鯉釣り日記2016 初夏色

釣行日時 5月21日17:00〜
5月22日18:00
釣行場所・ポイント名 雁里沼

 玄関の前で一度立ち止まる。その光景には最早、春の日差しというやわらかな言葉は似合わなかった。札幌の気温は約30℃。北見地方では33℃になるという予報が出ている。毎年の事ながら、ファーの付いたコートを着ていた直後のこの温度差には驚いてしまう。

 車のキーを開ける前にこれから釣りに出る空を仰ぐ。深く息を吸ってフィールドの情景を思い浮かべる。「さぁ、いくよ」と心の中で叫ぶのはいつものこと。日常から開放される。そんなときの私の目は、しかめっ面と言われるいつもより少しでも綻んでいるだろうか。

 前回のリベンジの場であるフィールドに到着したのは16時頃。夕日の光はまだ暑さをまとっていた。水温は急激に上昇しているはずだ。魚達の産卵も本格的に始まっていることだろう。

 先日鈴木君から、前回と同じフィールド内の流れ込みのあるポイントで好釣を上げたとLINEが入った。そして今日も「流れ込みに入っていいですか?」とのメッセージ。そこは狭いながら周囲の地形の変化に富んだ浅場で、この時期のフナや鯉の産卵には最適なポイントだと言える。

 鈴木君の様子を見にそのポイントへ足を踏み入れてみると、彼は数人の釣り人と思しき男性達に囲まれて話をしているようだった。私も加わって話を聞いてみると、男性達はヘラブナ釣り師で、明日はこの沼でへら釣りの大会が開かれるのだという。そのための視察に来ているようだが、やはりこの流れ込みのポイントには注目が集まっている。既に竿を出しかけていた鈴木君だが、それを聞いて手を止めずにはいられなかった。ここでこのまま明日まで釣りをするのは可能だが、朝からは大勢のへら師達に囲まれることになり、その状況で落ち着いた釣りできるだろうか。では場所を変えようか?しかしどこへ?


好ポイントで竿を出しかけていた鈴木君だが…

 悩んだ結果、この場所はへら師の方達に譲ることにして、私達はこの沼の中で最もへら釣りの姿が少ない場所へ移動することにした。好ポイントであるゆえ、後ろ髪を引かれるような思いではあるが、ヘラブナ釣りは鯉釣りよりもこの沼で釣りをできるシーズンが短い。それに明日はせっかくの大会が開かれるというのだから、ここは彼らに場所を譲るのが筋だろう。

 移動した私達は手早く底探りを済ませ、タックルのセットにかかる。ここにも流れ込みがあり、あちこちから魚達のざわめきが聞こえてくる。ヘラブナだろうか、ゴロ石を敷き詰められた足元の岸際でも暴れている魚が見られる。

 三日月湖の先端に当たるこの場所。並び順としては私が右岸側にいつもの2タックル、鈴木君は左岸側で6本の竿をそれぞれ出し、思い思いのポイントに仕掛けを収めてゆく。

 右岸の岸際の私は二本竿のうち一番竿の仕掛けを足元から右岸と平行に約20メートル、右岸からの距離として約10メートル離れた位置にキャスト。水深は2メートルにギリギリ届かない浅さで、柔らかい泥底だ。二番竿は更に右岸に寄せ、足元から右岸に平行に約15メートル、右岸からは約5メートルの距離に打ち、水深は1.2メートルで砂利底。周囲には倒木や流木が犇いている根掛り覚悟のポイントとなる。

 仕掛けは前回とほぼ同じ。エサも今回粉エサを使用しない事以外は同じで、「ガルプ ツナスパイス」と「カープテク ブラッドワーム」を使用する。

オモリ部:(セイフティーボルトシステム)
ユニット:
シンキングリグチューブ50センチ、テールラバー(共にKORDA)、カープセイフティーレッドクリップブラウン(FOX)

オモリ:ナス型25号(カモフラージュ)

