鯉釣り日記2023 鯉は少なし思いは多し

釣行日時 5月13日13:00~
5月14日19:00
釣行場所・ポイント名 Pt.フラワーロード
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 花時の雨。刻を数えて、やらなくてはならない事がある刻を盗み、寒夜を越えてここに来た。やる事はわかってる。この一週間、考えては心を踊らせ、踊る心を鎮めるために考えないように努力をした程だった。幾パターンでも対応できるイメージトレーニングは完璧で、セット中に首を傾げることはないだろう。優柔不断な私には珍しい事だ。さぁ、どう転ぶか。

 うっすら淡い雲のかかる晴れの日。到着したのは午後12時で、現時点での気温は17℃、南東の風3m。小潮が上がりきる少し前のタイミングで、満潮は13時頃となる。明日は長潮で午前5時頃までゆっくり下がってゆく。いまのところ水位は前回よりも若干多い。それでも底が露呈している部分が見られ、やはり去年の夏とは違う印象を受ける。バケツに汲んだ水は気温とほぼ同じ17.4度だ。今回は前回より全体的な活性は高いと思われる。


 前回の釣行で使ったエサはダイナマイトベイツのボイリー 「モンスタータイガーナッツ レッドアモ」 で優しい香りを漂わせて鯉を寄せるイメージのボイリーだが、今回は同じダイナマイトベイツ製の 「カープテク」 シリーズのフルーツフレーバー系を使ってみる。香りが強く、それだけアピール力があるはずであるが、ダイナマイトベイツの 「モンスタータイガーナッツ」 や 「レッドアモ」 、「ザ・ソース」 、「コンプレックスーT」 などの有名品より価格が安く、その分劣ってしまうのではないかという疑いがあった。カープテクを使うのは初めてではなく、数年前にシリーズのひとつを使ってみたが、釣果は芳しくなく、やはり安物なのかという印象を持っていた。しかし、去年最後の釣行では平さんから頂いたカープテクシリーズの 「ストロベリー20mm」 を使って新川で好調であり、見直しているところだが、今回選ぶのは初めて使う 「プラム15mm」 である。これまでが不調か好調かの両極端なイメージを持たされる結果であり、正直なところ不安がある。そこでフィーディングやPVAに入れる寄せエサには、プラムとストロベリー両方を砕いたものを混ぜ、プラムで釣果が出ない場合、信頼がおけるストロベリーに変更しても鯉に違和感を抱かせない状態にする。

プラム15mmを試してみる 寄せ餌にはプラムとストロベリーを砕いたものを

 今回気になるのはエサの存在感だ。前回は小さいボトムボイリーと大きいボイリーのワフターを同時に使う釣りをしたが、結果小さい14mmには一度もヒットしなかった。このフィールドの地質は、細かくて柔らかい、そして深い砂底で、ボイリーが埋もれてしまい、鯉に見つけて貰えなかったのが原因のひとつと考えられる。ならばポップアップやワフターでしか釣れないのか?今回は竿2本のうち、1本は15mmのプラムをダブルベイツにして、ボトムながらも存在感を出してみる。もう片方は同じプラム15mmのダブルベイツではあるが、トップにプラムのポップアップを使用してスノーマン、ワフターにした。水中で直立するそれは砂に深く埋まりこまないためにアピール力はより強い。またプラムのポップアップは初めて使う蛍光色であり、かなり目立つ。とはいえ、水深のある濁った水の中で鯉の目がそれをどう捉えるかは疑問だ。やってみるしかない。配置は一番竿にスノーマン、二番竿にボトムのダブルでいく。ベイトロケットで軽くフィーディングした後、満潮時での水深4m弱ラインに仕掛けを投入した。

一番竿はスノーマン、二番竿はボトムダブルに

 イメージトレーニングで予定通りなのはここまでだ。あとは川がどのように移ろい、それが魚をどう動かし、その魚がどういった判断をするのか。川を知り尽くし、そこまでを予定調和として釣るという鯉師もいるが、私にはまだまだとても出来やしない。勝手に心臓が高鳴り、根拠のない期待感が生まれるか、前回のように憂えが生まれるか…。さあ、どうなる?どうだっていい。全て受け入れてやる。


