鯉釣り日記2012 大きな小川
 釣行日  5月27日 13:00〜19:00  場 所 琴似川
 時 間  天 気 曇り(北西の風)


  この水面を覗く度に、目が錯覚を起こしてしまう。グラス越しに見える魚影、それを60台と目測しても、タモに入れてみれば、サイズを見誤ったことに気付く。この不思議な現象をどう捉えるか。私は只々、可能性の広がりを感じるだけだ。

 この頃、釣り場に着いてすぐに竿を出すということがなくなってきている。実際に出来ているかは別として、始める前の情報収集が、疎かにできるようなものではないということに気づき始めているからだろうか。結果どうあれ、「釣れた」ではなく「釣った」獲物が欲しい。そのために、とにかくフィールドを見つめ、入念にイマジネートをしておき、単独の釣行ならば底探りも行う。この狭く浅い川ながら、今回もそうして、ようやく開始したのは昼を大きく過ぎた頃。金色の鯉が足元を通り過ぎてゆく。


 このような小さく透明度の高い川でダンゴを使うのは不効率的だ。また創成川スタイルのコーンも、大型のウグイがいるために使用できない。となれば、やはり程よいアピール力と持ちの良さを兼ね備えたボイリーで行くのがいいだろう。今回もガルプカープにお世話になることにする。

 1番竿は「ハリバット&クラブ」、2番竿は「アイリッシュクリーム」を使い、チヌ7号のヘアリグにセットした。あとはいつもどおりにPVAにペレットを詰めたものと一緒に投入するのだが、この場所は根掛りが多い。投入点は川の中心よりも手前に限られる。1番竿は根掛かりポイントのギリギリ手前に、2番竿は鯉が溜まることの多い足元に落とした。また、入ってくる鯉を止めるため、柄杓でペレットも撒き、あとはラインに落としオモリを施せばセット完了。
 
 今のところイタドリや葉の茂った木など、ファイトの邪魔になるようなものはないので、川の幅に合わせた11fのサーモンロッドを使用している。また、ここは川の真中に立つ橋脚のすぐ横であり、油断すればアタリの直後にそれに巻かれる危険性があるため、最低限に荷物を抑えた担ぎ込みであるが、バイトアラームも忘れずに持ってきている。



 早いアタリを期待していたものの、最初に見た金鯉を含め、その周囲に溜まっていた鯉達も姿を消してしまった。やはり鯉が溜まる場所というのはブッコミ釣りには向かない。その中の1匹でも警戒すれば、それが伝染して周囲の鯉も口を使わなくなる。また一度散らせてしまえば、戻ってくるのに時間がかかり、大きな警戒心を持たせてしまった場合には戻ってこない場合もある。これ以上できることもなく、あとは静かに新しい鯉を待っているしかないだろう。

 そして待つこと2時間。いよいよ魚が入りはじめ、下流から入ってくる魚影が、橋脚の際に沿ってポイントへ向かってくる。このルートでいってくれれば、1番竿のポイントに入る。偏光グラスを使っても、そのポイントの水中は暗くて見えないが、その暗がりに魚影が消えていった。

 そして鳴り出すバイトアラームの電子音が橋の下で反響する。掛りに入られないよう、魚を浮かせ気味にファイトに入るが、魚は抗って上流へと走る。そう、上流に走ってくれればこっちのもの。この下流には巻かれることを恐れている橋脚があり、またその下では急激に流れが強くなっているのだ。

 強めに絞めているはずのドラグがスムーズに回っている。持続はしないものの、良い走りをして楽しませてくれた。型にしてはなかなかやるではないか。目測、60センチ強というところか?いや、また見誤っている。タモに入れる頃になって初めて、それを20センチほど上回っていることを知った。

 83センチ、今季の最大魚となる。なるほど引くわけだ。魚と釣り人、お互い自由の利かない小さなフィールドでこのサイズと戦うのは本当に面白い。それが私の、中途半端に大きな川ではなく、このようなフィールドを好む所以の一つだ。

 1匹目。今期最大の83 楽しませてくれた

 到着当初は、足元の浅場でエサを食む鯉が見られたのだが、仕掛けを投入してからその数は減り、このラインに入ってくる鯉もいなくなってしまった。そこで、足元に置いていた2番竿も、1番竿と同じように川の中心より少し手前の位置に打ち直す。とは言っても、全く同じラインに仕掛けを並べたりはしない。若干のズレを作り、1番竿は若干手前寄り、2番竿は若干奥寄りにセットしておいた。

 今のファイトで魚を散らせてしまい、また学校帰りの高校生が竿を持って多人数で遊びに来たため、ここから先のアタリは遠くなると踏んでおく。
 その間、釣り場に訪れた伊藤君が私の隣上流側に入り、1本の竿をセット。その他にルアーロッドでワームを操り、鯉が出そうなブッシュの際を探ってゆく。私は経験がないが、春の鯉はワームにもよく反応し、釣れるのだという。しかしどちらも一向にアタリはなく、新しい鯉も入ってこない。そもそも今日はかなり水位が低く、魚が入って来にくい状態でもある。


   春の鯉はワームで狙うのが伊藤流  

 しばらくチャンスがないと踏んで、高校生達のウグイ釣りを眺めていたところに、突然のアラーム。今度も1番竿へのヒットだ。
 この魚は一度上流側へ向いたものの、対岸近くでターンし、今度は下流へ走り始めた。対岸近く…それは橋脚に巻かれてしまうパターンとなる。極力ラインの擦れが軽減される位置に移動しよう。そう思った時、スッという感覚と共にラインが力を落とす。スッポ抜け、或いは口切れか。せっかくのヒットを無駄にしてしまった。

時刻は17時。アタリの遠さに、伊藤君は「もう帰ろうかなぁ」とぼやいている。私は2匹目をバラしてしまった手前、その悔しさから止めることができない。エサ換えを行い、それを最後に決めて、そのまま暗くなるまで粘ることにする。

 そして18時30分。水面に見える鯉の数が増えてきたことにチャンスを感じ、待ち構えているところに待望のアタリ。2度目のスッポ抜けなど許されたものではないので、しっかりと追いアワセをくれてやる。よく走りはするものの、根や橋脚に入られるような危険は感じず、今度は伊藤君が手にするタモへと誘導した。

 2匹目もなかなかの体格の鯉である。78と目測したが、メジャーを当ててみると、これも80に届いているようだ。これで惜しみなく帰ることができる。80台を1日に2本も当てるなど初めてのことで、言いしれぬ充実感を得て魚をリリースすることができた。


 2匹目80 いい走りっぷりだった

 午後7時、暗くなりつつある釣り場は、もうほとんどやることがなくなった創成川での夜釣りを思い出す。恐らく、夏の夕涼みでここに訪れることが多くなることだろう。これからもよろしくと心の中で唱え、釣り場を後にした。