釣り日記2012 2012年釣初め

釣行日時 4月14日9:00~22:00 釣行場所・ポイント名 創成川合流

 どれだけ遅くても、どれだけ待ちわびる者を焦らしても、明けない冬はない。春の強い風は、惨淡と眠るが如し冷たい土を暖かく呼び起こした。それがすぐそこのところで踏み止まってしまっていた分、釣り人の針先は鋭く研ぎ澄まされている。

 寒気が留まり、雪解けの進まないこの年度初めは、例年よりも2週間ほど遅れたスタートとなった。それは私個人の釣り初めだけではなく、川の中の環境も同じように、春の訪れが遅れている。また、積雪によって車の進入を妨げられていたフィールドも数多く、4月半ばとなっても、河原には解けきれていない雪が例年よりも多く残されている。

 鯉師11年目となる今年度最初を飾る釣行は、当初ホームグラウンドを予定していたのだが、ここ最近の創成川はあまり芳しい状況が続いていない。水量や入ってくる魚の数が多くなく、ランガンならまだしも、待ち伏せスタイルの釣りをするような状態ではなかった。もとより、捨て雪によって車を入れることすら難しく、少なくとも釣行の1週間前までは、創成川の中への入釣は却下せざるを得ないと考えていた。

 創成川へ上がってくる魚がいないのなら、おそらく最下流部の合流に溜まっているのだろう。この時期の合流はへら師で賑わいを見せるため、その中で鯉釣りをするスペースを確保できるのであれば、オールシーズン安定した釣果を見込める合流なら、釣り場として文句はない。

 今回のフィールドを合流点に決めたものの、1週間前に様子見に来たときには、鯉釣り師を含めた釣り人で、伏籠側、発寒側ともに混みあっている様子だった。そんな混雑に巻き込まれるのも思わしくないので、ここは少し離れたところで釣りをするのが吉だろうか。合流点より少し下、発寒川の左岸で竿出しをすることに決めた。


 フィールドの上流部には、既に鯉釣りのおじさんが一人竿を出している。この方とは以前にもお会いした事があり、しばしの談話の後、私はその少し下流に釣り座を構えた。おじさんの話では、今日の鯉は動いており、既に1匹上げているという。その言葉に俄然気合に熱が篭り、道具を土手に降ろす足もおのずと早くなる。

 気温は約4℃。東からの冷たい風が強いが、空には白い雲すら浮かばず、この年度の幸先の良さを感じさせるほどの青天井。この天気なら、幾分か気温は上がってくるだろう。水温は8℃であり、冬場の寒釣りとしては十分に鯉がエサを食う水温となる。

 護岸が施されているここではピトンは使えない。隣のおじさんも三脚を前後に2本立て、それに竿を寝かせている。かろうじて護岸に積もる土にバンクスティックくらいは立てられるが、それよりも、まだある程度の深さを残している残雪にフォーク竿立てを挿すのがいいだろう。そのフォーク竿立てには、いつもどおりメインタックルを掲げ、その隣にバンクスティックを立てて捨て竿のサーモンロッドをセットした。

 次は仕掛けとエサ。今年の初鯉にはどのような罠を仕掛けてやろうか。

   エサのバリエーションはいくらでもある  

 リグケースから取り出したのは、やはりいつもの袋仕掛けだが、針はこれまで使ったことのない海津の18号をチョイス。本命竿は、特異な事は考えずにダンゴエサでいく。そして捨て竿の方だが、こちらは2本針仕掛けにマシュマロを付けて試してみることにする。これはパンのように水中で揺らめくと同時に、パンに比べて針持ちがよく、アピールも効く。

オモリ部:管付き固定式 (天秤仕様)
オモリ:ジュンちゃんお手製のスパイク25号
サキ糸:便利糸12号ダブルライン
三角ピンを天秤に使用している。

仕掛け(袋仕掛け)
ハリス、袋共に鯉ハリス6号(プロブラック)
ハリスの長さはミディアム(12センチ)
針:海津18号

ダンゴエサ
「鯉将」+バーディ+鳩のエサ(少量)

食わせエサ
焼酎付けコーン+乾燥コーン
 
捨て竿

オモリ部:中通し遊動式

オモリ:お多福型18号
サキ糸:便利糸12号ダブルライン

仕掛け:2本針
ハリス:鯉ハリス6号(プロブラック)
針:海津18号

エサ
ホワイトマシュマロ

 午前10時実釣開始。

 本命竿2本の投入ポイントは、両方とも遠めの創成川と発寒川の水の境目、捨て竿の2本は近めのポイントに打ち込み、春の日差しに煌くラインを初鯉の元へと送り出す。投入後は受信機を車の中に持ち込み、助手席でコーヒーを飲みながら、久しぶりのまどろみを楽しんだ。

 10時20分、この日一緒に過ごす予定のSASAYANから、これから向かうとメールが入った。この場所を伝え、到着を待ちつつ、エサ換えの時間も彼の到着と同時に行うことに決める。そのメールに返信しているところに、隣のおじさんが私を呼びに来た。どうやら2匹目をランディングしたらしい。

