釣り日記2012 郷に入らば

釣行日時 10月27日17:00~
10月28日13:00
釣行場所・ポイント名 千歳川

 10月最後となる釣行のフィールドは高橋さんから提案を出された場所に決まった。釣行前のイタリアンレストランでの打ち合わせにて、その場所の地図を取り出す。幾度かそこへ訪れている高橋さんから、私は初めてとなるその場所の話を聞き、地図に目を遣り続けた。

 照りつけていた太陽が力を落とし、今や灯るという言葉の方がしっくりくる。そんな秋の午後。昔から存在を知っていたものの、これまで足を踏み入れたことのなかったこのフィールドはよしかわさんのホームグラウンド。よしかわさんとはかねてより掲示板でのやりとりをしていたが、この日初めて対面できることになった。

 今朝からここで竿を出している高橋さんに促され、よしかわさんが釣りをしているという斜面の下へ降りると、今まさによしかわさんが川に立ちこみ鯉とのファイトを繰り広げている最中であった。夕陽を浴び、ほんのりとした朱に輝くグラスロッドはこの秋の情景にとても良く似合う。そんな竿を撓らせていた鯉がすぐそこまで寄せられて来た時、タモ網の前で鯉は姿を消した。最後の首振りで針が抜けてしまったようだ。私と高橋さんにそんな場面を見せることになり、少し恥ずかしそうに川から上がってくるよしかわさんと初対面の握手を交わす。

   よしかわさんと初対面の瞬間 丁度ファイト中だった   

 程なくして突然この場に参加すると言い出したSASAYANが到着した。私達は竿を出すスペースを探す為に川沿いを歩くのだが、ここはそう広い場所ではなく、柳の木のオーバーハングがフィールドのほとんどを占めているため場所探しには苦戦することになった。高橋さんはよしかわさんの下流にあるオーバーハングの切れ目に竿を出し、またこのフィールドの最下流部に当たる千歳川と石狩川の合流地点にも竿を一本入れている。他に同じような場所はないか、あるいは開拓することができないかと歩き回るも、頭上は太い柳の枝が張り、水際は深い泥の地面。高橋さんが捨て竿(?)を出している石狩川の合流点もまた、斜面に柔らかい泥が被さっているなど足場は悪いとしか言いようがなかった。何度も泥濘に足を取られ、長靴に水を入れながら思考を巡らせるも、何れもウェーダーで立ちこみ、川の中にピトンを立てて竿を出すでもしなければ入釣はできない。泊りがけで釣りをするということを視野に入れれば危険を伴うために却下せざるを得なかった。最終的に、数時間後には帰宅するSASAYANはそれまで高橋さんに釣り場を明け渡して貰うことに決め、私はよしかわさんが釣りを終えたら交代でその場所に入れて頂くことにした。

久々にSASAYANも一緒に。3人で場所探し SASAYANは終日まで高橋さんの釣り場を貸してもらう

 私が場所探しに苦戦している最中、よしかわさんにまたヒットがあり、60台の比較的黄色みを帯びた鯉がマットに乗せられた。対岸まで一気に走った鯉を御するよしかわさんの姿はまさに玄人といった風貌があった。水温が下がっている中だが魚の食い気は十分にあるようだ。高橋さんも午前中に連続してアタリを取ったとのことで、出発前の私に写真付のメールをくださり、私の覇気が更に燃えることになった。

再びよしかわさんにヒット! よしかわさんの釣果 よく走る鯉だった

 その後、撤収するよしかわさんと入れ替わり、日が落ち切る前に竿を出すことができた。手早くセットを済ませ、よしかわさんに教えて頂いた情報を元に仕掛けを投入する。仕掛けは袋仕掛けで針は豪鯉吸い込み22号。流れは比較的強い方と聞いていたが、確かに大きな河川に直接流入する川でありながら水深が浅いため、潮によってはかなりの流速になると思われる。オモリは30号を選ぼうとしたのだが、切らしてしまっていることに気付かず補充を忘れてきてしまった。最近はジュンちゃんが作ってくださるスパイクオモリをよく使っていたのだが、それは25号が残り少数。同じ号数のオモリは小田原がある。今回の場合25号でも不安があるのだが、うまく泥の中にオモリを突っ込んでしまえば流されないだろう。そのため底に刺さりやすい小田原オモリを使うことにした。

