鯉釣り日記2013 ゴールデンホリデイ
 釣行日 5月4日13時〜
5月5日17時
 場 所  茨戸川
 時 間


 頑なに動こうとしない低気圧が、この5月に記録的な天候を齎している。北海道の一部では17センチもの積雪があり、連休のほとんどを雨の色が潰す。なんておかしな連休なのだろう…。春の陽気やモンシロチョウの舞を楽しむなどを期待することすら忘れ、忘れようにも忘れられないのは雨着や換えの服なんてものばかり。この環境に2日間、どう付き合っていこうか。

 今にも凍りそうな雨と強風が吹き荒ぶ祝日の午後。窓から見える電線が大きく揺れるのを目に、この連休の予定を組み立てることが出来ずに顔を顰める。
 冬が明けたばかりのこの季節。上がらない気温と雪解けによる水質の不安定。良い釣りを期待のできる場所は限られ、考えていたのは小さなフィールドを攻めるような釣りだった。しかし、そんな釣りは担ぎ込みでのワンデーフィッシングとなり、この悪天でそれを行うなんて、とてもじゃないが出来やしない。ここは考えを変えて、大場所で坊主覚悟の泊まり込みスタイルでいった方が良いだろうか。それなら多少の悪天でも車に避難して天候の改善を待つこともできる。ではどこでそれをやろう…。
 雨マークの連なる天気予報の前で思考が彷徨い歩く中、都合の良過ぎるタイミングで送られてきたメール。それは久しく会っていなかった釣友TadashiくんとNoboruくん兄弟からの札幌遠征の報せだった。このメールによって、一瞬にして次の釣行の趣旨が固まった。

 去年は一人黙々と新規開拓を行っていたために、誰かと予定を合わせて釣行することが少なかった。天気の事など頭から離れ、高揚した気分で幾度かメールでやり取りをする。二人は釣行場所に悩んでいた。釣り人の密度の高い場所を避けてのんびり釣りがしたい。幾つか候補地が挙がるが、此処だと言える場所はやはり思い当らなかった。水温の事、水質の事、スペースの広さ、どこをとっても不安がある。私が一つ挙げた候補地として、去年の最後の釣行で行った、対岸の排水場へ向けた遠投の釣りというのがあった。たった一度竿を出したことしかなく、その結果も小鯉が一匹釣れただけ。分からないことが多く、正直言って自信はないが、そこへ入ってみようかという方針で話が固まってゆく。

 憲法記念日に当たる金曜日の夜、Tadashiくん兄弟は滝川から札幌に到着し、釣り場へと入った。真っ暗な中、初めての場所を見つけられたかと少々心配したが、無事に準備を完了したというメールで釣り開始の報せを受ける。私は土曜の午後から入釣予定であり、それまでにヒートアップさせてくれる何かを彼らが起こしてくれないかと期待を向ける。

 当日正午前。午前の用事を済ませた私は、コンビニや釣り具店での買い出しをしながら目的の場所へと車を走らせる。ワイパーを作動するかどうかを迷うような小さな水滴がウィンドウを覆うが、本降りにはならない空模様。どうかセットを完了させるまでこのままでいてくれと願いつつ、目的の場所へとハンドルを切る。

 排水場は稼働しており、白い泡と共に温水が川へ流れ込んでゆく。立ち入り禁止になっている為にその場所へ入り込むことができず、遠目からその水面を見渡すが、空が暗いために水中がよく見えない。この水が本流の水へと混じり込むところから少し距離を置いたところがポイントになると思っているのだが、ここまで仕掛けを飛ばすのはなかなか難しい。
 携帯を開いてみるとTadashiくんからメールが届いていた。「今朝二本釣りました」という件名で「もうそろそろ着きますか?」という本文。もう二本も上げているのか。さすがに彼らは上手い。そしてその下に「もしかして僕たち場所を間違えていませんか?」と書かれている。この対岸が釣り場となっているのだが、そこへ入っている釣り人は一組。あれがそうか…。しかし、彼らにしてはやけに荷物が少ないように思える。「まさかな…」と思いなが らも対岸へと渡ってみると、やはり釣り人は兄弟ではなく、へら釣りに来た人のようだ。

「本当に間違えてるわ…」

 Tadashiくんへ電話をかけ「どこにいるの?」と問うと、どうやら私が入ったことのないような場所にいるみたいだ。一先ず車をUターンさせ、思い当る場所へ走ってゆくと、電話を持ったTadashiくんが手を振りながら駆けつけてきた。
 あぁ、全然違う場所で大荷物を広げている…。