仕掛け(ブローバックリグ)
ハリス:
鯉ハリス6号(20センチ)
針:伊勢尼13号

エサー:ボイリー
ガルプ ツナスパイス16mm(1番竿)
カープテク ブラッドワーム15mm(2番竿)、

 空には大きな月が静かに顔を出し、私がセットを終えるまでの間にかなり高く上がってしまった。竿を6本使う鈴木君はまだセット中。彼は左岸側の岸際や足元にある杭などの障害物周りをダンゴエサを使って攻めてゆくようだ。

 「月、綺麗ですね」

 2人の釣り場の真ん中に鈴木君の大型テントが組まれた頃には20時40分を過ぎていた。今回は釣り場選びに時間をかけ過ぎてしまった。

大きな月が浮かぶ 私の釣り場は右岸側  セット中の鈴木君 釣り場は左岸側 

 現在背中側からの追い風が吹いているが、前回のような問題のある吹き方ではない。予報では明日の天候も晴れ。日が落ちた今は寒いくらいの気温だが、朝からは暑くなりそうだ。明日夕方までは大きな風の変化もないようで、良くも悪くも前回のようなことにはならないだろう。

 テントの中。ランタンの下で回し読みする釣り雑誌。広げられたアウトドアベッドに腰をかけての談笑も、今回はあまり長くはできない。もうこんな時間。もう月があんなところまで移動している。

 魚の産卵行動と思われる水音は絶え間なく聞こえてくる。肌寒くて長袖の服を重ね着するような気温だが、水温は昼間の暑さもあって20度を超えており、魚の活性はすこぶる良いようだ。

 突如、鈴木君のブザーが反応した。ドアチャイムを改造して作られたセンサー受信機が明るく光る。テントのファスナーを開け、ヘッドライトで釣り場を照らすと、竿先が揺れる鈴木君の竿が目に映った。ラインを出されるようなアタリではないが、何かが竿を右方向に引っ張っている。小鯉だろうか?しかし鈴木君が竿を持ったときにはその気配が消え、魚の姿のない仕掛けだけが上がってきた。

テント内 釣り雑誌をネタに釣り談義  鈴木君のセンサーが反応 しかし魚はゲットならず


 もうすぐ日付が変わる。そろそろエサ変えをして眠るとしようか。鈴木君もテントの中でセットした新しい仕掛けを持ち、竿に向かった。私も暗闇で黙りこくった竿を手にして仕掛けを回収する。別に心配はしていなかったが、両竿ともエサ、仕掛けに問題はなし。そのまま同じポイントに打ち返す。

 「夜中に釣れるといいですね」

 そんな就寝前の挨拶をして釣り談義はお開きとなった。鈴木君は釣り場でも早寝早起きで健康的。すぐにベッドに入って眠ってしまったようだ。対して私は夜型で、特に釣りをしながら眠るのは苦手なタイプ。今夜も素直に車に戻ることができず、バイトアラームの受信機をポケットに入れて散歩に出たり、釣り場に座り込みながらただ月を眺めたりと気ままに過ごす。こんな過ごし方をする夜の釣り場、特にこの沼の静かな夜が好きだ。だから眠れないのもムリはないと思う。

 あまりにも騒がしい岸際の水面をライトで照らしてみる。そこには光に驚いて逃げてゆく数匹のナマズの姿があった。てっきりフナが産卵しているとばかり思っていたが、普段フナや鯉がハタかないような足元のゴロ石でも水飛沫が上がっているのはそういうことか。どうやらナマズの産卵に当たってしまったらしい。

 いたるところで行われているナマズの産卵。私が竿を出す右岸の岸際でも、常にどこかしらの水面がモゾモゾと動いている状態だ。こんな光景を見るのは初めてのことだ。普段は物陰でひっそり不気味に佇んでいるナマズが表舞台に立ってしまった今、鯉はどうしているのだろうか。不安が沸く。深夜に一発目のヒットを期待していたところだが、この様子では私の仕掛けの周りでも多数のナマズが蠢いているはずだ。ナマズの産卵は深夜に行われると聞いたことがある。ならばこの夜は諦め、ナマズが静まる明るい時間帯に期待のまなざしを持っていった方が良いだろう。夜中のヒットへの期待感が薄れたことで少し眠りやすくなってしまった。ナマズがおとなしくなるまで休息を取ろう。


