鯉釣り日記2012 七夕の夜
 釣行日  7月7日 18:00〜
7月8日 17:00
 場 所 石狩川
 時 間  天 気 晴れ(微風)若潮


  川底にへばり付き、引き離そうとすれば大きく首を振る。1年前のあの夜に、焚火の傍らで手にした感触が忘れなれない。あんな奴にまた会えるだろうか。川の大きさに比例した夢を求め、この夏も此処に参ずる。
 この広い河川敷の中でも、入り込める場所は多くない。事前リサーチの末に絞った1箇所にて、車と心を止める。期待と不安が大きく入交る。そんな場所だ。

 16時には釣り場に到着していたものの、他の場所探しや、今回の釣り場のポイント選定と作戦立てに大きく時間を使い、セット完了は18時を回った頃となった。ここは魚が入ってくる期待があると同時に、攻めるのに躊躇させられる要素がある。岸際に敷かれたブロックは思ったよりも広く川底へ続き、そしてこの形状。これが底まで乱立しているとなれば、そこから魚を引き抜くのには苦労させられるだろう。巻かれないはずもなく、特に暗い中では慎重を要する。特に、ある程度のところまで魚を寄せた後、最後の一撃で潜られるようなことがあれば、確実にブロックにラインが触れる。

こんなブロックが水中へ続いている 確認事項がたくさんある

 ラインには保護のためのチューブを被せ、その先に袋仕掛けを結ぶ。去年同様にダンゴエサで攻めることに決め、選んだのも去年と同じ「どすこい」。違うのはオモリ部分と針だけで、今回は30号のスパイクを捨てオモリにし、針は最近使うことの多い海津20号を選んだ。

 ブロックは水に浸かり水面に見えなくなる箇所から更に15メートルほど水中に広がっている。そこから砂底に移り変わる点で水深3メートル弱。それより奥では4メートル、4.5メートルと深さが増してゆく。去年の場所は投げても1.5メートルなんていう浅場で、今年に入ってまた砂が溜まり更に浅くなっていた。ここはそこからそう離れていないのだが、十分な水深を保っている。この水深がファイト中、水底のブロックにラインが擦れる危険を軽減させ、ブロックにエビや小魚が付くことが上乗せされて、魚が入りやすい環境になっていると考えられる。
 投入したのは、15メートル先のブロックと砂地の境目に1番竿。そして2番竿はその奥の水深4メートルラインに打ち込んだ。思い切って水中のブロックの中に突っ込んでみるというのも有りなのかもしれないが、ブロックとブロックの間には細い隙間があり、その中に仕掛けが落ちてしまう事を考えると不安になる。とりあえずはこのポイントで攻め、実際に魚が掛った時、どのようなファイトになるのかを確かめたい。

仕掛けはとりあえずいつも通りの袋仕掛け海津20号 オモリはこんなところか・・・。スパイク30固定式

 タックルセットを終え、待ち場の設営中、去年篠津湖でお会いしたTeam North Carpの近藤さんと柿崎さんがご登場。まさかこんな所でお会いするとは思わず、近藤さんに後ろから声をかけられた際、一瞬驚いてしまった。お二人は去年私とSASAYANが入った場所へ入釣され、自分の釣りに微塵も期待していない私は、早速お二人の釣り場にお邪魔して入り浸るのだった…。


 自分の釣り場に戻る頃には空が色を変え、周囲は涼しげな夜のフィールドと化していた。風がなく、水面はいって穏やか。仕掛けとエサの状態をチェックするため、一度仕掛けを回収し、新しいダンゴを投入する。特にエサを取られるなどの変化はない。

今回はアタリ待ちのスペースとして、カープハーフテントを持ち込んでみた。仕舞寸法が大きい事と、一人での設営が面倒なことが難であるが、何もない吹きさらしで椅子に座っているよりも、横に壁があるというのもなかなか落ち着ける。真中に椅子を置き、傍らにタックルボックスなどを置いてそれをテーブルとする。その上にライトを設置してテント内をぼんやりと明るくしたら、快適な待ち場の完成。風通しが悪い事で夏の昼間の釣りには不向きであろうが、雨の中でのアタリ待ちや準備には最適だろう。今夜はここで時間を忘れるとする。

