鯉釣り日記2019 令和初鯉o

釣行日時 5月15日〜
5月16日 
釣行場所・ポイント名 雁里沼

 桜が満開になる頃に新しい時代の幕が上がった。新元号が決まったその日から、考えるのはこの時代初の釣りと記念すべき第一匹目のことばかり。新しい気持ちを持って、巨鯉への道を歩んでいこう。はたしてどんな道のりになってゆくのであろうか。どこで道くさをくってやろうか。余計な事ばかり考えるから巨鯉が釣れないのだと言われそうだが、道草は楽しいものだ。新元号令和の道のりやいかに…。

 令和初となる釣りは、雲の顔色をうかがうところから始まった。降るのか降らないのか。雨雲の隙間から見え隠れする青空を睨みながら、午前中を過ごした。雨は嫌いだ。濡れながら釣りをしたくない。でも、気持ちは既に釣り場にあった。釣りがしたいという魂が、私の体を釣り場へ向かわせた。そして願いが叶ったのか、雨雲が私から遠ざかってゆく。今は落ちそうで落ちない夕日が釣り場を優しく照らしている。

 5月7日。

 その日の釣りは日本式のピトンスタイルで竿を出した。和服の正装で新しい時代に礼をするように。やり方は前回の大沼と同じ、ダンゴにディップ漬けのレーズンを食わせに使う方式。気温10℃、水温13℃。あまり遠投せず、底がブロックで隙間から水草の芽が生えるエリアに大きめに握った鯉夢想を打ち込んだ。

令和初釣りは日本スタイルで このセンサーを使うのは何年ぶりだろうか

 しかし事はうまく運ばず、大きなウグイにエサを食われる一方。未来を占う令和初釣りはボウズを喫するに終わった。


 令和の初鯉を釣る事ができずに日は過ぎてゆく。大きくても小さくても新しい時代の一尾をこの手にしたい。そこで一発大物の茨戸川などの大場所を捨てることにした。次の候補地は二つ。どちらにしようかと迷いながら眠ったある夜、候補地の一つ、雁里沼の夢を見た。あそこで釣りをしろということだろうか。ならばと起き上がり、目的地を雁里沼とし、タックルボックスの中を雁里用に整えた。一番好きだと言っても過言ではないあの場所で、新元号初鯉を手にできるのなら嬉しい限りだ。5月15日と16日に都合をつけ、再び惰眠を謳歌する。


 弱い南よりの風に花揺らぐ釣行当日。今日、明日は晴天に恵まれ、気温も20℃以上になる予報だ。来るたびに寂しくなってゆく村の風景だが、ポイントはまだ健在であることに安堵する。そこにどっしりとテントを構え、いよいよタックル準備に取り掛かる。何も奇をてらうことはない。いつもどおりにセットしてゆく。だが一応、今回も試してみたいことがある。

 去年10月の釣行で、ボイリーの種類をフルーツ系と動物系に分け、同時に試したことがある。結果フルーツ系として選んだ「フレッシュフルーツワン」にアタリが集中し、動物系として選んだ「ザ・ソース」はジャミの猛攻に苛まれ、活躍できなかった。しかし季節柄というものがある。この時期にソースを使うとどうなるのか。そしてもう一つ、「コンプレックス-T」というボイりーがある。ソースと同じダイナマイトベイツ製で、好釣果が聞かれることで気になっている一つだ。今回はソースとコンプレックス-Tを同時に使用し、どのような結果が返ってくるかを観察してみたい。

早速テントを立ててタックル準備へ 今回はこの2種のボイリーを同時に使って試す

 両竿とも仕掛けは同じ。1番竿にはコンプレックス-Tを、2番竿にはソースを担当してもらう。去年秋と同様に投入.。
飛距離は同だが、1番竿と2番竿で投入位置を少し離してキャストする。ポイントが決まったら、リールのクリップにラインを止め、仕掛けをベイトロケットに付け替えてフィーフィングをする。それぞれのポイントに同じボイリーを一つ掴みずつ撒いておいた。仕掛けをベイトロケットから本仕掛けに交換し、いよいよ最初の投入だ、