 15時を過ぎた。今回もアタリは遠くなるのか。ウグイなどによる攻撃もなさそうなので、竿はしばらくこのままにして、取り留めのない考え事でも続けよう・・・。これからの釣りのことを考え、釣りの技術面を考え、釣りの精神を考え、魚のことを考え、頭のなかにあった魚の蘊蓄を思い出し、鯉の脳内構造を考え、それに伴った習性を考え、その習性を活かす最も効率的な釣り方を思いつき、やっぱりダメか?と振り出しに戻り、私は口に出してないだけで、頭の中は相当おしゃべりだと気づいて、じゃあ次に何を考えようかを考え、そうしているうちにあっという間に一時間半が経過した。仕掛けを回収し、チェックするがエサ、仕掛け共にトラブルはない。一番竿のポップアップは出来るだけ傷を着けずにこの釣行を終えたいところだ。何故ならプラムのポップアップは購入したわけではなく、ボトムタイプにサンプルとして四粒入れられていたのみであるからだ。

初めて使う蛍光のポップアップ 在庫はこれしかない

 16時30分。風が止んだ。寒さをもたらす風を凌ぐためにトンネルの中にいたが、こうなると逆にトンネル内が寒くなる。椅子を持って外へ出よう。トンネルの硬い石の地面はあまり好ましくない。トンネルから出て、柔らかい草の根を踏みながら椅子に腰かける。水面には多くはないが幾つかのもじりが見える。前回程悪くはなさそうだ。考え事の集中力を切らせてくれる何かは起こってくれるだろうか。

 冬の名残の山頂の雪。なんとなく、あれはもう少しの間なくなってほしくない気持ちだ。これから徐々に夏になり、雪は消える。夏らしい要素は今は無いが、今は無くてもこれから現れる。雪が無くなれば、始まりの季節じゃなくなり、今度は雪が現れる方へ向かう。この春をずっと楽しみにしていた。そしていま手にしている。何かを手にすれば、失うのが恐くなる。今度雪が現れるのは遠い未来でありますように。なんて、また憂えてしまった。ここはそんな気持ちにさせられる場所なのだろうか。

考え事の友は黒いものばかり

 18時。 少し投入距離を伸ばしてみようか。これまでより7m以上 10m以下の沖。暗くなる前にそのラインに少しだけフィーディングをし、仕掛けを両方とも投げてみる。これから夜に入る。潮は下げの3分といったところか。気温も落ち始め、18時22分現在13℃。まぁ、気長にいこう。車のベッドメイクでもして、その間にこれを書いている携帯も充電だ。

 21時か…。気温は9℃。車に入って久しく感じるが、前回最初のアタリが出たのは午前6時台だった。まだ9時間以上あるじゃないか。思想の深みへ潜り込もう。それも尽きたら、懐かしの映画かアニメでも観てみるとするか…。普通の釣りでは考えられないよね?こんなこと。そんなことをしていたって、やる事さえきちんと、出来る事はしっかりやっていれば、あとはアタリがあるかないか。状況にはすぐに応じられるようにする。アタリがないからといって酒でもかっ食らって泥酔し、気持ちを無防備にさせていたら、それこそ釣りじゃなくなる。携帯で映画を観ていたって、気持ちを研ぎ澄まして、鬼のような眼光を持つ精神で釣り全体を見ていれば、それは立派な釣りと言っていいと思う。電子書籍を読んでいたって、うつらうつらしていたって、普段は身に付けないアクセサリーを体にして離さないのは本気の証だ。

アクセサリーは本気の証

 22時46分。受信機が二番竿の緑のランプを灯した。イヤホンの音楽を貫通してきたアラームは、恐らく竿が二回程ノックされた程度のもの。ウグイだろうか?ライトを持って車から出る。アラームは鳴り続けることなく、回収した仕掛けにもウグイはいない。ボイリーは無傷のままだ。一番竿も回収してみる。こちらも異変なし。なんとなくだが、いま投入しているポイントは違う気がする。両竿とも初期の距離に戻して投入しておいた。南東の風4mというところか…。寒い、中へ戻ろう。このまま明るくなるまで今のバランスで試す。それでもダメなら、考える必要がある。その時までゆっくり眠るとしよう。