 エサはよしかわさん特製エサを少々分けて頂いており、郷に従ってそれを使わせてもらうことにした。とは言っても本当はサツマイモで繋ぎたいところなのだが、それを用意してきていないため、大粒の粒子を含む「鯉夢想」に少し特製エサを混ぜただけという形になっている。初めて使うことになるその特製エサの折角の麦の香りが別のエサの匂いに殺されてしまうのが嫌で、勿体ない精神で特製エサの分量を控えた。食わせはもうすっかり定着化している沢庵を使用する。

   「鯉夢想」+よしかわさんの特製エサ  

 待機場から炭火の匂いが漂ってくる。センサーをセットして集合テントに入ると、もう高橋さんとSASAYANが火を起こしていた。その集合テントの持ち主であるジュンちゃんは、前回に引き続き体調不良のため欠席している。2日前の打ち合わせには参加しており動ける状態ではあったようだが、昨日にまた少し体調に変化が見られたため大事をとっての欠席となったようだ。

撤収したよしかわさんと入れ替わりで SASAYANの変な火起こし

 外気温7℃。冷えていくフィールドにテントの声がもれてゆく。いつものワカサギテントの中、今日は高橋さんとSASAYANの三人でコンロを囲み、鶏のスープや骨付きのロースを楽しんだ。SASAYANの訳わかんないしょうもない喋りで賑やかになり、寒さなど感じない。外に出てエサ換えをするのが面倒になる程だ。とは言え、もちろん釣りに来ているのだから、釣りの話をするよりも今の釣りをする事を優先すべきだ。私は度々外へ出て、川の様子を見に行く。思った通りに流れは強くなっており、ラインが思い切り下流へ向いている。隣は高橋さんがSASAYANに明け渡したスペースなのだが、こちらのSASAYANの竿はさほど流れやそれに乗ってくるゴミの影響を受けていない。地形や障害物の影響だろうか。

 エサ換えと同時に投入点を変える。少しでも投げてしまえばあっという間にラインにゴミが引っ掛かり、仕掛けを持っていかれてしまうので、ここは2本ともチョイ投げすることにしよう。フィリッピングで岸から3メートルほどのところに仕掛けを入れるが、こんな足元でも水深は十分にあり、これから水が引いても多少問題はなさそうだ。

 そして待望のセンサーが鳴った。テントから出ると私のリールのクリックが呼んでいるのが聞こえる。電池の弱くなったヘッドライト。初めての場所でいきなり夜戦に入ってしまったために少し不安があったが、魚は小さくあまり走るタイプではなかったのですぐに寄せられた。とはいっても、高橋さんのタモのアシスタントがなければ苦労していただろうが…。

  私にヒット!高橋さんのアシストを受けて  
   
   ここでのアベレージサイズ  

 鯉をリリースしてからややあって、よしかわさんが様子を見に再来された。幅の広がる釣り談義に明るさが増すテント内。此処の人よしかわさんによると、潮の様子から明け方から朝、特に5時から6時頃にチャンスがあるとのことだ。ならば就寝前に一度エサ換えをし、明け方に時合に合わせたエサ換えをすることにしよう。

 午前0時。よしかわさんが帰宅したのを機に日帰り予定のSASAYANも車のエンジンをかけた。このまますぐに帰ると思いきや、話に夢中になって午前1時まで居残ってしまった。彼の釣り場は柳の木の茂る中で、タックルを片付けるには真っ暗なこそに入らなくてはならない。いつもどおりに怖がってごねり始めるだろうと見ていたら、こちらから何も言わずとも 「怖くないからね!一人でできるもん!」と今夜は強気なようだ。

 SASAYANが帰宅して、私達も就寝の準備に入る。最後のエサ換えをするために竿の様子を見に行くとラインにガッツリとゴミが絡んでしまっていた。ちょい投げでも流れてくる藻をかわすことができないとなると、もっと足元に打ち込まないと駄目かもしれない。落としオモリも考えたが、草やゴミが流れているのは水面近くに限ったことではなく、ラインを沈めてしまったら尚の事だろう。新しいダンゴを乗せた仕掛けはフィリッピングではなく、竿先から垂れた状態から静かに水面に入れる感じでセット。潮が変わるまではこの状態でアタリを待つしかなさそうだ。

 午前1時過ぎに車に入り、保温の為に遮光シートを各窓に張り付ける。少々寝心地が悪いがジャンパーを着たまま眠るとしよう。倒したシートも壁もみんな冷たくなっていて、寝袋が温まるのに時間がかかった。

