鯉釣り日記2012 鯉の釣り方忘れた
 釣行日 10月20日16:00〜
10月21日16:00
 場 所 茨戸川
 時 間  天 気 曇り時々雨 南〜北西の風


 夜空には微かな渡り鳥達の声が通り過ぎ、昼は控えめな日差しが葦の穂を金色に輝かせる。いつもならその光景に憂いを感じるはずであるが、この夏が長いものになったせいか、素直に秋の美しさを目にすることができる。いよいよ気温が下がり始め、虫の声はもうない。空模様は去年と同じ狐の嫁入り。そんな茨戸に足を踏み入れたのは14時を過ぎた頃だった。

 まずは水面に手を入れ、続いてフロート付きのオモリを投げ込んでみる。夏場にはウィードだらけになってしまうこの場所にはまだその名残がある。茶色く枯れ、水面にはもうほとんど見えないが、どれほどの範囲に藻が蔓延っていたのかをオモリの感触で探る。ここはネット裏、グラウンド裏という呼称があるが、その範囲は800メートル以上に及ぶ。今日はその中からどこを選ぼうか。場所によっては沖まで浅かったり、ドン深になっていたり、カケアガリの下にひどいカカリが入っていたり…。考えているところに今回の釣りメンバーの一人であるつるたろうさんが到着した。そして川崎の高橋さんも現れる。残念ながら、今回はジュンちゃんが体調を崩し気味であるということを案じて欠席。札幌に着いてジュンちゃんと合流した高橋さんはジュンちゃんの車を借り、それを足に単独でここに来ている。明日の早朝にはニャーゴロくんも参加する予定だ。

ここはネット裏、グラウンド裏の中間に当たる 今回ジュンちゃんは欠席。車だけ高橋さんに乗られて出席 
 集合テントを立て・・・ つるたろうさんの釣り場。天気は狐の嫁入りで虹が出た  

 気温16℃。南風が吹き込み、この日の最高気温は18度。前日よりも6℃程高くなっている。しかし風はこの後北寄りに向きを変え明日はまた5℃程下がり、最高気温は13℃という予報が出ている。今の水温は14℃。これから夜の冷え込みがあり、明日昼を迎えても気温の低下や冷たい雨が降るとなれば更に下がる一方となるだろう。
 
 相談した結果から場所を決め、16時30分に準備を開始した。下流からつるたろうさん、私、高橋さんの順に竿を並べる。ここはグラウンド裏に比べて浅く、手前の水深1メートルから少し先でカケアガリとなり、水深3メートルとなる。そこからは緩やかに傾斜しているようだが、大きな変化はないように見える。

 私は「鯉パワー」ベースにきな粉と水で一晩ふやかしたバードフードという配合でダンゴを作り、カケアガリ下に一番竿、その奥に二番竿を投入した。食わせは夏の当別川釣行からお気に入りの沢庵。何よりこのエサ持ちの良さはジャミの多い水域でも安心して待つ事ができ、これまで私が使ってきたドライフルーツにも負けていない。更に安価でどこでも手に入り、針付けもしやすいとなればもう文句はないだろう。


   今回はきな粉配合のエサで・・・  

 準備中には既にヘッドライトが必要になる暗さになった。一時雨が降るもすぐに止むが、17時を過ぎてから南西の風が強くなってきていた。

 大勢で竿を並べられるとあってこのネット裏、グラウンド裏エリアを選んだが、正直言って、この時期のこの場所ではあまり鯉の寄りは期待できない。更に場荒れが進んでいるとなれば尚更で、エサ打ちのペースは長く取り、無駄にエサを残さないのが正解だと思っている。次のエサ換えは3時間後の20時とし、それまでは設営したワカサギテントの中で明かりを灯し、センサーに呼び出される事を望みながらの談笑会となった。

   アタリ待ち場の集合テント  

 エサ換え時に水温を測ると、夕方から2℃下がった12℃のメモリを指した。これ以上は下がらないと思うが、上がりもしない可能性が高い。こんな状況でのダンゴエサはバラケの良い配合を施されることが多い。今回使っているきな粉は優しく強い香りが特徴的だが、固まりやすく、下手をすればバラケないダンゴが出来上がってしまう。念の為、このエサ換えでは一投目と同じ水分量で、ベースとなる「鯉パワー」の分量を増やし、更にヘラのバラケエサである「もじり」を追加した。

