鯉釣り日記2012 終始
 釣行日  6月1日 19:00〜
6月2日 19:00
 場 所 雁里沼
 時 間  天 気 晴れ(北の風)


 今年初めて、私が好きな内陸の田舎へと出向いている。そして季節は初夏。田園、山、ハルゼミの声。私が最も愛するシチュエーションであり、それは奮い立たせるのではなく、静かに闘志を燃やす青い炎。ここからが本番、私の季節だ。

 岩見沢に近づくにつれ、道路が乾いてゆく。突然降り出した雨に、天気予報の外れを覚悟したが、今は雲の間から夕陽が見えている。目的の雁里へ向かう道中は、余裕を持ってマイペースに。咲き乱れる菜の花畑に魅せられ、ご神木の前で足を止め、祠に賽銭を。こんなことをするのも、私の釣りの楽しみ方。時間に追われるような釣りは、出来ればしたくない。

 窓の外が一面黄色に 思わず車を止めた 菜の花畑
 篠津湖にも立ち寄る 祠の木

 18時。この時間になっても半袖でいられることを嬉しく感じる。
 沼を一周した後、今回高橋さん、ジュンちゃんの3人で入ることになっている上流側ドンヅキにて車を止める。苫小牧から来られるお二人は、恐らく深夜近くになってからの到着になるだろう。とりあえず、私は右側の岸際にタックルを降ろすが、攻め方はわかっているので焦ることはない。セットを始める前に、日没するまでの1時間、ヘラブナ釣りをやってみることにした。

 12尺のへら竿を出し、10年近く振りに中学生当時使っていたへら台を出す。やはり少し小さい…が、懐かしくもある。両グルテンを振込み、エサの重みで沈むヘラ浮きに目のピントを合わせた。

 思ったよりも時間がかかってしまったが、なんとかフナのアタリを取る。そしてそれからすぐに尺上も出た。やはりこの釣りにも魅力がある。今度時間がある時に、どこか近場でへら釣をやってみようかと思う。

 久しぶりにへら台に乗る そして久々に手にする尺上べら

 そして20時過ぎ、鯉釣りのセットを完了させた。
 今回は竿の前にテントを立てて、そこで過ごすことにする。出入口から望む竿と水面。このシチュエーションも最高に私を熱くする。

 去年の釣行の結果に倣って、竿二本ともボイリーを選択した。1番竿は泥が深いことを考慮してのポップアップ。ガルプカープのアイリッシュクリームポップアップで、PVAにはそれのボトムタイプを入れる。2番竿はポップアップにはせず、普通のフレッシュフルーツワンを選択。ボイリーローテーションのセオリー的には、夏場は動物系が良いとされているが、今の所、私はそれを気にせずに、自分の勘を頼りに選択している。

オモリ部分 (自作天秤型固定管付き)
オモリ:スパイク20号

仕掛け (ヘアリグ)
ハリス:鯉ハリス(プロブラック)4号
針:チヌ8号

エサ(ボイリー)
ガルプカープ(アイリッシュクリームポップアップ、フレッシュフルーツワン)

寄せ(PVAバッグ)
ペレット7mm、アイリッシュクリーム、フレッシュフルーツワン

 もう雨の心配はしなくていいようだ。晴れ渡る空には大きな月。青い光が釣り場を照らし、竿のシルエットを浮かばせている。 
 しかし、いくら月光が明るいからといっても、ここには怖いものが一つある。それは釣り座から水面にかけての高低差と足場の悪さだ。ゴロ石を敷き詰められた斜面は崩れやすく、また足を取られることがある。こんなところで転んだら…考えただけでも痛みを感じてくる。上手く受け身をとることができなければ、それこそ痛いではすまないだろう。夜間は強めのヘッドライトを要し、アタリ待ちは履きやすい靴で過ごすこと。ファイト時も、魚よりもまず足元を重視し、邪魔になるタモは予め斜面の下に置いておく。