 午前4時、センサーに飛び起きた。しっかりマフラーを巻いて釣り場へ降りてゆくがクリックは聞こえない。センサーが入ったのは2番竿だが魚が付いている様子はなく、ゴミも絡んでいない。空アタリだったのか…。作り置きのダンゴを付けて再投入。するとまたセンサーが入る。今度はウグイがぶら下がってきた。もしかしてさっきのセンサーもこれの仕業か…。竿を2本とも回収し、仕掛けをハリスの長い物に交換。あぁまた体が冷えてしまった…。

 それから1時間半ほど眠った頃にまたセンサーが入る。どうせウグイだろうとノソノソと釣り場への坂を下りてゆくとやはり2番竿が曲がっているだけでラインは出されていない。参ったな、ウグイを寄せてしまっただろうか…なんて思いながら上げてみると掛っていたのは小さな鯉だった。それを手早くリリースしていると、藪の中から高橋さんの声が聞こえてきた。何やら魚をランディングしている様子…。高橋さんは昨日SASAYANに明け渡していた釣り場で再び竿を出し、それからすぐにヒットがあったのだという。魚は80センチ近いのではないか。なかなか立派な鯉だ。サイズを測ってみると77センチ。ここでのアベレージサイズを超え、好釣果と言えるだろう。

こんなのが付いてた ほぼ同時に高橋さん77センチ

 私の鯉のサイズはともかく、よしかわさんの言う通りの時間での同時ヒットだ。さて、ここからどうなるか…なんて思いながらウグイに起こされた分の二度寝に入る私だった。


 多少の風があるが空は晴れて日がさしている。しかしこれからかなり荒れる予報であり、9時を過ぎた頃から南からの風が強風と化す。そして雲行きも怪しくなり、今日はあまりノンビリしている余裕は無さそうだ。目を擦りながら暖かい寝袋から抜け出す。

 高橋さんの姿が見えないが、私が車の中で寝ぼけている時に遮光シートの隙間からよしかわさんが来られたのが見えた。恐らくよしかわさんはこの上流にあるスペースで竿を出されて、高橋さんもそこへ遊びに行っているのだろう。一人エサ換えをし、テントで朝食(すあま)を摂る。

 そうこうしているとテントに高橋さんが帰ってきたので、今後について話し合った。ここから天気が崩れればそれは長く続き、暴風雨となるだろう。今回は早めに撤収しようということで落ち着き、車の中を始めとして少しずつ備品を片付けてゆく。高橋さんもこの千歳川と石狩川との合流点にある小さなスペースに出していた竿を撤収する。この場所は双方の水がぶつかり渦を巻くような流れになっている。そこに入れていた高橋さんの仕掛けは渦に呑まれて酷く絡まっていた。良い場所だと思っているのだが、ここも一筋縄ではいかなそうだ。時間をかけてじっくりと水や地形を読み、細かな作戦を要する場所なのだろう。

SASAYAN撤収後 高橋さんが再度ここに 千歳川、石狩川合流点 狭く足場が悪い

 高橋さんは続いて77を上げた本命の釣り場も片付け始めたのだが、その竿にはセンサーも鳴らさないような子鯉が付いていた。もう少し余裕があればまだまだ釣れるはずなのだが、私も竿を収めるとしよう。まだ肌に感じるほどだが、いよいよ雨も降ってきた。

 私達が片付けをしている最中、上流に入っていたよしかわさんがタックルを撤収して戻ってこられた。どうやら向こうのポイントは根掛かりが酷くて大変らしい。そこで高橋さんに促され、よしかわさんはタックルが片付けられた高橋さんの釣り場で再度荷を解かれた。すると仕掛けを入れてものの5分程で一匹目を釣り上げてしまった。そして続けざまにもう一本!なんという早さ。流石は此処の人だ。

 その姿をもう少し見ていたかったのだが、雨脚も少しずつ強くなってきている。今回欠席だったジュンちゃんがお父さんの車で現れ、私達が使い放題に使ったテントの片付けを手伝ってくださり、なんとか本降りになる直前に全ての荷物が片付いた。そして13時、今回お世話になったよしかわさんと、帰り際に釣り場を見に来られた赤羽さんに見送られながら今回の釣行を終了。いつもブログで見ているよしかわさんのホームにお邪魔して、沢山のアドバイスを頂けるなどお世話にもなり、とても有意義な釣りをさせて頂いた。この後私はジュンちゃんと高橋さんと3人で近くにあるトンデンファームで食事をして、来年の釣りを話し合う。今回高橋さんが北海道で釣りをできるのはこれが最後であり、次に一緒に出来るとすれば来春となる。それまで私はどのように竿納めをして、どのように次のシーズンに入ろうか。冬はすぐそこに迫っている。