 21時。ここで私達も夕食タイムを取ることにする。前回高橋さんが来札した釣行では、ジュンちゃんが釣ってきたイワナを使い、豪勢な料理で朝食を楽しんだ。そして今回もそれに則り、今度は高橋さんが持ってきてくださった高級チーズを使った料理をテント内で調理する(高橋さんが)。買い出し時に買ったサケを使い、チーズ乗せのホイル蒸し、洋風味噌スープ、チーズトースト…。釣り場での食事に舌鼓を打つのは、やはり前回のイワナ料理以来だ。そして初めて口にするヤギのチーズ。クセがあり好みが分かれると聞いていたが、私にはドストライク!すっかり惚れてしまうことになった。

初めて頂いたヤギのチーズ 高級チーズを使った料理を頂く これはサケのホイル蒸し

 味噌スープの鍋を平らげ、食後のコーヒーで一息ついているところに、高橋さんの胸元の受信機からヒットコールが鳴り出した。「うぉしっ!きたぁ!」そう、この瞬間。静から動へ転じるこの瞬間。カケアガリでヒットした高橋さんの一尾目は、つるたろうさんによってタモに収められ、この寒さを一掃するかのように忘れさせてくれた。

高橋さんにヒット!食後の丁度よいタイミングで 60台 冷たい水面から
 
 つるたろうさんが就寝し、私と高橋さんは日付が変わるまでコンロの炭火を見つめながら静かに談話をする。二人分の息が白く浮きだし、寒さが目に見える。こんな時のコンロの炎は、見ていると安心や癒しの類のものを感じる。


 日付が変わって30分程が経ち、そろそろ私も眠ることにする。ニャーゴロくんからは夜明け前には来るとメールが入っているし、今夜は早めに寝て早めに起きよう。エサ換えを済ませ、歯を磨いていると数時間前から遥か北の方で光り続けていた雷光が激しく見えるようになってきた。石狩北部で雷注意報を齎していた雲が少しずつこちらに近づいているようだ。間もなくして雨が降りだし、雷鳴も轟く。寝袋に入り、体を温めている頃には既に雷雲がすぐそこまで迫り、雨は勢いを増した。

 午前5時。依然雨が降り続ける中、ニャーゴロくんが到着。高橋さんにヒットしたことと、ワカサギテントで雨を凌ぐように伝え、私はニャーゴロくんのセットが終わるまでの間、寝袋から出て外の寒さに体を慣らす。予報どおりに北寄りに向きを変えた風は冷たさを増し、また一層強く吹き始めていた。日が昇った頃には一時雨は上がるが、その後も雨雲が所々に浮かんでいる。川は水温12度のまま増水し、足元に溢れかえっていた。

日が昇るまで雷雨が降り続けた 増水し足元まで迫る
 
 午前8時。高橋さんに二度目のヒットコール。私はデジタルカメラのムービーを回し、ニャーゴロくんと共にファイトを見守る。なかなかの良い鯉ではないだろうか。カメラを片手にタモを延ばそうとするが、少々無理がありそうだ。タモをニャーゴロくんに渡し、代わりにサポートしてもらうことにしてもらいランディング。70台の体格の良い鯉だ。高橋さんは何故か鯉を赤ちゃん抱っこしながら眠っているつるたろうさんを起こし、その赤ちゃん抱っこの状態のまま写真撮影を行った。




ムービー

高橋さん2匹目! なんでそんな抱き方!?
 
 このアタリの遠い状況の中、高橋さんに連続ヒットしている要因の一つとして考えられるのは特別なエサを使っていることだ。それはよしかわさんお手製のコマセエサ。この釣行前、高橋さんはよしかわさんと会っており、そこでよしかわさんのエサを少し分けて来てもらったそうだ。私もそのエサを見せてもらったが、エサの入った袋自体から玄人のオーラが漂っていた(笑 でも本当に)。優しく甘い香りと質感のそのエサは、ブログを見ての通りの拘り様。主に市販品のエサや手抜きエサを使用している私も是非参考にさせて頂きたいと思う。