右岸際 ここでも多数のナマズが産卵していた

 やがて日が昇り、少しだけ開けていた窓の外から車の走る音が聞こえてくるようになった。今日はここでヘラブナ釣りの大会が開かれる。腕をならせたヘラ師達が集まって来ているのだろう。外は予報を見なくても疑うことのない晴天。風は無風ではないものの弱く、ヘラ釣りとしては絶好の釣り日和。「いい天気でよかったな」なんて声があちこちから聞こえてきそうだ。

 やはり夜が明けるとナマズは産卵を止めるらしい。起床した今、あれだけ騒がしかった岸辺の水面がすっかり落ち着いている。小魚や他の魚の気配も戻り、ここからは通常通りにアタリを期待できそうだ。

 各竿のボイリーを新しいものに変え、PVAバッグと一緒に放り込む。昨日撒いた寄せエサはもう無くなってしまっているだろう。追加のフィーディングをしようか迷ったが、仕掛けに鯉やその他の魚のアタリがあったわけではないので下手に追加してしまうのも危険かもしれない。今はこのままにしておくとする。


 寒かったゆうべが嘘だったかのように気温は上昇し、Tシャツ一枚になってもまだ暑く感じる。深夜の時点で20℃を指していた水温計だが、水温の上昇も早く、日が昇ってすぐに22℃に上がった。

 鈴木君がテントの外にパラソルを立てて涼しそうに座っているのが見える。食べていたパンを飲みきれずに口に残しながら、何気なくその日陰に侵入しつつ聞いてみる。

 「夜中どうだった?」

 「ウグイしか釣れません。この時期にダンゴエサはきつかったのかな」

 それでも鯉らしきアタリは一度あったと言う。午前5時頃、私がようやく車の中で寝付きだした頃だろう。鈴木君の竿からラインが引き出され、左岸のカカリに突っ込んだ。どうにも魚を引き出すことができず泣く泣くラインブレイクする結果となったそうだ。


気温が一気に上昇 パラソルで涼む鈴木君

 だが食い気のある鯉がいるということだ。ここは難しい場所などではないし、このポイントは鯉のアベレージサイズが小さく、正直言って大きさに期待はできない。小さくても綺麗な鯉を何匹か釣れれば良いだろうという場所だ。一度チャンスがあったのなら二度目だってあるはず。次に釣れるのがどんな鯉でも、私にとっては2016年の初鯉になる。なんでもいい、ただ鯉のヒットだけを心待ちにする。

 アラームの受信機を傍らに、リグボックスの整理などの作業をしていると遠くから正午のサイレンが聞こえてきた。去年までは防災無線の時報チャイムがすぐ近くで鳴っていたのだが、住民の減少のためかスピーカーが撤去され、メロディが聞けなくなってしまったのだが残念だ・・・いや、それよりもここまで竿に全く反応がないまま正午になってしまったのが問題だ。なんとかしなくては、二連続のボウズを食らってしまいかねない。

 考えた末、各竿のボイリーを変えてフィーディングもし直してみることに決めた。1番竿の仕掛けを回収。傷一つ付かず針に付いてきたツナスパイスを取り外し、メインラインのハイインパクト・バランスドワフターのスパイシークラブに変更する。1番竿を投入しているポイントは去年に比べて底泥が深くなっているように思える。エサが泥に埋まって魚に気づかれていないという心配から浮力の強いワフターを試してみることにした。仕掛けに変更はないが、ハリスの二箇所にタングステンパテを付けて着底後の安定を図る。

 2番竿のエサにも細工をした。こちらはボイリーの種類は変えず引き続きブラッドワームを使うが、上半分をカットしてその部分にイミテーションコーンを乗せるようにした。周囲には砕いたブラッドワームボイリーとスイートコーンを混ぜた寄せエサを少量撒く。万能と言っても過言ではない程の鯉エサとなるコーン。小さく、柔らかくて口当たりの良いコーンはアタリの遠いときに有効だと思っている。故にここでコーンを使ってみたい。


