを合わせて使うのには注意が必要で、私もダンゴを使う際には、針持ちする乾燥コーンを食わせエサに使っていた。そんな環境の中でパッケージから出したばかりのボイリーを使えばエサ持ちは当然悪く、多少のエサ換えや変えの頻発と損失は覚悟していた。しかし一度目、二度目のエサ換え時からボイリーが無事にヘアに残り、夜中の数時間の仮眠を経ても突っつかれた跡さえなかった。それで気を許し、早朝に二度目のフィーディングをして暫くしてからのジャミ異変。そして解消。小魚の密度や種類の生息状況も変わっている?昔は春も夏も秋になっても、在来種も国内移入種も外来種も大人しくはしてくれなかった。何故こうもジャミの存在感の有無を極端に捉える結果になったのか。小魚の種類の変化、密度の変化、群れの規模の変化、群れの移動速度の変化、沼の中の生息域の変化。何かが違う。

 まぁ、今は撤収を急ごう。今年から車を変え、前のオンボロより、この新しいオンボロの方が荷物を纏めやすい。あぁ雨が来る。ずらかろう。去り際、バックミラーに遠ざかるフィールドを目にし、また来るから、と念じて別れた。

 小鯉しか釣れないという結果は分かっていたことだ。何よりも15年前に手を尽くしてもアタリすら貰えず、釣れなかったポイントで複数の釣果を得た事で、沼がかなり変化したことを実感した。小魚の気配も違うし、周囲の木々も何故か枯れかけていた。何が起こっているのだろう?何らかの要因があるはずただ。

 少なくとも、鯉釣りはかなりやり易くなっているのは確かだ。だが、今回のような40、50、60cmの小型の多い沼であるとこは拭いきれない。勿論チャンスはある。だがここで、特に私が今回入ったエリアで大鯉を狙うなら、かなりタイトにタイミングを見計らって来なくては難しい。SASAYANからの情報でハタキが行われていたと聞いてきたが、それより気温が高かった今回は見られず、音も聞こえなかった。

 まぁ、いいんだ。こんな釣りも。個人的にはひっきりなしにアタる釣りよりも、テンポが遅く、数時間で一匹、二匹でも釣れるような釣りが好きだ。夢想するいとまを長く取れるからである。私の釣りに暇は付き物だ。見る、聞く、感じる、新しい想いを見出だす、古い記憶を呼び起こす。ブラックストーンやチュッパチャプスを咥えながらゆったりと。そこに私の美学がある。今回みたいな小鯉はかりの、大鯉の可能性の薄い釣行だってあってもいいだろう。こういうのを忘れない事でそれが何時かの私の食い物になる。芋虫が木の葉をじわじわ食べるように思いを綴り、そして反芻だってするようにしながら、自分の世界を作りゆく。何にもとらわれない鯉師になりたい。一度やると決めた事はやり通す性格だ。想い出すなぁ、中学生の頃、書店で 「鯉釣りマガジン」 の創刊号を買って自転車の籠に入れて走ったこと、一ノ村公園の芝の坂でわくわくしながらそれを読んだこと。その時、私はこの道を行くと強く決めた。一世一代の大きな意思だ。20年以上経った今も、あの時の熱い感覚を持ったまま。やっぱり私はやると決めた事をやり通す。