   高橋さんが分けてもらったよしかわさんのエサ  

 目を覚まして最初に目にしたのが鯉を豪快に赤ちゃん抱っこした高橋さんという驚愕の起こされ方をしたつるたろうさんと共にテントに集合し、朝のコーヒーブレイクを楽しむ。炭を足したコンロ、そしてその周囲にはニャーゴロくんの靴と靴下。ニャーゴロくんは長靴ではなくスニーカーを履いてきていたため、先のタモ入れの時に増水して溢れていた水に足を濡らしてしまっていた。私がカメラなんか持たずに普通にタモ入れをしていれば良かったものの、すっかりニャーゴロくんが長靴を履いていないということを忘れてしまっていた。

   ニャーゴロくんの足が水没した  

 午後になってようやく雨雲が落ち着いてきたみたいだ。だが風は依然強く荒び、遥か下流の風が直接吹き抜けるラインの水面は激しく白波を立てている。つるたろうさんは午後から仕事があるとのことで昼前には撤収し、ニャーゴロくんは寝不足のため時折仮眠を取りながら靴が乾くのを待っている。テントの外ではまるで太陽が高速で移動しているかのように地面を照らす光が強くなってはまた弱くなる。川の水位は多少引いてきただろうか。これならニャーゴロくんにヒットがあっても靴を濡らすことはないだろう。

エサ換え時、ニャーゴロくんは高橋さんからよしかわさんの特性エサを分けてもらい、自分で用意していたきな粉と混ぜたダンゴを作り投入した。

   ニャーゴロくんもよしかわさんのエサを使って  

 そしてそのニャーゴロくんのブザーが鳴り響く。椅子に腰かけたままウトウトしていたニャーゴロくんは興奮する私達の声に飛び起き、そしてブザーの音に飛び出した。ヒット時、魚は少しラインを出していたのだが、ポイントからそう離れないうちに動かなくなり、そのまま沈黙を守り続ける。掛りに入られてしまったようだ。上下左右に引いてみてもビクともせず、ニャーゴロくんはそのままラインのテンションを落とし、魚の方から動くの持つことにした。入られているのはカケアガリの下にある大きな障害物のようだ。

 20分が経過したがニャーゴロくんの竿に変化はない。竿を持ってみてもやはり動かないままのようだ。私や高橋さんもニャーゴロくんから竿を受け取り、それに抗ってみるが、ただ厳しいというのがわかる感触ばかりが伝わってきた。どんな入り方をしているのか、まず何が沈んでいるのかわからないために考えようもない。ただ、若干竿を左に向けたところでズズッ…とラインがずれたの感じた。これをきっかけに何とかできるのではないかという期待が沸いたものの、時たまラインのズレや魚が頭を振る感触が伝わってくるだけで、出せる感じはない。私も7月に行った当別川釣行にて対岸のブッシュに突っ込まれ、魚を出すことが出来ない状態になった。川が浅いためウェーダーで対岸まで渡り、ラインを辿って魚のが突っ込んだブッシュを手で直接探ることができたのだが、それはとても竿で外せるような掛り方ではなかった。このカケアガリの下で、ニャーゴロくんの鯉もそのような状態で掛りに入っているのならば、それはもうこちらの敗北が決まっている。竿をニャーゴロくんに渡し、あとは彼に任せることにした。

   ニャーゴロくんにヒットするが掛かりに入られた  
   
   私も掛かり出しに挑戦するが・・・  

 もう15時になろうとしている。これからの天気に不安があり、またあっという間に暗くなってしまう時期なので、早めに撤収することに決めた。私達がテントを畳んでいる中、ニャーゴロくんは腑に落ちない表情で、掛りに入られたラインを切り、竿を回収してきた。さぞ悔しいだろう。

 それにしてもよしかわさんのエサの効果には驚かされる。この状況下でこんなにも早いアタリを出すとは・・・。ここ最近の私はエサに対する研究心を忘れ、拘りや創意工夫というものをすっかり無くしていた。それに気づかされ、この冬はもう少しエサに対して考える時間を取ろうと思う。

 薄暗くなった16時半には全ての荷物を積み終えた。釣果を得ているのは高橋さんだけであるが、つるたろうさんもニャーゴロくんもそれぞれアタリを出している。アタリ無しの坊主を食らっているのは私だけとなっているのは寂しいが、久しぶりに多人数で竿を並べられただけでも十分楽しかった。

 今回高橋さんが札幌で釣りをできるのは来週末で最後になる。11月初めのシーズンオフ直前に行われるその釣行が私の竿収めとなる事が多いのだが、さてどうなることか。