釣り日記2011 新候補地 

 釣行日 8月27日18時〜
8月28日11時  
 場 所 雁里沼 
 時 間  天 気 晴れ 無風 


 残暑厳しく蝉時雨。この釣行に持っていた私のイメージとは裏腹に、目の前にした水辺は夏そのものだった。温度計の指す気温は30度を超え、日光の当り方で35度まで上がる。今回の釣りは止水域。他河川への流入のない、石狩川最大級の三日月湖だ。
 
 へら釣りをやっていた頃から、雁里沼という名称はよく耳にした。そして鯉釣りを始めてからもそうだ。それほど札幌近郊の有名なスポットであるにも関わらず、ここで釣りをしようというのは初めての試みであった。

 自分にとって新しい場所で、荷物を削るのは憚られる。全てのタックルを車に積み込み、その場所へ足を向ける。いきなり釣ろうとは思っておらず、とにかくフィールドに慣れ、少しでも釣るための情報を集めたい。下調べといったところだ。

 14時過ぎ、275線を外れ新篠津村へ入った。位置的には、ソウギョやナマズ釣りで頻繁に入っている篠津湖とは、石狩川を挟んで対岸にある。札幌を出発して1時間と少し、沼の近くまで来たものの、わざと道を外して寄り道をした。涼しそうな場所を見つけては車を止め、冷房のガスが切れかけた車から避難をする。

 雁里へ行くこと自体は初めてではなく、篠津湖での釣りの後などに様子を見に寄ったことがある。今回目を付けているのは、鯉釣りをするのに最も無難に竿を出せる場所だ。しかしそこに日陰はなく、この暑い中で竿出しをすると考えただけで汗が落ちる。底探りなどの具体的な情報収集の時間をとるべく、明るいうちから始めようと思ったのだが、少し出るのが早すぎたみたいだ。

  涼しい場所に立ち寄る。北村へらぶな公園の沼  

 雁里沼からほど近いところにある北村へらぶな公園沼のリリーパッドを眺め、木陰で休憩。ここはすぐ裏手にコンビニがあるので、ちょい釣りをするには良いところかもしれない。そのコンビニで買出しも済ませ、いつも以上にゆったりとしたスタートを切っている。時刻はそろそろ16時。暑さの余韻も程々に消えた頃、今回の釣り場へと踏み出した。

 ここは三日月湖である雁里沼の先端に当たるポイント。畑や林、高く急な土手に囲まれた雁里沼の中で、ここはゴロ石が敷かれて、直線的に岸辺が延びている。まず手始めに、最も入りやすいであろうこの場所でやろうと決めていた。

 早速底探りをするが、事前情報として聞いていたとおり、浅く、フラットであること意外の変化を捉えられない。障害物らしいものを見つけることができず、今回投げた距離で水深は2メートルほど。底質はやわらかく、落ちたオモリがズッポリとはまってしまう感じだ。

 それにしても、不思議なくらいに水草が生えていないのが気になる。これではポイントを絞れないし、この暑い中、水温の上がった止水域。鯉はどんなところを避暑地としているのか。それでも噂では、夏に強い場所だと聞いている。やり様ということだろうか。そうだ、とりあえず始めるしかない。

沼の先端となるこの場所を釣り場に決めた  とりあえず準備を始める

 手前のゴロ石は広く敷き詰められており、竿を立てられる位置から水面まで少し離れてしまう。回収時は竿を持って水辺に近づきながら仕掛けを浮かせないと引っかかってしまう恐れがあるだろう。また足場が崩れたり、石に躓くことがあるので、夜間の取り込みは注意を要する。

 ゴロ石に走られたときを考えて、投入は手前を避け、岸から15〜25メートルの地点に打ってみる。現段階でもどこにどう打ち込めば良いかわからないので、まずはダンゴで様子を見よう。このような沼には小魚が多いはずだ。どれほどの数と大きさの小魚がエサ取りになるか早いうちに確かめたい。