 3時30分頃、二番竿のアラームを受信。鳴りは止まらないが、走っている感じではなさはそうだ。ウグイが来てしまったか…。単発で鳴る送信機から二番竿を取り上げる。重い?また40cm級の大ウグイか?しかし現れたのは意外にも鯉だった。60cm程の若い鯉が、干潮の近い川の中で腹を底につけながら踠いている。ランディングしてからも特に暴れることはなく、写真を撮らせてくれた。なんて大人しい鯉だろう。タモ入れ前の水中から現れた従順な姿に驚く程だった。


一尾目 二番竿ボトムダブルにヒット 60センチ程

 ここまで反応があったのは二番竿のみ。一番竿の仕掛けを上げてみると、ダブルベイツのうち下のボトムタイプが失くなり、ポップアップはもう使えないほどボロボロになっていた。アラームは鳴っていないが、小さなウグイかその他の小魚の仕業だ。ポップアップは浮きながら水中で揺れる。そういった動体に一番よく反応するのは、肉食性が強くアクティブな魚だ。今回の犯人はウグイの子かモツゴか。鯉がそばにいるのなら、そんな小さな魚は寄りにくいが、今は違うのかもしれない。同じ事をやっても、あと3個しかないポップアップが失くなってしまう。ここで一番竿をストロベリー20mmに変更した。ボトムボイリーで反応があるのだから、砂対策でポップアップやワフターにする必要もないのだろう。日の出が近く、明るくなりつつある空。風は強いままで気温も8℃。水温も冷えている。車に戻り再び横になる。応答願う。

ポップアップがボロボロに 一番竿をストロベリー20mm(下)に変更

 4時40分。明るくなってゆく窓の外。夜が終わってしまった。そんなことを思っている時にアラームが激しく鳴る。青のランプ。一番竿のストロベリーに早速来たみたいだ。先程のものより若干重い。しかし首の振り幅は同じだ。また60だろう。サイズは変わらないがかなり太い個体で、黄金色を身に纏っている。

 前回の釣行を計算に入れても、去年の夏と比べてアベレージサイズがかなり小さい。季節柄なのだろうか。冷たい風は止まず、水温は12℃まで落ちていた。

2匹目 早速ストロベリーにヒット また60台 腹の太い個体だ

 風は顔を北に向けたまま吹き続け、威力を増してきている。今は風速7mという感触だ。干潮を終え、これから昼にかけて上がってゆく。昼の満潮を過ぎても次の干潮は終了時間あたりだ。満潮だからとか、干潮だからだとか、正直気にはなるが、だからと言って一喜一憂はしていない。夕まづめだから釣れるとか、朝まづめだから釣れるとか、私の釣りには今のところ無く、来る時はいつでも来る。まだまだ、これだけではないはずだ。

 6時25分、鯉であると確信できるアラームがリズムを刻んだ。釣り座へ降りる頃には鳴り止んでしまった一番竿のアラームだが、スウィンガーが垂れ下がっている。弛んだラインを張り、アワセを入れるとまた同じくらいの鯉の感触を得られたが、呆気なく針が抜けてしまった。ラインが緩んだ瞬間から針が抜けかけてしまっていたのだろうか…。しかし、この仕掛けのバランスでスッポ抜けは悔しい。去年からこのバランスの仕掛けを使い、それなりに納得のいく出来になった。全くバラしが無かったわけではないが、使い始めてからこれまでヒットした54匹のうちスッポ抜けは3匹。何が悪さをしてバラしを誘発させるのか。鯉の食い方が悪いとかいう、こちら側からではどうしようもできないものであればまだ良いが、仕掛けに問題があると考えるなら…、なんだろう。