オモリ部
ユニット:シンキングリグチューブ50センチ、テールラバー、ハイブリッドレッドクリップ(全てKORDA)、
オモリ;25号カモフラージュ

仕掛け:ブローバンクリグ
 ハリス:エジスカモテックスマット25lb(ブラウン)
針:ST-2

エサ
ザ・ソース
コンプレックス−T

1番竿コンプレッス−T(下) 2番竿ザソース(上)

 2番竿だが、投入するのがなかなか難しい。なるべくブッシュの際に入れたいところだが、付近には流木が犇いている。キャスティング時に少々左に寄せすぎたと思ったら、まんまと根掛りしてしまった。被害はオモリ一つで済んだが、今後気をつけたい。夜間に投入方向を間違わないように、足元に印を置いておいた。

暗くなってからも投入方向を間違えないように目印を セット完了

 続いては自分のエサの準備だ。炭に火を入れ。カルビやホルモンを焼いてゆく。そういば濃霧注意報が出ていたっけ。辺りは白一色に染まった。シメにシイタケやマイタケを醤油焼きしているところに、1番竿コンプレックス-Tのアラームが鳴った。だがピピッと小さく鳴るだけなので、ウグイの仕業だと決め、キノコを焼き続ける。しかしラームは鳴り止まない。大きなウグイがヒットしてしまたようだ。竿を上げてみると違和感。ウグイよりも抵抗が激しい。ヘッドライトの明かりに照らされたのはナマズだった。


 ナマズなんて釣ったのは何年ぶりだろうか。活発に動く獲物にリアクションバイトするイメージ、または小魚の死骸を貪る魚食魚を捕らえるモンスターのイメージが強いナマズだが、何の変哲もないボイリーにまで食いついてくるとは、この魚の貪欲さは図り知れない。

 ついでに二番竿のソースの様子も見てみる。こちらは去年秋と同じようにボロボロの状態で返って来た。ナマズの口にぶら下がっていたコンプテックス-Tは無傷のままだった。この沼で人気が高いのはソースの方らしい。鯉が来るまで持ってくれるといいが…。一応両竿ともエサ換えをしておいたが、ソースに関しては監視が必要だ。大体2時間置きにチェックしておかないと、ジャミやエビに突かれ放題になってしまい役に立たなくなる。

ソースはボロボロに コンプレックスは無傷だった

 まだアタリは遠いだろう。食後の運動にと、例によってアラームの受信機を持って散歩に出かける。初めてここを訪れた時から景色はすっかり変わってしまったものだ。ところどころが空き地になり、家があった頃の名残として、観葉植物が寂しく咲いている。どうかこれ以上変わらないでいてほしい。そんな事を考えながら歩いていると気付かぬうちに1キロくらい釣り場から離れてしまっていた。まぁ、まだアタリが出ないと踏んでのことだが…。

 そろそろ就寝の時間だ。残った炭火にケトルを乗せ、お湯が沸くのを待ちながらテントの中を就寝モードに切り替える。このベッドは組み立てに少々苦労させられるが、寝心地は文句ない。ベッドの上に寝袋を敷いて、これでいつでも眠ることができる。


 ケトルで沸かしたお湯でアールグレイを淹れている最中、二番竿のアラームが鳴った。ナマズなどではない、間違いなく鯉のアタリだ。本当は竿に飛びついて行きたいところだが、足場が悪く、ここで転んでは大怪我は免れない。ラインはどんどんと引き出されてゆく。

 案の定、木の枝に巻き込まれてしまった。ラインが撚れてしまうことが気に掛かるが、ここは強引に引っ張らせてもらう。現れた魚はここのアベレージを大きく上回っているように見える。目測75センチ。だが令和初の鯉だ。ちきんと検寸したい。鯉が入ったタモを地面の平らなところまで連れてゆき、バケツの水をかける。もしかしたら、アベレージの小さいこのポイントの自己記録を達成するかもしれない。


 80センチ。令和初鯉で、しかもこのポイントでこの釣果なら申し分ない。鯉を水中に戻し、体を支えてやる間もなく。青黒い頭を振りながら去っていった。

 既に冷たくなっていたアールグレイのカップを持ちながらテントを離れる。絶え間なく聞こえてくる蛙の声、小鳥の囀り、時折驚きそうな声を上げながらどこかへ飛んでゆくアオサギ。何も邪魔するものはない。札幌に嫌気が差した時の避難場所には丁度いい。