 最初の打ち返しは早めに行うことにする。仕掛けはいつもの袋仕掛け(ハリス:巨鯉ハリス4号(10センチ)、針:ランカーサーモン14号)と、「巨鯉」+「白虎」のダンゴに乾燥コーン+グリーンレーズンの食わせ。捨て竿も出したいが、それは夜、エビでも取れたらそれをエサにしてみよう。セット完了はちょうど村に18時の放送がかかるのと同時だった。夕方のまだ青さが残る空に茜が舞う。静かで初秋を感じられる光景…よいスタートだ。


 まず最初の打ち返しは1時間後に1番竿のみ。その際、投入点を若干ずらしてポイントを探る。2番竿は回収せずに2時間後に回収し、その同時に1番竿もまた回収。そして最初に打ち込んだポイントに投入点を戻すか、また別の位置に投入する。このように1時間に一度は打ち返しをすることになるので、かなり面倒ではあるが、2本の竿で探りと待ちを同時に行う。最初の4時間はこの調子で行き、そのあとは両竿ともいつもどおり3時間置きのエサ換えとする。あとは捨て竿であるが、夜中になってもエビが捕れなかったら、ボイリーやバズベイトを使おう。ここではヨーロッパスタイルの釣りでも釣果が聞かれているので問題はないはずだ。

 セットを完了させ、車の荷物を釣り場まで運んでいるうちにすっかり暗くなってしまった。今回はテントを張って夜を明かす。シュラフなどの寝具を広げ、テント内部のメイキングを完了させるが、今夜は寝る時意外はテントに入ることはないだろう。

 無風で雲のない夜空。これほどまでクッキリと星の見える夜釣りは今年になって初めてではないだろうか。ただ天体を見上げているだけで、何も考えずとも時間の経過を忘れられる。上を向いた視線を戻されることなく、最初の打ち返しの時間がやってきた。回収した一番竿の仕掛けに異常はなく、食わせもほぼ無傷。今のところ、しつこいジャミは出てきていないようだ。

 両方の竿を同時に打ち返す20時。このとき作った団子のあまりをエビ籠に入れて仕掛け、それを回収するまでの間に懐中電灯と網を持って、直接岸寄りしているエビも探す。しかし電灯の光に映し出されるのはまだ小さいエビばかりで、これらをエサに使うのには少々抵抗がある。時折大型のエビが姿を見せるが、ゴロ石の間に入り込まれて網をかわされる。これでは非効率的だ。一度網を収め、あとは仕掛けた籠に任せることにしよう。

   打ち返しと同時にエビ籠を仕掛ける  

 メールで連絡していた佐々木さんが釣り場を訪れた。ここは佐々木さんもよく釣りをする場所であり、雁里沼のことを詳しく知っておられる。わからないことを聞くにはとても心強い。

 佐々木さんはしばらく釣り場を眺めた後、別のポイントへ移動した。その間際に耳にした情報は、フラットで広いこのエリアの中でも、釣れる位置と釣れない位置が存在するということ。私が竿を出しているのは、どちらかというと釣れない位置らしく、今日始めて竿を出して軽く底探りをしただけの私には知る由もないことだ。石狩川公園での釣りを思い出す。普通に考えて良さそうだと思える場所でも、地元の釣り人からは嫌われる。「ここは釣れないんだ」 「なぜ?」 「さぁね、釣れないものは釣れない」 そして何もない同じような別のポイントでは不思議と釣れるという。それを確かめるべく、2009年度の釣行では石狩川公園を入念に探ったが、地元の人の言うとおりに釣果に違いが出ることはわかっても、その理由はわからなかった。このように、実際に何度も長釣行しないとわからないことがいくつもある。理屈を超えた、理屈では攻略できない部分が鯉釣りにはあり、やっぱりそこが面白いのだ。釣れるとわかっている鯉を釣るだけでは面白くない。
 
 仕掛けたエビ籠には大量の型エビが入っていた。これならエサとして使うのに十分だ。早速捨て竿を出して、ヒラマサ針の2本針仕掛けに背掛けする。投入位置はやはり手前を避けたいが、これだけのエビがいたのも手前である。ゴロ石の終点から少し離れた位置に仕掛けをキャストして、バイトアラームの電源を入れた。