 2年ぶりの挨拶を軽く交わし、その釣り場を見渡すと、そこには相変わらずの光景が広がっていた。ここは普段見向きもせずにスルーしてしまっていた場所。その理由は人通りが多いという事、漁師がエビ籠を仕掛けるポイントであるということ、そして沖には多数のブイが浮かんでおり、カヤックの練習場となっている事で、何にしても賑やかな場所であるからだ。Tadashiくんのバケツには漁師から貰ったというエビが入っていた。カヤックも多く出ており、コーチと思わしき人が自転車に乗りながらメガホンで指示を出している。

   予定とは違う場所で  

 こんな場所であるが、Tadashiくんが2匹の釣果を上げており、Noboruくんも釣果にこそできなかったものの、何やらなかなかパワーヒッターを掛けたという。
 私がここで懸念する要素は、人通りが多く落ち着かないことと、多数のカヤックが行き交うということだが、場所的には悪いものではない。試しにオモリを引いてみると、グラウンド裏のように高低差のあるデコボコがあったりとか、変にドン深になっていたり浅くなっているなんてことはなく、なだらかで落ち着いた印象のある地形だ。遠投をしてみると、カヤックの通り道になっているために底質は粘っこい泥だけであるが、こちら側の岸に寄るに連れて水草が多くなっている。漁師がエビ籠を仕掛けるだけあって、エビや小魚が集まりやすい場所にもなっており、当然鯉もこれに寄ってくるだろう。これなら、不確定要素だらけで下手したら大外れしてしまいそうな温排水狙いの遠投なんかよりもずっと釣りやすいはずだ。地形的に言えばこのような場所は他にもあるが、どこも釣り人が多く入ってしまう。温排水遠投を選んだのはそれを嫌っての事だったのだが、ここは人通りこそ多いながらも、やはりカヤックを嫌ってか比較的釣り人は少なく、この天気なら尚の事何人も来ることはないはずだ。想定外ではあったが、考えてみればなかなか面白そうではないか。「場所変えしますか?」と聞かれたが、兄弟二人は実際にアタリを取っているわけだし、わざわざ別に行くこともないだろう。底探りの竿を置き、タックルを出しに車に戻る。

 狭いスペースの左側にTadashiくん、右側にNobouruくんが入っており、私はその真中に入れて貰うことになった。このスペースの左側は護岸になっており、右はワンドになっている。ワンドの中に入れないかと土手を下りてみるものの、足場が悪く、また漁師が仕掛けたエビ籠のロープがいくつか見えるために断念した。

スペース左 私とTadashiくん スペース右 Noboruくん

 水温はまだ低めだが、魚の動きはいかがなものだろうか。濁りは取れておらず、魚の跳ねは見られない。Tadashiくんが釣ったのは朝方だと言うし、カヤックの影響もあるのだろう。エサは香りを重視し、比較的粒の細かいものを選択。仕掛けは袋式で、針は最近使用しているものの中で一番小さいチヌ9号を使用する。


オモリ部分:(管付き固定式)
サキ糸:PE8号2本縒り
オモリ:小田原25号(カモフラージュブラウン)

仕掛け:(袋式仕掛け)
:巨鯉ハリス(プロブラック)6号
ハリス:巨鯉ハリス(プロブラック)5号
:チヌ9号
エサ
ダンゴエサ:鯉パワー、鯉師、神通力
食わせエサ:乾燥コーン、乾燥パパイア

 狙いは底が藻からフラットに変わる境目としたが、そこまで投げてしまうとカヤックが通るラインに近くなってしまう。Noboruくんがアタリを取ったのはある程度遠投した竿らしいが、今はカヤックが多いために飛距離を控えているようだ。しばらく迷った後、1番竿を藻の境目に投げて置き、2番竿は10メートル以内の距離にキャストすることにした。1番竿はカヤックが居なくなる夜に期待をかけることとし、それまでは寄せエサの意味でダンゴを投入しておく。2番竿の投入点は水草の中になるが、この時期なのでオモリを引けば引っかかってくる程度にしか生えていない。藻場を直撃してしまっても問題ないはずだ。むしろ底が柔らかく、エビや虫が付きやすいなので草が生え切っていない今が狙い時のポイントだろう。

