・ダンゴ餌について

 釣り人が多く訪れる水域に生息する鯉は、エサを見つけてもすぐに食べようとはせず、観察するように周囲をうろつきながらエサに接近してゆく。特にダンゴエサを使用した場合ではその行動がよく見られ、バラけたダンゴの周囲をぐるぐると回るようにして、口にしてよいものかどうかを見定めようとしているようだ。鯉によってはその行動を数十分と長い時間に渡って続けるものもある。

・創成川での観察から

 連日多くの釣り人が訪れるホームグラウンド創成川では、鯉がエサそのものに警戒心を抱いていると言えるような行動がよく見られる。特にダンゴエサなどを使用すると、エサがバラケているポイントに差し掛かる数メートル手前でUターンして去るか、進路を変えて迂回して通り過ぎていくような鯉も現れ、食い気よりも警戒心が勝っているコンディションでは、小さいサイズが1匹釣れるか釣れないかという低確率な釣りになる。ただ、ダンゴエサは鯉の嗅覚を刺激する甘い香りと、一度口にすると病みつきになってしまう味を持ち合わせ、どんな鯉にとってもダンゴエサというものの存在は魅力的なものに違いないだろう。古くから鯉釣り師によって使われてきたダンゴエサは、鯉の警戒心を誘うものでありながら、同時に多くの鯉がその魅力を占め、エサとしての認識は周知のものと思われる。少しでも食い気があれば必ずなにかしらの反応を見せ、あわよくば警戒しつつも、口を出してしまう。しかし、ただダンゴと吸い込み仕掛けを投入するだけではヒット率をかせぐのに不十分だ。警戒心の強い鯉をいかにしてうまくヒットさせるか、少しでもヒット率を上げるための警戒対策を考えてゆく。

・最も良い状態とは

 ダンゴエサに対する鯉の反応を観察すると、食い気のある好条件のなかでも警戒し、(1)ダンゴの置かれているポイントから距離を置いてしばらく観察するか、(2)少し反応したあとにすぐに去ってしまう場合がある。ダンゴを投入したばかりで、微粒子が山状に積もり、ダンゴの存在があからさまになっているような状態、また不自然にウグイなどの小魚(ジャミ)が寄ってしまっている状態では、後者の反応を示すことが多いようだ。

 創成川の橋から観察する限りでは、鯉がダンゴエサに興味を示し、観察をはじめてから食うという行動に繋がりやすいのは、ポイントに山状につもっていた微粒子がジャミに食べられたり、水流に流されて少なくなり、また広範囲に散っている状態のようだ。ダンゴの姿がほとんど無くなっているように見える状態でも、微粒子はまだ水底に残っており、その香りがあるからか鯉は寄り、僅かに残っている大粒子を啄ばんでやがては食わせエサにヒットしている。


ダンゴが崩れて少し広がった状態。この段階ではまだ鯉は強く警戒することが多い。これが更に広範囲に散り、黄色く見えなくなる状態が最も鯉が寄りやすい。

 創成川では、針にヒットしてしまうような大型のウグイなどのジャミはあまり多くは見られず、10センチ前後の小型のウグイばかりがダンゴに集まってくるような様子がみられる。このような基本的なコンディションでは、特にエサの底残りを気にする必要はないと考えてよいだろう。微粒子はすぐに食べられてしまうが、コーンや麦などは小さなウグイの口に入らず、咥えるだけですぐには飲み込めない。飲み込もうとするも、別のウグイに邪魔をされ、横取りをされたり、落としてしまったりするために、大粒子が広範囲に広がるという、寄せエサの効果もあると思っている。


ダンゴの姿がほとんどなってしまうほどバラケても鯉は寄る

・ヒット率を上げて早い勝負に出たい

 私が使用するダンゴエサは、大鯉研究所の「龍王」、マルキューの「巨鯉」など麦、コーンなどの大きめの粒子が既製の単品の状態でも多く含まれている。大粒子が多く含まれているということのメリットは、エサの底残りだが、ただポイントにエサを残すだけではヒット率が低くなり、せっかくのチャンスを逃してしまうことに繋がる。

 前述したよう、強い警戒心を持っている鯉はエサを見つけてもすぐには接近せずに、エサを観察するようにしながら、用心深くダンゴに接近してゆく。その後、ある程度警戒心を解いてエサを食べ始めたとしても、むやみにエサにがっつく様な食べ方をする鯉は少なく、大きな口に見合わないくらい丁寧に食べているようだ。その日のコンディションによって変わるが、数粒食べてから食べ飽きるのか、それとも何か殺気を感じて警戒するのか、すぐに去ってしまい、長い時間ポイントに滞在しない鯉もいる。このような場合、どのようなダンゴを使えばヒット率を稼げるか考えると、やはり無駄な配合物を入れないというところに行き着いた。

 既製のダンゴエサにはベースの微粒子に加えて、様々なものが配合されている。私はエサを振るいにかけて、一度大粒子を取り除き、ベースだけの状態にして、そこに必要な分だけの大粒子を添加して使っている。

 たとえば「龍王」の場合。このエサは他の製品と比べると配合されている麦や乾燥コーンなどが多く含有されている。軽量カップ1杯を振るいにかけてみると、




 この量の大粒子が含まれている。すぐに摂餌をやめてしまい、ポイントに長く滞在しない鯉が多い場合は、この量の配合物は多すぎて、食わせに到達する前に鯉が去ってしまうことがある。長い間エサをついばんでいるがなかなかヒットしてくれないような状況のときも、完全に仕掛けを見切ってヒットしない場合を除いては、食わせ以外の大粒が多すぎて食わせを選ぶ率が低くなり、ヒットまでの時間が長くなっていることが考えられる。その間に新たな警戒要因を見つけてしまえば、摂餌を止め、結果釣れないということになるだろう。そのような場合には、このように粉末を篩いにかけ、篩い分けられた大粒子から少量をベースの微粒に配合して、またダンゴを小さく、バラケやすくすると勝負が早くなると考えている。必要以上の粒を配合してしまうと、ヒット率を下げ、また大量に落ちているエサ自体に警戒する鯉もいるのため、悪くないコンディション下でアタリが遠い場合は、大粒子を少量に抑えたダンゴを使用するようにしている。

 逆に大粒子を多めに配合する必要のあるコンディションは、大型のウグイ、フナがダンゴに集まり、竿先に反応が出たり、ヒットしてしまったりする場合だ。また、集まってきた鯉がバラけたエサをついばむもヒットせず、最終的に食わせのみを残して去ってしまうという、仕掛けを見切っている鯉が出ているような状況では、エサばかりが消費され、すぐに寄せの効果がなくなってしまうので、大粒のエサを多めに配合し、ダンゴを大きめにするか、またはエサ換えのペースを速めるとよいと考えている。

2015年11月現在



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