鯉釣り日記2014 再会共戦
 釣行日 5月17日17時〜
5月18日18時
 場 所  雁里沼
 時 間


 突然の気温の低下と冷たい雨。この春を色付けた花々が今夜は冷たく濡れている。淑やかな桜も、勇ましい辛夷も、皆一様に乱暴な横風に揺さぶられた。

 そんな5月16日夜。イタリアンレストランのテーブルに並べられた料理を前に、翌日の釣行の打ち合わせをする。テーブルの向かいにはニャーゴロ君、隣には九州の高橋さん。この3人が顔を合わせるのは約1年半振りとなる。明日はさらにジュンちゃんが合流して一緒に竿を並べられるはずだ。

 運ばれてくる料理に舌鼓を打つが、そればかりで肝心の釣行プランは一向に纏まらない。今回は不確定要素が多すぎた。天候、場所、それぞれの予定。結局この打ち合わせだけでは纏まり切らず、当日釣具店で再度集合し、ここから天候や場所の状況を見ながら決めてゆくこととなった。

 17日当日。この日も空は荒れていた。予報を見る度に天気の絵柄は変わり、昨日だけ降るとされていた雨はこの日の午後になっても止む気配を見せない。釣具店で4人が合流してから第一候補の茨戸川を見に行くが、増水した川面が強風に揺さぶられ溢れ出していた。とても釣りを始められる環境ではない。

 ジュンちゃんの話では、札幌よりも岩見沢方面の方が天気は落ち着いているという。ジュンちゃんはこれまで雁里沼で釣りをされており、札幌で宿泊している高橋さんを迎えるために戻って来られた。朝から荒れていた札幌に対し、雁里沼では一時日差しも見られたという。その上、沼の魚のコンディションも良かったとのこと。今現在、向うの天候がどうなっているかは分からないが、今もこちらより落ち着いているかもしれない。ジュンちゃんの車に高橋さん、私の車にニャーゴロ君を乗せ、一同車を国道へ戻し、買い出しをしてから雁里へと向かうこととなった。

 空は岩見沢に近づくにつれて明るくなった。来た方向を振り返ると札幌の雲がいかに厚かったのかを知ることができる。北村に入った頃には道路の色も変わり、こっちではアスファルトがほとんど乾いている。天気予報ではほとんど変わりなかった札幌と岩見沢だが、ジュンちゃんの言うとおり、こっちに来たのは正解だった。

 今回のフィールドに立つことができたのは17時を回った頃。小雨がパラついてはいるものの、札幌と比べれば雲泥の差だ。そして沼の様子だが、こちらも跳ねやモジリが多く出ており、魚の動きは悪くない。ジュンちゃんによれば昨日はもっと良かったとのことだが、今日も十分に期待が出来る状況だろう。

札幌より穏やかで雨も霧雨程度 高橋さんとアマちゃん

 ここは私にとっても初めてのエリアとなる。三日月湖の先端の一部が狭まってその先でワンド状になり、そこから本湖へと広がっている。まずは誰がどこに竿を出すか。ここは平等にジャンケンで決めることにした。

 結果、高橋さんがワンドの中、ジュンちゃんがワンドの入り口、ニャーゴロくんが本湖に入ったところで、その右端に私が入ることに決まった。それぞれが持ち場へ散り、自分の世界へ入り込んでゆく。村に響くチャイムが18時を告げた。日の長いこの時期と言えども、急がなくては暗くなってしまう。

 釣り場決めのジャンケンで最初に勝ち抜けたは私は、敢えて流れ込みや障害物のあるワンド周辺ではなく、本湖のオープンを狙えるスペースを選択した。理由としてはより広い範囲で複数の回遊ルートを攻められるということと、明確なポイントではなく、そこへ向かう途中の鯉を狙うのがスレた鯉を釣るのに効率的である場合があるということがある。しかし次第にこの選択が自爆であるかもしれないという思いも沸きだしてきていた。時間が無いので大雑把であるが、オモリを引いてみた結果、思ったよりものっぺらぼうな場所だということがわかった。どこへ投げてもサラサラとした柔らかい泥底で、何の抵抗もなくオモリを引けてしまう。障害物、地質の変化にあまりにも乏しい。マーカーフロートを投げ込んでみても、岸際から対岸まで3メートル前後という水深がどこまでも続いている。この位置から攻められる範囲では本当に何もない。

 ならばこちらから鯉にアピールするしかない。岸から20メートル程の所を1番竿のポイントとし、2番竿は岸沿いに回遊してくる鯉を狙って5メートルほどの近場をポイントとする。竿を出す前にそれぞれのポイントにベイトロケットを使ったフィーディングを行った。内容はペレット(7p)にカーネルコーン、鳩のエサを混ぜたもの。ポイントと、その周辺に数回打ち込んでおいた。