 その鯉はスマートな流線型の70台。悪く言えば痩せているのだが、午前の時点でもう2本目が出るということは、おじさんの腕を差し引いても、コンディションはかなり良いものになっていると窺える。また、到着時点では8℃だった水温も9℃と上がり始め、ここから先も大きく期待できる1日になりそうだ。そしてその鯉をリリースして間もなく、おじさんの別の竿に連続ヒット。食いが浅いのか、残念ながらこちらはフックオフしてしまった。
 
 発寒川左岸。合流の少し下。ここは川名が伏籠川になる  日の差す車内で

 11時、SASAYANが到着。彼は私と顔を合わせるなり場所変えの提案を出す。ここよりも合流の発寒側の方が期待できるのではないかという。つまり発寒川右岸で、この対岸に当たる。あまり変わらない気もしなくないが、本来なら私もそこで竿を出していたことだろう。ここに来たのは混雑を避けるためであるが、創成寄りにへら師が多いものの、昼近くになる今でも、発寒側に釣り人の姿はない。ここはSASAYANの提案に乗ろう。1度目のエサ換えはせずに仕掛けを引き上げ、荷物をてきとうに車へ放り込んだ。そして対岸へと場所を移し、エサ換えのために作っておいたエサをここでの一投目に使う。

 合流発寒側へ移動 SASAYANは創成寄りに

 今回は専ら合流点で混ざり合う水の変化を狙うことにしている。発寒川右岸の角に場所を取った私は、ここでも発寒川の濁った水と、創成川の透明度の高い水の入り混じる境目に仕掛けを投入した。1番竿、2番竿共に遠めのキャスティングをしてるが、1番竿は若干近め、2番竿は30メートル以上の遠投で投げ分ける。捨て竿の方は創成川と伏籠川の水の境目を狙うが、エサのホワイトマシュマロに可能性を感じないため、ボイリーにチェンジすることにした。水温の低い中、セオリー通りにスイート系とフルーツ系のものを使い、1本はガルプカープのフレッシュフルーツワン、もう1本も同じくガルプのアイリッシュクリームでいく。

 13時、セットを完了させた私たちは、それぞれ車に入り込み、私は持ってきた弁当で昼食を。SASAYANは疲れているようで、シートを倒して眠っているようだ。何やら前日の晩から泊り込みの海釣りに出ていた上に、一睡もしないままここに来ているらしい。

 空は依然晴れ渡り、青い水面に鯉の跳ねがひとつ、ふたつ。捨て竿のアラームが反応するが、これは魚ではないようだ。私が使っているサンドリッジのアラームは、送信機側で一度「ピッ」と鳴っただけで、受信機が「ピピピピッ」と連続して鳴ってしまうのが難点。安価な上に性能的には申し分ないのだが・・・。
 それはさておき、打ち返しのタイミングを考えなくては。好ましい状況ではあるものの、低水温による活性不良を考慮して、打ち返しのペースは遅めとした方が良いだろうか。


 14時30分、この時間になって今回初めてのエサ換えをする。各投入点は変えずに攻め続けるが、ダンゴの配合はこれまでのものに「神通力」を加えた。特に大きな理由もないが、エサ打ちのペースが遅い分、エサ自体にアピール力を付けた方が良いと考えたためだ。

 エサ換えが完了した時、伊藤君から「今から行く」という旨の連絡が入った。そして登場した彼は、私とSASAYANの間に竿を出し、イソメをエサに創成川のカケアガリにキャスティング。

 その準備を横で眺めていると、私の2番竿に初のアタリが出た。必要以上の速さで竿に飛びつき、小さいであろう糸の先の獲物を翻弄してやる。40センチほどの小鯉が浮き上がり、水面から顔を出すが、その瞬間に針が外れてしまった。小さいのでどうでもいいと言えばそうなのだが、上がれば初鯉となった魚だ。なんとなく納得がいかぬまま、針にエサを付け直すが、それを再び同じポイントに送り込もうとする時には、あんなチビちゃんではなく、もうちょっと大きい奴をこれから釣って、2012の初鯉にしようという意気込みが出ていた。そう、チャンスと踏んでいるのはこれから夜にかけての時間帯なのだ。

 16時。これから夕マヅメに入る。今まで熟睡していたSASAYANも起き出して、エサ換えを始めた。思っていた通り、創成側で竿を振るうへら師達にも、ポツポツとアタリが出始めているようだ。気温は下がってきたが、同時に風は弱まり、静かになった水面を見渡せば、魚が動いているのを目視できる。

 突如一人のへら師の竿が絞られ、ラインのキャパシティを大きく超える力で水中へ引きずり込もうとする。へら竿は弓なりになりながらもそれをカバーし、ついに魚の動きを制した。正体は70センチクラスの鯉のようだ。土手の天辺に腰掛けて、そんなへら師達の躍動を眺めながら、伊藤君が持ってきた沖縄土産のさとうきびにかぶりつく。私達へのチャンスも遠くはないはずだ。
 へら師達が動き出した 寒い釣り場でさとうきびを・・・