 雨着についた水滴を落とし、車に入りこんで遅い昼食をとっているとTadashiくんが「焼肉パーティーしませんか?」と誘いに来てくれた。食べていたカツ丼のどんぶりをさらげ、兄弟が設営したスクリーンテントに入れて貰うと、コンロと練炭が用意されている。
 久しく食べていなかった炭火の焼き肉に舌鼓を打ち、程良い満腹感を得た頃、Noboruくんのアラームが鳴りだした。テントのスクリーン越しに彼の竿を見てみると、 二つ並んでいるうちの左側の竿の穂先がお辞儀している。
 丁寧なやり取りをするNoboruくんとレトロなグラスロッドの制御によって魚が浮き上がり、やせ形の60クラスが網に入れられた。

食事後、Noboruくんにヒット 痩せ型の60台

 一時強弱を繰り返していた雨は食事中に上がり、西から吹いていた風も落ち着いてきたが、同時に気温が急激に下がり始めた。気温は10度ほどだが、雨上がりは体感温度が低くなる。雨着の下のレイヤーに長袖のシャツを一枚追加した。
 食事中から眠気を訴えていたTadashiくんは溜まらずテントで仮眠に入り、Noboruくんもそれに続いて眠ってしまったようだ。雨の夜中に竿を出し、その後最初に竿を出した場所から数十メートル移動してこの場所へ来たらしい。彼らの大荷物を見ればその大変さもわかる。疲れてしまっているのだろう。私は相変わらず一人でじっとしていられない性分で散策に出かけ、静かになりつつある夕暮れの川辺を楽しんだ。


 
 ガトーキングダムの客室の明かりがぽつぽつと増えゆく中、仕掛けの打ち返しをしようとする手を止めた。雨はまた降り出すはず。もとより低気温の中、夜間にダンゴを握るというのはなかなか辛いものだ。この打ち返しを機に夜間のエサ換えの分までダンゴを作りおいてしまうかと思うのだが、果たしてこの配合は正しい選択であるのだろうか。雨風が止み水面が凪た時、低水温に強いウグイの気配を多く感じた。このままウグイの活性が高くなるのであれば、粒が細かく香りの強い今の配合では不利になる。この打ち返しを最後に大粒で香り控えめなダンゴに変更し、それを作り置いておくか…しかしウグイの攻撃を受けなければ、鯉を釣るにおいては今の配合でも間違いはない気がする。もしこの最後の打ち返しで鯉がヒットしてしまったら…。ダンゴの配合を変えてしまうのは心許なくなるはずだ…。
 考えた末に、この次の打ち返しをダンゴではなく川エビをエサにしてみることに決めた。ここはエビが多く集まる地形をしているし、Tadashiくんが漁師から貰ったというエビがまだ大量にバケツに入っている。エサ持ちの悪いエビは定期的に針残りをチェックして打ち返しを続けなければならなくなるが、手返しはダンゴなどよりも楽だ。当然これもウグイにやられる心配があるが、起きている間だけは小まめに打ち返しをして、就寝時にダンゴに戻そう。これまでと同じ配合で大き目のダンゴを少数作り置きしておき、それを濡れタオルに包んでタッパーに仕舞ったら、仕掛けを袋式から生餌用に作ったヒラマサ針16号の2本針に交換する。カヤックが撤収した今、この後魚が入ってくるであろう1番竿のポイントに期待を向けつつ、エビの付いた仕掛けを打ち込んだ。

   2本針仕掛けにエビを付けて  

 すっかり空が暗くなった20時頃、二人が目を覚まし、ごそごそ気怠い寝袋の音を立てながら起出してきた。寝起きの体に雨上がりの空気は冷たいようで、ストーブを炊き、じっくり体を温め直してから二人はエサ換えに取り掛かる。
 そんな光景を眺めているところに、椅子の背もたれに引っかけていた センサー受信機が反応する。早速来てくれた。エビエサの魅力はこの早いアタリにある。ヒットしたのはウィードの中に打ち込んだ2番竿。小さくて可愛い鯉だが、自分ひとりだけボウズなんて事態を免れたことで深い一息をつく。

   小鯉(ちっこい)でボウズ逃れ  

 この一件を経て、兄弟二人の作業の手が早くなった。Tadashiくんは低活性に対抗すべくエサを小さ目のものに交換。Noboruくんは「C.O.C」と名付けたオリジナルのエサをダンゴをにして、袋仕掛けに装着する。

Tadashiくんのエサのメニュー 兄弟のオリジナルベイト「C.O.C」

 それからいとまなく、Tadashiくんのアラームが鳴り出した。しかしその音は弱々しく、針は空のままで回収されてしまう。その間Noboruくんはトラブルに苛まれ、キャスティング時のラインブレイク、新しい仕掛けを紛失し、それを探している間にもフロロラインをリールから氾濫させていた。
 そんな苦労が報われたのか、次の魚はNoboruくんにヒット。40センチあるかないかの小鯉であるが、岸際に寄せられてからの抵抗が凄まじく、末恐ろしいようなファイト振りを見せてくれた。