 また、このザラザラとした石はラインを痛める危険性がある。そのため近投は避け、2本とも専ら遠投とする。ラインは張り、ここの鯉は沖に向かって走ることが多いので、竿先からまっすぐラインを出すイメージだ。また、フケアタリで弛んだラインがゴロ石に落ちることも考えて、食い上げを感知できるようにバイトアラームにスインガーをセットしておいた。

 足場が悪いのが難点 ピトンも挿しにくいのでスティックで 念のためスインガーもセット

 ヘッドライトによって広がる視界には無数の光の粒。ここから霧夜に突入してゆく。

 一度目のエサ換えでボイリーの状態を確認した後、テントのベッドメイクに入り、食料など必要なものも運びこむ。次のエサ換えは高橋さん達が到着して、竿をセットされる際に同時に投入する予定。

 水温は16度で、気温と同じくらいのバランスを保っている。今年の釣りの中で初めてに等しいほど風がなく、私の好きなカエルの声が、遠いながらも聞こえてきた。刺す虫もおらず、騒々しい車の音も聞こえず、こんな釣りをしたかったと感慨にふけり、椅子に深く腰を下ろした。

 0時。高橋さんとジュンちゃんが到着された。早速のタックルセットは、ジュンちゃんが私の左隣、高橋さんがその奥で、高橋さんは鯉用の3本のタックルの他、ソウギョ狙いの草針を離れたところに忍ばせている。私も予定通りのエサ換えを行い、ここから朝まで持たせるため、PVAにはバッグが破ける寸前の量のペレットとボイリーを入れておく。

   高橋さん、ジュンちゃんが到着 キャンプを設営する  

 高橋さんを苫小牧のホテルまで迎えに行ったジュンちゃんは、その直前まで支笏湖でイワナやチップを狙った釣りをしていたらしく、その疲れがあって、今夜はタックルセットのあとすぐに車に入った。私と高橋さんもテント前で軽い立ち話をした後、テントに入り、仮眠を取って朝を待つことにする。

 午前5時、止まらないバイトアラームの音に目を覚ます。ファスナーを開けると晴天の雁里沼が広がっていた。そしてその光景の中に、ラインを引き出される竿の姿。

 毎度のとおり、鯉は沖に向かって勢いよく走り、竿を立てれば寄って来るものの、水面に出されまいと潜る一撃が鋭い。朝からゴロ石にハマらないように、そしてラインを弛ませないように斜面を下りながら、魚を眼前に引き出した。

 ヒットしたのはフレッシュフルーツワンの2番竿。鯉はこの沼でよく見られる、色白ですんなりとした体系のもので、サイズは70センチだった。

  午前5時にヒット 綺麗な鯉だ  

 心地よい朝だが、残る眠気には勝てず、そのまま8時まで就寝。起床してからは水際に出しっぱなしにしてあるへら台に乗り、昨日のヘラ釣りの続きをしてみるが、状況は打って変わってウグイやタモロコが大量に寄ってきてしまい、とてもへらを狙えるものではなかった。挙句の果てにヘラ浮きを落として流してしまい、ジュンちゃんの持つ6メートル柄のタモで救助してもらう羽目に…。これはまた、台をそのまま置いておき、夕方頃また挑戦してみることにする。


 さて今回の朝食だが、これまでにないほどの豪勢なものがジュンちゃんのキャンプで用意されていた。
 テーブルの上には3匹のイワナ。これはジュンちゃんが昨日釣ってきたもので、それがこれからジュンちゃん(chefジュンちゃん)の手によって調理されてゆく。

  朝食はジュンちゃんが釣ってきたイワナ!  