エサを変更 一番竿にスパイシークラブワフター
二番竿はカットしたブラッドワーム+イミテコーン

 再び鈴木君のパラソルの下。口数の少ないタイプの2人だが、ふと生まれる会話は到底結論の付かないような話題ばかりだ。釣り談義とは得てしてこういうものだろうか。その会話を裂く電子音。私のアラームが始めて反応した。受信機で点灯するランプは青。ワフターに変更した一番竿にアタっている。しかし無我夢中で竿へ駆け出して行きたくなるようなアラームの鳴り方ではない。これはウグイか?・・・あぁやはり。案の定一番竿の仕掛けに掛かっていたのは追星の入った立派なウグイだった。


ワフターに変更した一番竿に早速のウグイ

 軽いワフターは水流で揺れ動く。その動きに反応して食ってきてしまったのだろうか。とりあえずはそのまま再投入してみる。これだけで反応が止まらなければ良いが・・・。

 30分後、受信機に緑のランプが点った。二番竿にアタリ。断続的な低音のアラームが1つ、2つ。次の瞬間から音は高音を保ったまま止まらなくなった。間違いなく鯉のヒットを告げている。

 ラインは少し沖に引き出されたが、それを巻き返し引き寄せるとヒットした元の位置で魚が白く浮き上がった。浅い水深でヒットした小さな鯉。浮いたまま然程大きな抵抗を見せず、そのまま足元まで引き寄せられた。タモを使って引き揚げるサイズではないだろう。水際で大人しく往生する小鯉から針を外し、自ら青白く濁った水中へ帰ってゆくのを見送ると無意識に長いため息が出た。やっと今年の釣りが始まったような気がした。これまで釣りをしてきた中で最も遅い時期に釣るシーズン初鯉は、浅場の流木周りで、ブラッドワーム+イミテーションコーンにヒットした50センチ程の小鯉だった。だが自然に出た長いため息は、間違いなく鯉の小ささに消沈して出たものではない。


やっと来てくれた今年の初鯉 二番竿にヒット

 寄せエサを柄杓一杯分追加し、その中に新しいエサを付けた仕掛けを投げ込む。流木に引っかかっていない事を確認し、再びロッドポッドへ預けた。

 水も空も草々も、もう夏の様相だ。この景色の中で初鯉を喜ぶ事には少し違和感を覚える。もう春ではなく夏なのだ。夏の次は秋。その秋はとてつもなく短く、すぐに冬になってしまう。鯉をリリースしてから今年やりたいと思っている釣りの計画が次々と頭を巡っている。出だしが遅かった分、今年のシーズンオフまでに計画全てを消化するのは無理かもしれない。ここからは少し駆け足で行こうか・・・。


鈴木君のパラソルの下。夏のアタリ待ちの光景

 初鯉から丁度一時間後。また同じように、パラソルの下で受信機の緑色のランプが点滅した。これは少し怪しいか…?いやウグイではない、鯉だ。自分の釣り場へ駆けつける。ヒットは二番竿。ラインに流木が擦れる嫌な感触を私の手に伝えながら、今度の鯉は軽いながらも良い抵抗を見せ反撃を繰り返してきた。浮かび上がってきた鯉のサイズはやはり小さい。初鯉と同じくらいだろうか。だが、その姿はとても精悍で美しい。小鯉ながらも淡水の王者たる風格を見せている。これが大鯉に育てば・・・きっと釣り人にとって恐ろしい存在になるに違いない。


2匹目 小鯉だが力強くかっこいい印象を見せた

 ヒットは二番竿のブラッドワーム+イミテーションコーンに集中した。ここで一番竿からもワフターを取り外し、同じエサに変えて連続ヒットを狙いたい。恐らくこの手法では同じようなサイズの小鯉しか釣れないだろう。元々小鯉の多い右岸際のポイントで、アタリが遠く、コーンを使い始めてやっと小鯉が釣れ始めたわけだ。サイズアップを狙うならこのままではいけない。多分、もっと大きな鯉は岸から離れ、障害物があまり密集していない場所にいるのだろう。実際見ていると釣れた2匹よりも大きいサイズの鯉ははるか遠くで跳ねている。そしてそのポイントで、コーンなどは使わず、もっと地味なエサで時間をかけて攻めればサイズアップは叶うのではないだろうか。だが・・・今回はこのままでいい。サイズアップをしなくても、同じような小鯉でも、ヒットが続いてくれればそれだけで満足できる心境だ。