   無駄に苦労してたNoboruくんに慰めの一尾  

 しばらくベタ凪の状態であったが、弱いながらも西よりの風が時折スクリーンテントを吹き抜けてゆく。これはちょうど、コンロの煙がNoboruくんの座っているあたりを直撃する方向になり、この風が吹き始めた時にアタリが出る傾向にあるようだ。つまりはNoboruくんが煙たがり、目をシパシパさせ始めればチャンスが訪れるファクターとなる。そうと分かれば「早く釣らせろ」と煙を無理やりNoboruくんの方へ煽ぐなんてギャグをかましたくもなる。
 夜になってから水面に跳ねの音や波紋、もじりが多くみられるようになった。それが鯉のものかと言えばそうでもなく、やはり大型のウグイが多いようで、1番竿のラインがやけに弛んでいると思えば、仕掛けにウグイが悪戯した痕跡が残されていたりする。それは1番竿に集中的に起きている事であり、少し距離を抑え、2番竿と同じように藻場の中に入れてしまった方が良いかもしれない。新しくエビを付け直した1番竿の仕掛けを、これまでよりも岸寄りの15メートル先に落とすことにした。

 時刻は22時。まだ就寝するつもりは更々ないが、後々車に入って寝袋に包まってからは、持ちの悪いエビを使い続けて定期的に回収、打ち返しなんてことをやる気力はない。エビ餌の使い初めに考えたように、就寝前にはダンゴに切り替えるため、この時期に最も信頼している夜のエビ餌釣りの力に頼れるのはあと数時間といったところ。そんなことをボソっと呟いたのを聞いたTadashiくんは、就寝後に使うダンゴを自分のオリジナルのエサを使ってはどうかと勧めてくれた。C.O.Cと名付けられたそのオリジナルベイトは、よしかわさんのコマセと同じように、麦とナッツの香りの優しい拘り抜かれたものだ。お言葉に甘えてそれを少し分けてもらうことにして、制作者直々にレクチャーを受けながらサツマイモで繋いだダンゴを握る。とても魅力的なエサだ。就寝中は自分のエサではなく、これを使わせてもらうことにする。

 ガトーキングダムの窓の明かり が、目を遣る度に消えてゆく。発泡酒を飲み干し、冷えた手を練炭の上にやりながら温めているところに、二度目のセンサー受信。1番竿にヒット。スプールを回し左へと走ってゆく。
 竿から伝わる重量は60後半から70台といったところ。しかしパワーはその想像上回り、幾度となく竿を鳴かせる突っ込みをしてくれる。Tadashiくんのラインを巻き込みながら左側への疾走を続け、茨戸の鯉にしてはなかなか良いガッツを見せてくれた。
 浮き上がった魚をNoboruくんが捕える。70センチ台か…と思いきや、体型が細いだけでもう少しありそうだ。Tadashiくんのアンフッキングマットに乗せてもらい、メジャーを当てるとサイズは83センチと今年初の80クラス。ヒラマサ針をガッツリと咥えた口を大き く上下させている。一昨年のこの時期、創成川での89も同じ仕掛けであった。水温が低く、ウグイこそ多いものの、大型のフナやカニなどの邪魔者が少ないこの時期、やはり生餌は使いやすい。

今期初の80台 本当に良いファイトをしてくれた

 それにしても茨戸川では珍しいくらいに良い走りをしてくれる鯉だった。9年前の5月15日、生振での涙の敗北を彷彿とさせた。やはりこんな場所でもやる奴はやってくれるのだ。そんな奴を手にできるのはサイズに関わりなく嬉しく思う。
 この興奮が冷めず、3人ともテントに入らず、丑三つ時を回った川を正面に立ち話。風はまたおさまってきてしまったようだ。ここでNoboruくんのアラームが鳴るが、穂先だけが曲がり、やけに軽そうなリールのハンドル。フッキングしなかったようで、針は空の状態で上がってきた。
 もうすぐ空が明るくなる。私は仕掛けを二本共回収し、濡れタオルからC.O.Cを手にする。それを再び取り出した袋仕掛けに装着し、岸から10メートルのラインに投げ込んでからベッドメイクに取り掛かった。
 車内は冷たく、寝袋の上にもう一枚毛布を乗せてその中に入ると、しばらく体を横にしていなかったことに気付いた。そのまますぅっと力が抜け、眠りに落ちてゆく。