ベイトロケットでフィーディング ニャーゴロくんも釣り場を観察


オモリ部:(セイフティーボルトシステム)
ユニット:
シンキングリグチューブ50センチ、
リードクリップ、テールラバー(全てKORDA)
オモリ:六角20号(カモフラージュブラウン)

仕掛け(ヘアリグ)
ハリス:
鯉ハリス5号(20センチ)
針:C-5#4

ボイリー:
スクイッド&レバー(1番竿)、フレッシュフルーツワン(2番竿)+コーン

 なんとか日が落ち切る前にセットを完了させた。とはいっても空が若干明るいだけで、手元は真っ暗になっている。そんな中、黒いPEラインシザースを失くしたような気がするが、それはあとで探すとしよう。

 手早くセットを終えたジュンちゃんとニャーゴロ君が宴会用のワカサギテントを設営し、中で炭を熾していた。懐かしい煙の香りと火の粉の音に癒しを感じる。気温はけして高くはないが、風が弱い分体感温度は暖かい。水温は私の釣り場では14℃であるが、一番遠く離れた高橋さんが釣るワンドでは11℃とかなり差がある。恐らく流れ込みの水で冷やされているのだろう。だが、魚の気配は明らかにワンドの方が濃く、多くの魚が出入りしているようだ。

 釣りのセットと宿泊用のテントの設営を終えた高橋さんが宴会場に合流し、スーパーで買ってきた肉のパッケージを開ける。長く短い夜が始まった。

 止め処ないテントの中の話し声。その内容は釣りに限ったことではなく、様々な話題が飛び交った。会話の絶えないアタリ待ち。単独釣行の多い私だが、この環境には安心感を覚え、とても過ごしやすい。焼肉で満ちたお腹に食後のコーヒーを染み渡らせる。これもまた至福。

宴会テントで夕食を ラム、ツブやホタテも

 程よい満腹感を得られ、食事に一区切りついたところで自分の釣り場の様子を見に行く。アラームが鳴ったのは聞いていないし、スインガーも投入時の位置を維持したままだ。反応はまだないらしい。高橋さんもご自分の釣り場でやり残した仕事をしにテントを出た。ジュンちゃんも仕掛けを回収し、ダンゴにトリッガアイススノーマンの組み合わせで、対岸の柳の木を目印にポイントへ打ち込んだ。

 午前0時。お酒を飲んでいたジュンちゃんが、外で自由に遊んでいた猫達を釣れて車に入った。威勢よく肉を焼いていた炭火は柔らかく力を落とし、心地よく眠気を誘う。ニャーゴロ君は明日用事があるため朝には帰らなくてはならず、私が車で岩見沢駅まで送り、そしてまたここに戻って釣りを続行する予定だ。夜更かしをして寝坊をしてしまってはいけないので、私も今夜は早く眠ることにする。ここまで一度も打ち返しはしていないが、アラームは鳴っていないのでボイリーは無事なはずだ。フィーディングもたっぷり行っているので問題なく夜を明かせるだろう。行動を起こすのは夜明けからだ。

 目を覚ましたのは午前4時。枕元でけたたましく暴れる高い音に起こされた。平日の朝の目覚ましアラームとは違うことに気づいて、釣りに来ていることを思い出す。昔の自分ならばここで焦ってパニックを起こしていただろうが、冷静にカメラをポケットに納め、しっかり靴を履いた。慣れたものだと実感する。

 20メートル先に投げた1番竿にヒット。ある程度ラインは出されているようだが、私が竿を持ってからは走り出すような派手な抵抗は見せなかった。軽い鯉だ。70には・・・届かないか。60台といったところだ。

  60台。まずは釣れたことに安堵  

 ボイリーはまだ針に残っているが、それを外してボックスの上で乾燥させ、投入は新しいボイリーを付けて行う。2番竿のエサ換えはニャーゴロ君を駅に送ってからにしよう。それまでまだ時間があるので、二度寝を楽しむことにする。

 心地よいまどろみから覚めると、高橋さんとニャーゴロ君が既に起床しているのが見えた。すぐにニャーゴロ君を駅に送りに行かなくてはならないので車のシートを起こし、いつでも出発できるようにしておく。

 昨夜は私以外にアタリを取った人はいなかったようだ。ニャーゴロくんは残念ながらここで終了となる。買出しで買ってきたパンをゆっくり口にしながら次の打ち返しの事を考え、ニャーゴロ君の撤収準備を待った。