 二番竿も回収してみると、こちらはボイリーが跡形もなく消えていた。前回より悪戯する小魚が増えている。どうしようか、ヒットもあった事だし、またボトムダブルベイツでやり直す?いや、ここは敢えて開き直ってみよう。二番竿のダブルベイツのトップをポップアップにしてスノーマン、ワフターで存在感を出してみる。どうせボトムにしたってジャミは来るのだろう。ならスノーマンにして鯉にもアピールできるようにしておく。これから昼にかけてあまりにもジャミがうるさくなるのであれば、また変えればいいだけだ。

今度は一番竿にストロベリー、二番竿をスノーマンに PVAにはプラムとストロベリーを半壊したものを入れる

 9時44分。 一番竿にヒット。これもまたかなり軽い。現れたのは50cmにも届いていないような、鱗に傷のある鯉だった。水位が低く、岸からのタモ入れができないので、欄干を跨いで川へ。小鯉ながらも、手前のブロック帯から深みへ突っ込もうとする力は強く、溌剌とした闘志を見せてくれた。手にした鯉はそのまま、長靴に水が入らない程度のところまで深みへ送ってやった。


3匹目もストロベリー 50センチにも届かないサイズ

 ヒットはストロベリーに集中している。一番竿はこのまま続行するとして、スノーマンの二番竿はどうか…。今度は投入距離を縮めてみようか。一度回収してみる。ポップアップ、ボトム共に傷や触られた形跡はない。PVAを取り付け、これまでより手前のカケアガリ下に投入した。ここは砂が浅く、ワフターはかなり映えるだろう。初めて使う蛍光色のポップアップには是非活躍してもらいたいところだ。

 気温はかなり上昇しているが風は相変わらずだ。あまり打たれるのは好きじゃない。車の中で過ごそう。ゆうべの眠りは浅かった。なら少し仮眠しようかと倒しっぱなしのシートに横になってみたが、コーヒーの飲み過ぎか、眠れる状態ではなかった。横にした体は軽々と起こすことができ、結局またコーヒーを口にする。釣況はどうにかならないものか。前回から小鯉ばかりを釣り過ぎている。せめて70台が欲しい。この場所で60cmを超えないような鯉しか釣れないのは、去年のここの印象とは違う。ハタキが始まる時期、ここは不利になるのだろうか。でも広いフィールドだ、何かが居るはず。さぁ、何かが起これ。もうそろそろ考え事や想いに陶酔するネタも少なくなってくる。自分の釣行記でも見直そうか…。そういえば、丁度一年前の今日だったな、キツい目付きで狭い川を睨み付けていた釣行は。鯉のサイクルの変動に随分と悩まされた。苦しかったが、それもそれで面白くもあった。今年はあの川に…行くか、行かないか…行くのなら早い方がいい。イタドリが牢屋の格子のようにして川に寄せ付けなくしてしまう。


丁度去年の今日 望月寒川で苦戦していた

 満潮を過ぎた13時30分。今回の満潮は長靴では川に立ち込めないくらいに水が増えている。次の干潮は早く、19時頃だ。アタリは遠いままだ。たまらずエサ換えをする。そしてこれまで通り仕掛けに異変はなく、新しいPVAを付けて投入した。後にカタパルトで寄せのボイリーを飛ばす。風は更に強さを増し、ボイリーもラインも横に流される。水面は上がり、うねっている。最後でもいい。何か起こってくれと願う・・・。

 16時。 後部座席を起こし、シュラフを丸めた。今度は運転席のシートに凭れながら、今流行ってるアニメを観る。ココが良いシーン…と、そんな油断をしているような時にアタリは来るものだ。しかしアラームはピリッと呟きもしない。この大風は私の味方ではなかったのか?ならば、この風が止んでからが勝負になるのだろうか。しかし、残り時間はもう少ない。今になってパウダー系の寄せエサをしたところで、効いてくるまでに間に合わない。もう待つことしか出来ない。辛いな…。鯉師のくせに待つのが辛いなんて、傍から観たら笑えるかもしれないが、鯉師はむしろただ待っているだけというのが嫌いなものだ。いくら長時間に及ぶ釣行でも、釣り尽くすために様々な事を考えていれば、その時間は濃厚なものになる。だが今の私はこの28時間で出来る事をやり尽くしてしまった。川は 「もう釣れない」 と言っているようだ。でも、最後の瞬間まで抗ってやる。釣り人にも魚にもコントロール出来ない、奇跡の巡り合わせというものがあるからだ。