両方の竿をブラッドワーム+イミテコーンにした 小鯉が多いが右岸の障害物際を狙い続ける


 連続ヒットを期待すると意味もなく横目でチラチラと竿を見てしまう。だが鯉のアタリというのは受信機の電源すら入れ忘れているような時に油断を突いて来るものだ。こうやって竿や受信機を気にして目をやってしまうようになると、今まで続いていたアタリすら止まってしまうのが鯉釣りの不思議。釣り人の視線がラインを通して鯉に伝わってしまっているのではないかと思うくらいだ。

 2匹目のリリースから1時間が経過したがアタリがない。鈴木君の竿達もだんまりを決め込んでしまっている。残り時間はいよいよ少なくなった。でも、多分このままでは終わらない。きっと何か起こると予感する。

 帰り際になって面倒くさい思いをしないために、早いうちから車の中を整理しておくことにする。寝袋も、天井に吊るして夜を過ごしたランタンももう必要ない。これらを片付ける時はいつも寂しい気持ちになってしまう。また今度・・・次回一夜を明かすときにはランタンの電池をそろそろ換えなくてはいけないかもしれない。それを買い忘れないようにどこかにメモっておかないと・・・。

 片付け終わった車から降りた時、竿を手にする鈴木君の姿が見えた。タモを準備しているところをみると仕掛けの打ち返しではないみたいだ。カメラを持って私も駆けつける。


車から見えた鈴木君の姿 ヒットしているようだ

 夕日の色に染まったゴロ石の上で鈴木君のファイトを見守る。鯉は60センチくらいだろうか。それがタモへと誘導されるを見ていた時、私の釣り場から短いアラーム音が聞こえた。鈴木君と同時に振り返るが、ラインが引き出されてゆく様子はない。またウグイだろうか。そっちを気にしているうちに鈴木君が魚をランディング。左唇にブローバックリグを咥えたその鯉はやはり60センチ程。アンフッキングマットの上で落ち着いたところを写真に撮ってから、さっきアラームの鳴った私の竿を見に行く。

鈴木君が釣る 60センチくらいか スタイルの良い鯉だ

 異変があったのはみたび二番竿だった。私が鈴木君の釣り場にいる間に何度かアラームが鳴っていたが、すぐに止まってしまったのでてっきりウグイの悪戯だと思っていた。だが、もしかするとこれは少し違うかもしれない。アラームが短い間しか鳴らなかったのはアタリが食い上げだったからだ。弛んだラインは動こうとしない。沈木の枝に絡んでいるようだ。小さな鯉が食い上げ、ポイントよりもこちら側にあった沈木の中に突っ込んだらしい。だが、ここの木の枝は細くて軽いものが多い。今回も難なく絡んだ枝ごと引き寄せ、その先にいた小鯉を捕まえることができた。


3匹目 絡んだ沈木ごと引き上げた

 この竿を打ち返して4匹目のアタリを待つ時間はもうない。二番竿はここで収納することにする。ロッドポッドには一番竿だけが乗り、これは帰るギリギリまでそのままにしておいて終了際のワンヒットを狙う。

 遠くの空から18時のサイレンが聞こえてきた。暗くなる前に納竿するとしよう。鈴木君も同時に撤収準備に取り掛かった。お世話になったテントの分解を手伝ってから、私も荷物をまとめる。

 この二日は過ごしやすく、前回とは雲泥の差が付くほどに穏やかだった。長閑な場所で、がっつかずに穏やかな気持ちの釣りをする。札幌での騒がしい日常から離れたければ、変に気合の入った釣りよりもこうしたのんびりとした釣りの方が良いかもしれない。こんな事を言うと、聞く人によっては小鯉しか釣れなかったことの言い訳にしか聞こえないかもしれないが。

 次回はもう少し大きいのを狙っていこう。もし私が疲れていたら、また小鯉で満足してしまうかもしれないが。