 すっかり冷えてしまったケトルをもう一度温め直す。バーナーでななく炭の遠赤外線で温めるお湯もまたいいものだが、時間がかかるため、ガスを使ってお湯を再沸騰させ、コーヒーを淹れる。そろそろ眠るとしようか…。




 しかしそこでまたアラームに手を止めさせられた。またしても2番竿、すなわちソースでのヒットだ。魚はこちら側に走ってきている。ラインを弛ませないようこっちも合わせてハンドルを巻く。今度の鯉はタモが必要ではないのではないかというような小鯉だった。それでも綺麗で将来を期待できる鯉だ。



 またもや冷めてしまったコーヒーを温め直し、今度こそ寝床に着いた。夜はあっと言う間に明け、寝る前に飲んだコーヒーのおかげで朝はすっきり目を覚ますことが出来た。とはいえ、夜が明けるのをこの眼で見ている。すっきりしてい
るだけで寝不足は寝不足に違いない。すっかり日照にさらされたテントのシュラフに潜りこむ。そうすると今度は暑くて寝苦しい。前回はシュラフの上に毛布まで被って凍えていたのが嘘のようだ。まぁ、ここでブレックファーストといくか。パンに焦げ目がつくまで竿の横でゴロ石に腰を置いた。


ブレックファースト パンが焼けるまだ竿の横に腰掛ける

 現在気温は23℃。夜は10℃台だった。昨日の濃霧も頷ける。朝飯のあと、一番竿と二番竿のボイリーを入れ替えてみる。いまのところ二番竿のソースにアタリが集中しているが、ポイントを入れ替えるとどうだろうか。コンプレックスーTが悪いのではなく、単にポイントの影響があるかもしれない。PVAにそれぞれ同じボイリーとペレットを入れ、しばらく様子を見てみることにしよう。



 正午のサイレン。傾く日光。時を経てアラームを鳴らしたのは50センチくらいの鯉だった。ヒットは二番竿。ポイントを入れ替えたコンプレックス-T。小さくも美しい鯉は抵抗凄まじく私の手を離れていった。そこで一番竿に交代したソースも上げてみる。こっちはいつの間にかウグイがヒットしていた。一度ピリリとアラームが鳴ったが、こいつだったか。やはりこの沼で人気があるのはソースのようだ。。

小鯉だが綺麗な子だ ソースにウグイがヒット やはり人気が高いのはソースか

 時刻はまもなく15時を回る。そのとき、釣り場右手にある流れ込みから茶色い水が混ざってきた。これは近くにある田んぼで田植えの準備をしているときに起こる。この濁り水は釣果に影響するのだろうか。バシャリという跳ねの音。まだまだ期待はできそうだが。


茶色い水が流れ込む

 濁った水の影響は大してないみたいだ。けたたましいアラームが空想に耽っていた私を呼びおこす。二番竿のコンプレックスTにヒット。最初重量感を感じてサイズアップを期待したが、なんのとこはない、ハリスが胸鰭に引っかかって鯉が横向きになっているだけだった。時間的にこれが最後の鯉だろう。60台にしてはまぁまぁ楽しませてもらった。



 そろそろ釣り場を去らなくてはならない時間だ。此処らしい爽やかな釣りができたこと、そして令和初の鯉を捕れたこと、その鯉が80台だったこと。中身の濃い釣りとなった。

 ボイリーに関しては、ポジションを入れ替えても、アタリが二番竿に集中したことから単にポイントの問題である可能性が高い。ただコンプレックスよりもソースの方が鯉に限らず魚へのアピール度が高く、やはりエサ換え時にボロボロになって返ってくることが多かった。これからもソースを基準にして様々なボイリーを試してみたい。

 もう遠くで「夕焼け小焼け」が鳴っている。此処での釣りは満足できた。さぁ、次はどこで何をしようか。頭の中で計画のイメージがめまぐるしく浮き出てくる。当分絶えることはなさそうだ。