 華麗な包丁捌きで解体された3匹は、それぞれ別の料理にされてゆく。
 まず最初に戴いたのは、お刺身。3匹の中で最も大きなサイズのイワナをスライスし、それをわさび醤油でいただく。サーモン系の刺身が好きな私には、最高の触感と甘味で、うっすら赤色の入った肉が口の中で広がってゆくような感覚。思えば川魚の刺身を食べるのは初めてのこと。良い体験をさせてもらった。
 その間、コンロの上では残りの2匹がチリチリと焼けている。一つは塩焼き、もう一つはチーズを乗せたホイル焼き。チーズは高橋さんが持っていたものを魚と一緒にホイルに包んでみたのだが、これがまた絶品で、焦げたチーズのうま味と塩味が見事にイワナとマッチしている。そして捌いたあとに残ったアラも捨てずに調理に使う。お湯の沸いた鍋にアラを入れ、これはそのままじっくりと煮込んで出汁を取り、それからはあとのお楽しみ。

 まずはお刺身! そして塩焼き、ホイル焼き

 イワナ三昧の朝食に舌鼓を打っているところでバイトアラームが私を呼ぶ。少々贅沢すぎやしないだろうか。本日2匹目となる魚は少しサイズアップの72。これも2番竿での釣果だった。それをリリースして間もなく、1番竿が鳴き始めた。持っていたニードルを放り(なくした)、出されたラインの回収に取り掛かる。この魚は真っ直ぐ沖に走らず、右の岸に突っ込んでゆく。ブッシュに入られた形になるが、このくらいなら問題ない。少しラインにテンションをかけてやると、絡んでいた枝が折れ、魚は素直に誘導されはじめた。こちらは60センチ。まともに写真を撮らせてくれないうちに逃げて行ってしまった。

 
 豪勢な朝食の最中にヒット 2匹目72 そしてすぐに3匹目

 そうしている間にイワナのアラ汁ができあがっていた。味噌を溶き、味噌汁として作ったのだが、その中に入れたキュウリとトマトが良い味を出し、とても味噌汁とは思えない姿、そして絶妙な旨さを持ったスープになった。

  イワナのアラの味噌スープ  

 自分のカップに取り分け、その美味さに驚いていると、本日4度目のアタリ。フレッシュフルーツワンにアタリが集中しているため、これまでポップアップだった1番竿も同じフルーツに変えることにした。上がったのはまた小型で40センチに届いていない。

  4匹目はチビちゃん  

 そしてその1時間後、フルーツに変えた1番竿にアタリ。ファイトに取り掛かっていると高橋さんのセンサーも鳴り始め「こっちも来たよ」と声が上がる。私とダブルヒットした高橋さんの鯉は、手前岸際を右に走り、私の方へと向かってきていた。そうとは知らず、自分の鯉をランディングしようとタモを延ばしたところに、高橋さんの鯉が突っ込み、一瞬どっちが自分の鯉かわからなくなってしまった。「えぇ?鯉2匹いるんだけど?」と混乱してしまい、少々驚かされたが、無事2匹ともランディングされ、5月のニャーゴロくんに続いて、今度は私と高橋さんの2ショット写真をパチリ。2匹は高橋さんのが72、私のが68で、雁里らしい姿をした鯉だった。

高橋さんとのダブルヒット! そしてツーショット!

 初夏の日差しは気温以上に暑く感じられ、直射日光が痛いほど肌を焼く。
 料理を楽しんだテーブルのある、談笑用ワカサギテントの前にパラソルを立て、日陰に入りながらのアタリ待ち。ワカサギテントはともかく、自分のテントの中はもう入れたものではないだろう。出入口を完全解放しつつ、中にあった食料などを風の当たる外に避難させておいた。

 またこの時期にもなると当然虫も出てくる。いつのまにか多数の小さいイモムシがテントの生地にへばりつき、どこへ行きたいのやら一生懸命歩いていた。そんな中、ジュンちゃんが見つけたミノムシ。珍しいことに、そのミノムシは中のイモムシがまだ在住しており、先端から頭と前足だけを出し、ちょこちょこと移動する。こんな様子を見るのは一同初めての事で、驚きつつも観察を続けていたのだが、警戒心があるのか、人が見ているとあまり動いてくれない。忘れた頃に頭を出して、殻をふりふりしながらヤドカリのように移動し、またすぐに止まってしまう。まるで、竿の前にいるとアタらず、離れて談笑している時にアタる鯉のようだ。