 佐々木さんも別のポイントでセットを完了したようで、その後すぐにこちらに戻ってきて談笑を続ける。昼間あれだけ暑かったにもかかわらず、夜ともなると急に秋めいてきた。気温は長袖のシャツを着ても少々肌寒いくらいで、佐々木さんはジャンパーを羽織っている。ツユムシよりもコオロギの声が鮮明に聞こえる初秋の夜。今夜はこのアタリの遠さでありながら、夜になってからの時間の経過を早く感じている。それだけ楽しめているということか。

 エビをえさに捨て竿を投入  この夜はテントで就寝

 ナマズ釣りでもしようかと思ったが、このゴロ石は歩きにくい。篠津湖同様に石の間にナマズが潜んでいることは間違いないが、歩くたびにガタガタと大きな音を立てて、これでは魚を逃がすばかりだ。やって釣れないこともなさそうだが、中途半端に完璧主義な私は、この煩いゴロ石を理由にナマズ釣りを断念。

 本命竿に変化はなく、初めて鳴った捨て竿のバイトアラームも、鯉ではなく掛かっていたのは20センチほどのウグイ。最後の打ち返しをしたら、そろそろ眠るとするか・・・。今は涼しくても、どうせまた日が昇ったら急に暑くなるに違いない。テントの東側に朝日よけのパラソルを立て、設営してから初めてテントの中へ入り込んだ。

   そして夜が明ける  

 早朝、霞む目を擦りながらテントから出ると、佐々木さんが様子を見に来ていた。どうやら全くアタリのないまま夜を明かしてしまったらしい。無論、こちらもセンサーに起こされることはなかったが、左の捨て竿は様子がおかしい。ラインが大きく左に向き、張ってはいるものの、その着水点は投入した位置よりも明らかに手前に動いていた。とりあえずドラグを締めて糸の先の感触を探るも、ビクともする感じがしない。完全に仕掛けがゴロ石に噛んでいる状態であり、已む無くラインを切ることになった。アラームが鳴った記憶はないが、ラインが張っているということは、いくらかは鳴ったのだろう。予想していたこととはいえ、初めてのフィールドでこんなことがあれば、その正体が大きく心に引っかかる。鯉という確信はないので、また大きなウグイかナマズか、いずれにしても大した魚ではないだろうが、少しでも情報の欲しい今の私には悔やまれる一件だ。

 全ての竿の打ち返しを終えた頃にはすでに気温が上がり、もう暑くてしょうがない。テントの中は入っていられる状態ではなく、すでに何の意味もなさなくなっているので、とっとと片付けた。佐々木さんは「昼までやろうかな・・」か悩んでいた様子だが、ここまでアタリがないことで見切りをつけたのか、早々と納竿して帰路についた。私はもう少しここにいて、次回の釣行のプランでも練ろうか。当然この一回で見切るつもりはなく、この秋から少しずつここをリサーチしていきたいと思っている。まずは普通に普通の鯉を釣れるようになることが目標だ。

  あっという間に暑くなった  

 昨日のうちに沼を2周ほどして、メーターが上がったと噂されるポイントも見てきたのだが、ここは土手上から水面まで距離があるところが多く、普段の釣り場に比べると入釣には苦労する場所だ。農家に囲まれているので私有地も多く、そうでなくても木々が邪魔をする。荷物をまとめて担ぎ込みのスタイルでもしなければ入れないところがほとんどだ。

 さぁどうしよう。次回はまたここに入るか、他にいくつかある入りやすい別の場所に入るか、それとも担ぎ込みか。迷いに迷うが、結局はその日のコンディションとか、予定とか気分とか、他の釣り人の有無とか、そんなことで変わってしまう。今考えてもしょうがないか・・・。

 午前9時。日陰のないこの場所の暑さに負けた私は納竿を決断する。まだ次回があるし、一晩釣りをしてみてもう十分であると思っている。気候的にももう少し過ごしやすくなったら、モチベーション的にも釣況的にも変わるだろうし、本当に楽しみなのは次回とそれ以降だ。次はもう少し、暑さ対策を工夫してこよう・・・・・・・。