今回はハーフテントで 札幌の街明かりに竿が浮かぶ

 札幌の街明かりで、川の向こうの空が薄橙色に輝いている。そこに浮かび上がる竿のシルエットを眺めて、何時間を過ごしただろうか。投入点を変える気もなく、魚を寄せることも考えていないため、打ち返しも少ない。持ち込んだギターで静かにアルペジオを刻むこと1時間、眼を瞑りカエルの声に聴きほれること1時間。ライトを消し、和風ホラー系BGMをイヤホンに大音量で流し、周囲の音が聞こえない不安感を楽しんだりもした。

 このようにして気ままに楽しめる釣種なんて、いったいいくつあるだろう。海釣りのように、情報に動かされた集団の中に混じり、人と人の間に入るような、入れ替わり立ち代り知らない誰かと並んで釣るなんてのは正直好きじゃない。そんな部分においても、鯉釣りという釣趣は私の性分にも見事にマッチしている。

 夜の更けた頃、1番竿の穂先がゆっくりと張りを強めていった。魚ではない何かが、ラインに引っかかったようだ。センサーのスイッチが入ってしまう前に竿を持ち、回収してみるとそれは半分枯れた笹の束だった。七夕の夜に笹を釣ってしまうとは、面白い事もあるものだ。
 
その1番竿と共に、2番竿も打ち返す。もうそろそろ潮が止まる頃だ。また潮が動き出すタイミングでエサを好ましい状態にしておくには、今エサ換えをするのが良いだろう。いつもより大きく握ったダンゴを、水面から顔を出す流木を目印に、同じポイントへと送り出す。

  笹が釣れた・・・七夕だけにね・・・  

 こちらの岸近くで、破裂するかのような大きな跳ねの音が落ちた。驚いて水面を覗いてみると、1番竿投入ポイントより手前に大きな波紋が出ている。今のは小さくない。かなりの重量のある魚が水面を叩いたはずだ。初めての場所で魚の存在をより具体的に知ることが出来たのは心強い。確信を持つことができたことだし、久しぶりに見た時計の数字も、もうすぐ空が白むものを示している。そろそろ寝るとしようか…。


 起床したのは午前6時。前打ち返しからは4時間が経過している。ここで両竿ともこれまでより小さめのダンゴで打ち返すが、その後はやることがなく、また眠りについてしまう。

 外から車の音が聞こえ、遮光シートを捲ってみると、SASAYANがこの釣り場を見に犬を連れてやってきていた。
小さいダックスフンドは釣り場をちょこまかと走りまわり、愛想を振りまく。ここの鯉ももう少し愛想が良くならないものだろうか。依然竿は何の反応も示さない。

  超カワイイ!SASAYANのシャコタン  

今回は攻めよりも受け身の体勢での釣りをしたいため、最初に決めた方針を崩さずに通す。SASAYANからボイリーにしてみては?との提案もあったがこれも却下し、何かしらの反応が出るまで余計なことはしない。ウグイやカニの問題もないようなので、この昼間からは打ち返しも減らし、頑固な待ちの釣りとする。これは非効率的なやり方であろうが、そもそものところ、長いスパンでこの石狩川での釣りを続けていくという考えであるため、最後の最後まで方向性を変えずにやり通す。これで納竿直前にアタリが出るなんてパターンに嵌れば、ここまでのやり方が必ずしも不正解であるとは言い切れなくなる。何の結果も出ないままであるなら、次回までにまた別のやり方を考えれば良い。できるだけ、あらゆる可能性を一つずつ試していきたい。そんなのんびりとした釣りプランを考えている。
 今回はこの後者であるようだ。一つの反応も見ないまま終了時間を迎えた。しかし場所自体に疑問は感じない。魚がいること、ここを通ることは間違いないだろう。今度ここに来るとき、どんな風に釣ってやろうか。岸際を果敢に攻めるべきか、それとも遠投するべきか、エサを変えてみるか。大きな課題がまた一つ追加された。