 初めて見た歩くミノムシ 大分人馴れした?歩くミノムシ釣り猫 かろちゃん

 14時30分。ミノムシから目を離し、釣り場へと急行する。アタリは2番竿、そして今度の鯉は岸際のブッシュ目がけて一直線に突っ込んでいった。数本の枝がラインに絡んでいる。ラインを上下に振る動きで簡単に細かい枝を折ることができたが、更に大きな枝にも絡み、恐らくそこから生えている小枝や葉に引っかかっているのだろう、振り払う動作だけでは外せない。最も枝を外しやすい位置を考え、そこからジワリとテンションをかけてゆく。ラインが擦れる感触があるが、それと共に、引っかかっている小枝がしなる感触もある。そこで少しラインを緩め、大きく上に振り上げると、フッと軽くなる。これでよし、あとは寄せるだけ…と思いきや、今度は魚が底に張り付いて動かなくなってしまった。その場所にゴロ石があることは確認しておらず、それがあったとしても、捨てオモリにしているのである程度のテンションで落ちるはず。また引っ張ってもラインが擦れている感触もないので、どういうことなのか、どうするべきかとラインを張ったまま悩んでいると、ポンっと何かが弾けた。外れたのは掛りではなく、魚に付いていた針だ。6匹目ならず。どうするべきだったのか、魚が張りつけるような駆け上がりもないはずなのだが・・・。
 そこからアタリは止まり、16時に高橋さんとコンビニへ行き、悠長に店の前でガリガリ君を齧ってみたりしたのだが、釣り場に戻ってもどの竿にも変化はなかったようだ。

 これを機にまた出しっぱなしのヘラ台に戻るが、こちらも朝と状態は変わらず、ウグイやタモロコ、モツゴの猛攻にウキが安定しない。これはもう駄目だろう。終了時間も迫ってきたことなので、そろそろ片付けてしまおうと思っていたその時、1番竿のアラームが断続的に鳴り始めた。

 小鯉か、それとも別の魚の悪戯か?いや、スインガーが降りている。ラインが弛み、ゴロ石へと落ちてゆくところだった。食い上げているようだ。ラインがゴロ石に挟まる前に竿を取り、指でテンションをかけながら高速でハンドルを回す。手ごたえは軽く、50センチ強といったところ。6度目のアタリの魚を逃した穴を埋めてくれる1尾となった。

  片付け直前の6匹目  

 時刻は18時。暗くなる前には帰路につきたいので、ここで今回の釣りを終了とする。
 今日は土曜日で、本当は明日まで連泊したかったのだが、明日は車を車検に出さなくてはいけない。帰ってからこの荷物を降し、降ろした荷物の置き場も確保しなければならない。あぁ、なんて億劫な・・・。

 薄暗くなる釣り場は、私にとって終日の光景。しかし明日まで釣りを続行するお二人には、2回戦開始のマヅメ時になる。突如鳴り出したコムテックの受信音はジュンちゃんのもの。60台の鯉が、三角形のタモに収まった。これが今夜の皮切りになるのだろう。

夕暮れのヒットコール ジュンちゃんにヒット 60台。ここからお二人の第二戦スタート!

 この鯉がリリースされるのを見送ってから、最後の荷物を車に積み込んだ。
 自分も明日まで…北村温泉に浸かってからここに戻って…もう一泊したいなぁ…なんていう贅沢な心残りがあるものの、内容的にも、釣果でも、十分に色濃い釣行として終了することができた。

 晩春から初夏へ。この釣りを境に、季節感に区切りをつけよう。そして夏、やりたいことが山ほどある。さて、どこから片付けてやろうか。片付けきれるだろうか、むしろ散らかしてしまいそうでもある。この釣り場を去ると同時に、2012年春季を終了した。

 高橋さんはこの次週の釣行を最後に、北海道を離れて次の地へ。
 釣行後の連絡によれば、この後2二人は2匹ずつ追加して終了されたようだ。そして次週、残念ながら私は参加できそうにない。次回釣行は、高橋さんが本州へ帰ったあと、単独での釣りをたくらんでいる。