鯉釣り日記2011 2011年竿初め
釣行日時 |
4月14日17:00~18:30 |
釣行場所・ポイント名 |
創成川 |
日々見上げ続けた寒夜の天井が、少しずつ模様を変えてゆく。過去の釣行を思い起こしながら眺めたオリオン座は、いま西の空に低く、目立たず、春の軌道に入っていることを示している。
11月からの長い冬籠りを終え、動物的な本能に従って今年度の釣りの準備を始めた。オフシーズンというのは決して無駄なものではない。実践ではなく、イマジネーションを使って釣りをできる時間であり、そこから生まれるのは、単に新しい作戦や技術的な練磨だけでなく、大きなモチベーションを呼び起こしてくれる。それはもちろん釣るための材料になるが、楽しむための重要な材料にもなり、心から釣りがしたいと思い続けることによって、次のシーズンを充実した気持ちで迎えられるのだ。
今年で私が鯉釣りを始めてから10年が経過する。あの日、あの川で、私はこの釣りに特別な思い入れを持つことになり、それから今まで一度も方針を変えずにここまで来ている。
「なぜ鯉なの?」と、この10年で何度聞かれたことだろうか。魚種が豊富な北海道の地で、鯉釣りというマイナーなジャンルの釣りにここまで精通する人などそうそういない。鯉釣りは、ワカサギ釣りのように誰でも簡単にたくさん釣れるわけではないし、トラウトのフライやルアーにあるようなスポーティーでスタイリッシュな面もない。釣って食べる魚でもないし、私が特別鯉が好きだったかというとそうでもない。もっと面白い釣りも楽しい釣りも、いくらでもあるじゃないかとよく言われる。もちろん私もそれはわかっている。釣りも魚はなんだって好きだ。面白くない釣りなどないと思う。しかし私の鯉釣りは「面白い」、「面白くない」などというもの以前の感情から動いているのだ。一言にするならそれが「思い入れ」で、面白さや魅力を感じるようになったのは、鯉釣りを始めてからのこと。鯉釣りの面白さは、特別な思い入れを持って、この世界に深入りしてみないとわからないところにあるのだと思う。故に誰にでも理解できることではないということだ。マイナーなのもわかる。アユやヘラ、石鯛などにしたって、たった一種類の魚を本気で追ってみれば、何十年という時間を費やされてしまう。その奥深さが、存在する魚それぞれにあるのなら、それを考えると途方もない。「釣りはフナに始まり、フナに終わる」どこにでもいる簡単に釣れてしまう魚でも、突き詰めれば深いもの。もっとも奥深さの定義は人それぞれだが、少なくとも私の主観では、釣りにゲームオーバーも全面クリアも存在しない。それを実感した10年間だった。
4月18日。なんでもない普通の平日の夕方に、ルアーロッドを持って創成川の土手を降りた。
出遅れてしまった今シーズンの初釣り。もちろん休日を使ってじっくりと釣りをしたいところだったのだが、意地の悪い空模様がそれをさせてくれなかった。今からやれば日が暮れるまで約2時間。決して十分とは言えないこの短時間で、どこまで楽しめるだろうか。バスロッドのグリップに引っ掛けていた仕掛けを外す。
麻生下水道科学館前。10年前、初めて竿を出した場所であり、初めて鯉を釣り上げた場所、そして悔し涙を味わった場所でもある。私の鯉釣りのすべてがここから始まっている。この欄干をまたいだのは何年ぶりになるだろうか。科学館前の吐き出し口、そこから広がる歪なブロックエリア。対岸近くにある掘り下がり。ほとんどあの時から変わっていない。もう少し思い出に浸っていたいのだが、もたもたしていたら日が暮れてしまう。これだから時間の限られた短時間釣行は性に合わない。
まず一投目。吐出し口の中に仕掛けを入れた。タックルは海のロックフィッシングで使用しているもので、ミディアムクラスのバスロッドにベイトリール。ラインはPE1号でフロロカーボン20lbをショックリーダーにしている。仕掛けはいろいろと用意しているが、まずは遊動無しの中通し14グラムのオモリとフカセ針15号をセット。エサにはあの時と同じ銘柄のミミズとサシを持ってきている。
ミミズを房掛けにした仕掛けを吐出しの中に打ち込むが、ここは着水音が反響して鯉を驚かせてしまうことが多い。一投で広い範囲を探れるようにロングキャストして、アピールさせたいときはブラクリのようにコツコツと小突く。
鯉の姿はあるものの、今はそれほど多くない。この一投でしばらく待ってみたが、興味を示してくれる鯉がいないことで回収した。今鯉がいるのは・・・少々やりにくい位置にちらほら。ブロックの中に2匹ほどいるのがわかるが、その近くに打つのはどうだろう。やれないことはないが、少々めんどうだ。ちょっと仕掛けを動かしただけで根掛かりするブロック。その歪な形だけでなく、砂袋やらわけのわからないものがたくさん落ちていて、ここで何度仕掛けを無くしたことやら。ここはノントラブルでいきたいので、今回はパスすることにした。風もあって水面下がよく見えない。ブロックのない、もう少し下のエリアに行こう。