ニャーゴロくんはこれにて撤収 私の釣り場

 ニャーゴロ君を送ってから釣り場に戻ると、早速一晩入れっぱなしだった二番竿を回収した。ボイリーに問題は無いが、岸から続くゴロ石の切れ目のポイントにアタリがないのは何故だろう。エビやハゼが集まるゴロ石周辺は良いポイントになることは間違いないが、ゴロ石は我々の足場から水中へと続いているので、音や振動の響きやすいゴロ石は我々の存在を水中へと伝えてしまっていることが考えられる。しかし、誰も活動していない夜間くらいアタリがあっても良かったのでは…。とりあえず、投入点を変えてみる。2番竿をこれまで1番竿を投入していた距離に打ち、1番竿を更に奥へと投げることにした。

 ベースキャンプでは新しい炭が足され、第二次ジンギスカンパーティーが開催されようとしていた。今度は昼間であり、風も弱いので外でコンロを囲む。私の好物のマトンや椎茸が美味しそうな音を立てながら焼けてゆく。


  第二次ジンギスカンパーティー開催  

 食事中に少し雨が落ちてきたが、本降りにはならず無事外での焼肉を平らげることができた。食後、私と高橋さんは散歩へ出かけ、ジュンちゃんはエサ変えの準備をする。土手の上へ出て先に出かけた高橋さんを追いつつ、フィールド全体を見渡すと新緑に包まれた穏やかな雁里沼を見渡すことができた。

 高橋さんと土手上の砂利道で合流し、この沼について話ていると、私のアラームの音が聞こえてきた。このトーンは1番竿のものだ。土手の斜面を駆けおりる。

 手ごたえは早朝に釣ったものと同じように、時折首を振るのが分かる程度のものだった。水温が低いからか、魚にガッツがない上、ここの魚は掛ると手前に来ることが多いらしい。単に魚が軽いだけだと思った私は、鯉がこちらに向かってきていることに一瞬気付かず、ラインの回収が遅れてしまった。マズイかなという思いが過るが、寄ってきた魚をすぐに高橋さんがネットで捕まえてくれた。するとその途端に針が外れ、ネットに引っかかる。やはり危ないところだった。

 激しい抵抗を見せず、こちらに向かって泳いできたことで軽い魚だと思っていたが、ランディングしてみると意外と太い魚であった。サイズは78センチ。この雁里で釣った魚では最大のもので、80台がめったに上がらないここでは良い釣果と言えるだろう。このサイズであればもう少し引いてくれても良いと思うが・・・。

  2匹目は78センチ。抱卵している。  

 正午を回った。高橋さんとジュンちゃんがエサ換えに入り、私はジュンちゃんの釣り場で猫と遊びながらキャスティングを眺める。ふと横を見ると高橋さんに何やら動きがあったみたいだ。見に行ってみると小さなナマズがネットに入っていた。食わせにスアマを使っていた仕掛けに来たのだという。

高橋さんが釣ったナマズ。エサはスアマ ジュンちゃんの釣り場

 ジュンちゃんがお昼寝タイムに入ったので、私達もまったりとした時間を過ごす。降りそうで降らなかった雨が少し強くなり、仕掛け談義の為に開けていたリグボックスを濡らし始めた。そろそろ不必要な荷物を纏めて、撤収に備えた方がよいだろう。

 それにしてもアタリが遠い。釣れないままじっとしていることに耐え切れず、もう一度打ち返してみることにする。2番竿の仕掛けを回収する際、底にあった何かにオモリが触れた。もう一度、針を外した仕掛けを投げ入れ、底を引いてみる。今更だが、2番竿を投入したラインの10メートルほど手前に石のような物があるのに気付いた。しかし昨日の開始前の底探りでもこの辺りをオモリで引いている。それで気づかなかったのだがら、かなり小さなストラクチャーだろう。とりあえず、最後の打ち返しで2番竿はその石のポイントに入れることにした。まあ、障害物があるからといって必ずそれがポイントになるわけではないが。

釣り猫あまちゃん 私の訪問に動揺するかろちゃん(2代目)

 しばらく車の中で雨をかわしていたが、30分程で弱まってくれた。集合テントに入ると高橋さんがお湯を沸かしてインスタントカレーを作っていたので、私も一緒に食べることにする。

 時刻は早くも17時になろうとしている。暗くなる前に撤収しなくてはいけない。カレーを平らげてから再び自分の釣り場へ戻り、車の中、使わない道具類から順番に片付けてゆく。最後まで3匹目のヒットを待ったが、今回は間に合わないみたいだ。もう少し暖かくなれば、このフィールドはもっと釣れるようになるだろう。ジュンちゃん、高橋さんにアタリが出ないのは二つ存在する流れ込みに近いということが原因の一つと考えられる。流れ込む水はかなり冷たく、私の釣り場から高橋さんの釣り場まで3℃ほどの水温差があるのだ。初夏に入れば、最も水が動くここは良い餌場となり、また産卵場にもなる。少し時間を置いてから、また釣行しよう。