 3時間程の睡眠で目が覚め、エサ換えをするが、眠気が残っているために再び車に入る。次に目を覚ましたのは午前9時頃だったのだが、今日もこの場所は賑やかで、何艘ものカヤックが目の前を通り過ぎてゆく。漁師もこの辺りに仕掛けてあるエビ籠を回収しにくる頃だろうし、アタリが完全に止まってしまったことで意気消沈。やはりここは昼間向きではない。これといった活動をせず、車の中でダラダラするような時間を過ごす。Tadashiくん達も同じなのだろう。テントから出てくる様子はない。

 正午を過ぎた頃になってカヤックの姿が急に減り出した。いつまでもゴロゴロしているわけにもいかないので、ここで仕掛けを再びエビ用の二本針仕掛けに戻すことにした。残っているエビを針にたっぷりと背掛けにし、同じポイントに打ち込むTadashiくん兄弟も私より早く行動していて、エサ換えを始めていた。

昼過ぎになってカヤックが姿を消した 兄弟はそれぞれ次の一尾に備える

 投入から20分ほど経った頃、1番竿が軽くお辞儀した後、ラインが弛んだ。上げてみると案の定ウグイが仕掛けの先で暴れている。Tadashiくんの竿にもウウイらしきアタリがあり、昨日よりもウグイの活性が上がっていることを匂わせている。
 風は変わり、昨日とは逆の東寄りの向かい風が優しく吹いている。朝方多かったカヤックだが、昼を過ぎてからは昨日よりもかなり少なくなっているようだ。今日の夕方当たりに釣れそうな気がするが、3人とも16時頃には撤収する予定だ。残り物の片付けも兼ねて、残っていた焼肉を消化する。ラムにホルモン、トントロ…思えばこの釣行、ほとんど肉しか食べていないではないか。帰ったらたっぷりと野菜を食おう…。

うーさんの存在は避けて通れない 残りの焼肉を消化

 岩塩の上で焼く豚バラ肉の美味さに感動しているところにNoboruくんにアタリの報せが届く。「ここは小さい鯉の元気がいいね」とその暴れっぷりを賞し、30センチくらいの鯉を優しくリリース。この後にTadashiくんのアラームが断続的に鳴るが走り出さず、ただひたすらピッピッという音を鳴らし続ける。ウグイの悪戯なのだろうか。しばらく竿の前で様子を見るが、音は鳴り止まず、堪らず回収してみるも仕掛けの先に手ごたえはないようだ。

元気の良い子鯉の多いこと アラームは鳴るが…ウグイの悪戯か

 さて、そろそろ片付けを始めなければならない。網の上に残る豚バラの脂の固まり…。10センチほどあるそれをNoboruくんにけしかけて無理やり食べさせてから、しばし彼の気持ち悪そうにする顔を観察。これに満足してから車の中から整理を始めることにする。

岩塩の上に脂の塊。これをNoboruくんに食わせる 食わせた後の様子

 黙々と片付けに入る中、水バケツを洗っている横で2番竿に締めの一匹が ヒットした。いつも竿を回収し、片付けるのは最後の仕事。こういうヒットを期待して、タモ網も仕舞わないで置いておく。サイズは69センチで、「鯉を釣った」という実感を沸かすことのできるサイズと手ごたえだ。

   片付け際のヒット 69センチ  

 今日一日、なんとか降らないでいてくれた雨だが、撤収準備が完了する頃には空が黒くなり、ポツリポツリと水面を叩き始めていた。24時間以上竿を支え続けていてくれたピトンを洗い、竿のガイドを掃除し、仕掛けはハリスが真っ直ぐになるようにしてリグボックスに寝かせる。次の釣りへのモチベーションを高めるための完璧な撤収。今度の釣りへの思いを詰めてボックスを閉じる。

 久しぶりの友人との鯉釣りは充実した気分で締めくくられた。そして本当に楽しかった。この兄弟とまた釣りをすることを楽しみに車のシートベルトを締め、手を振りながら帰路についた。

 今回の釣果はほとんどエビの力に助けられたようなものだ。最初のダンゴスタイルのまま釣り通していたら、恐らくこんなに釣れなかっただろう。エビが良いと知っていながら加工エサを使い通し、釣果を上げている二人の方がよほど上手い。ダンゴにボイリー、鯉釣りに置いて切り離せないこれら加工エサの使い方をもっと考えなければならない。また修行の科目が増えてしまったが、どうしても加工エサで釣りたいという拘りも無い。この釣行終了前に次の釣りのテーマは決まっている。