冬と春が混同する風景

 17時。 長らく座っていたせいで背中が痛い。立ち上がり、腕を上げてこわばっていた筋肉をほぐしながら、何気なく釣り座へ降りたその時、一番竿のスプールが回りだした。来たか…!バラさないよう慎重にやり取りする。浮き上がった魚はやはり小鯉。でも来てくれた。鯉は激しく首を振り、今回一の負けん気を見せてくれた。ストロベリーを咥えたままの口からそれを外し、リリースしてやる。


4匹目 あまりにも小さいが心躍らせてくれた事に感謝

 どうしようか…。まだ竿を畳まなければいけない時間ではない。もう一投打とうか。作り置きしたPVAも残っているはずだ。一番竿をロッドポッドに戻そうとした時、ラインが二番竿に絡んでしまった。風に遊ばれたラインが巻き付いている。外すには二番竿を動かさなくてはならない。それならば、いっそのこと放置しようと思っていた二番竿もエサ変えをしよう。残念ながら一度もヒットがなかったプラムスノーマンには今度活躍してもらう事にし、両竿ともストロベリーに絞ってみる。リグボックスに15mmダブル用のブローバックリグを収め、20mmシングル用をもう1本出してストロベリーを装着。これでまた何かが起きてくれたらいい。車の中に逃げて引きこもっていた私が、風の強い外の椅子に腰かけてコーヒーを啜っているのは何故だろうか。


両竿ともストロベリー20mmに絞る

 18時前。ストロベリーに変えたばかりの二番竿のアラームが止めどなく鳴っている。めげそうになっても諦めなかった私へのご褒美だ。今度の鯉は初速から鋭く、軽いもののよく走る個体だ。浮いてきたのは60台か。まぁ、これでもマシなサイズといえよう。しかしこれをタモ入れ出来なかったら悲劇になる。タモ枠を浅い底に突き刺しながら、中のネットに鯉を導き入れた。口にはストロベリー20mm。フッキングも良し。サイズはともかく、カッコの良いスタイルをした鯉らしい鯉ではないか。

5匹目 トラブルが起きていなければなかった釣果 ストロベリーをがっぷりと咥えて

 二番竿をエサ変えしたのは、たまたま一番竿がライントラブルを起こしたためだたった。そのたまたまが功を奏した釣果は実に鯉釣りらしく優美な展開だ。このタイミングで食ってくるなら、あともう一投いける。熱い志で、粘れるだけ粘ってやろう。

 この釣行の終わりも近づいてきた。帰りたくないな…もっとここに居たい。帰って日常に戻ったら、壁に囲まれてその中でノソノソとヘラヘラと、釣りをしていない環境を過ごさなくてはならない。そうしているうちに色々なものに苛まれ、落ち込む時だってあるだろう。始まりがあれば終わりが来る。でも、終わりがあると始まりも生まれる。終わりがなければ始まりは生まれない。時も命も地球も、無くなっても、その先が本当の「無」であることはない。宗教的な話じゃない。現実的な、くだらなくて詰まらない話だ。何にも憂えることはないだろう。寂しくとも。

 撤収準備を済ませ、車のライトを点ける。なんだか体が重いな。大して釣れもしないのに、想う事がたくさんあって、考え事ばかりし過ぎたのだろう。そういえばこの31時間、苦いものばかり口にして、甘いものを摂っていなかった。いっちょ前に脳が疲れているのだろう。今度はチュッパチャプスでも持ってこようか。同じ咥えるなら、ブラックストーンばかりを咥えているより良いだろう。次の釣行は、もしかしたら近いうちに出来るかもしれない。それがどうか遠い未来ではありませんように…。この釣行の始めの方でも、雪が残る山を見て似たような事を思った気がする。