 残りのさとうきびを車に仕舞いこもうとした時、2番竿のセンサーが入った。瞬時に体を反応させて土手を駆け下りるが、軽い空アタリだったのか、ラインが若干弛んでいるだけで、クリップすら外れていなかった。打ち返しをすると共に、これから使うことになることを期待して、ボックスから新しいダンゴの袋を取り出し、開封した。そうこうしているうちにSASAYANは車と共に姿を消し、どこかに出かけてしまったようだ。「釣具屋でも行ったのかな」 なかなか帰ってこないSASAYANの事は忘れ、伊藤君と釣り場をふらふらしながら時間を潰す。そろそろ暗くなる頃だ。


 18時30分。どこへ行っていたのやら、SASAYANがようやく釣り場に戻ってきた。彼の手には謎の延べ竿。というか、これは鯉竿だ。鯉用の延べ竿ではなく、大鯉専科と同じ磯竿ベースのぶっこみ用の鯉竿。すべてのガイドを抜き取られ、完全に延べ竿に改造 (破壊) されていた。SASAYANは、へら師の延べ竿での鯉とのバトルに感化され、一度家に帰ってこれを作ってきたらしい。相変わらず、わけのわかならい行動力。確かにこれなら普通の延べ竿よりもパワーを使えるが…。

 長い間釣り場を離れていたSASAYAN 家でこれを作ってきたらしい。鯉竿を延べ竿に改造

 SASAYANが謎の延べ竿をセットしている最中、私の1番竿がヒットを告げた。今度はしっかりラインが出ており、竿を持てばそれなりの手ごたえを感じる。遠投している1番竿なので、魚を寄せるのに時間がかかり、しかもこいつはネチネチとうねる様な暴れ方をしつこく繰り返す。ランディングしたその姿はアベレージオーバーか。車からヘッドライトを取り出してきて、今年の初鯉を照らし出す。タモの枠と比べると、ほぼ70センチジャストのようだ。それにしてもこの鯉、胴体の太さと比べるとやけに顔が小さい。横から見ると目の位置すらわからないくらいに顔のパーツが中央に寄っており、SASAYANが「前●敦子みたい」と発したことで、リリースするまでの間、この鯉のことを敦子と呼ぶことになった。(笑)

 2012初鯉 この角度からでは普通に見えるが 実は顔のパーツが極端に中央に寄っている

 これでこの釣行の目的は果たせた。あとはこれ以降、年末までにどこまで伸ばせるか。もちろんこの鯉のリリース後も続行し、釣果を重ねてゆくつもりだ。

 伊藤君はいつの間にか帰ってしまった。へら師がいなくなった今、この場には私とSASAYANの二人だけ。さすがに外に出ていては寒いので、車の中での待機となったが、SASAYANも午前中から「釣るまで帰らない」と意気込んでおり、最初からこの夜戦に持ち込む気は満々のようだ。しかし、家まで帰って改造(破壊)してきた元鯉竿の延べ竿は、第一投の前にあっさり折れてしまい、そのことで少々消沈しているみたいだが・・・。

 車内で雑誌を読んでいると、知らぬ間に時間が過ぎており、時刻は20時を過ぎ、もう21時になろうとしている。ここまでほとんど物音が聞こえてこないことから、SASAYANにもアタリは来ていないようだ。
 敦子をキャッチしてから2時間。数年前のこの時期、いや、もっと早い時期だったか、同じ場所で同じポイントを狙った釣りにて、夕方から連続アタリが出たことがある。それもあって、この夕マズメ以降に期待していたのだが、今回はそのようなコンディションではないみたいだ。

 風に水面が揺らぐ。外灯に照らされながら揺れる水面を見るのは久しぶり。去年のゴールデンウィーク以降、この界隈で夜釣りをすることはなく、専ら田舎の三日月湖などに通っていたものだから、夜中でも明るい釣り場というものを懐かしく感じてしまう。こうして外を眺めているうちに、センサーランプが点滅しないだろうか・・・そう思った時、受信機の電源がパツンという音と共に切れた。

 本当にランプが点滅してくれるとは。受信機が切れたのはバッテリー切れのようだ。今度のアタリは二番竿。手ごたえは軽く、一方的にリールを巻けてしまう。40センチといったところか、夕方前にバラしたのと同じくらいの鯉が、海津をがっぷり咥えて上がってきた。

   2匹目のチビちゃん  

 ここまでにしておこうか・・・。時間はまだまだあるが、これ以上を期待できる状況でもないだろう。風はまた強まり始め、昼と夜の気温差のためか、霧が足元を這うように流れてゆく。寒さに手が悴む前に片付けてしまおう。連続アタリの期待は破れたが、十分な初釣りになったために、惜しげなく竿を収納することができた。私の片づけが終了すると同時に、SASAYANも車から這い出て片づけを始めた。彼は明日バイトが入っているようだし、この期待はずれのコンディションではさすがに諦めるほかないだろう。

 22時、2012年のスタートを切る竿初めを終了させた。長い冬を越え、これから新しいシーズンが始まることを喜ぼう。今年も今年でやりたいことは山ほどあるのだ。さぁ次回は・・・・。