釣り日記2011 夏の雨は草の香り 

釣行日 7月16日13時〜
7月17日12時
場所 創成川、篠津湖
時間 天気


 百合の花が控え目に咲き始めた深緑の夏。全国的に降り続く雨は今日も地面を濡らしている。気温もこの時期としては低く、目を覚ますなり身震いしてベッド横の窓を閉めた。予報では日曜まではこの天気が続くようだ。

 今週は海の日を含めた連休であり、北海道へ上陸した川崎の高橋さんと、そこへ合流したジュンちゃんからは、函館の大沼でセットを完了したとのメールが入っていた。もちろん私もそこに参加したいところだったが、函館までは距離的に厳しいものがあった。使えるガソリンの残りも乏しく、今回釣行できる範囲は石狩管内までとなる。夏らしくサラサラと流れる川での釣りをしたいと思っていたが、この雨で石狩川は真茶色の濁流となり、その支流でも増水が酷い。どのような釣りをしようか考えているところに、SASAYANから電話がかかって来た。

 話し合った結果、つるたろうさんを誘って、一緒に篠津湖でソウギョを狙おうということに落ち着いた。三日月湖ならこのまま雨が降り続いても流れが出ることはないし、むしろ活性上昇と周囲の木のオーバーハングによってソウギョの岸寄りが期待できる。

 16日午前10時半。ソウギョ釣りにはまだ早いこの時間帯。私とSASAYANは、ホームグラウンドの創成川で車を止めた。SASAYANからの提案で、ソウギョ釣りの前に、増水後の創成川を狙ってみようということになったのだ。前日にもここを訪れていたSASAYANは、大きく増水し濁流となった川の様子を見て、これが落ち着いた頃に鯉の高活性が起こるのではないかと睨んだらしい。確かに、この時期の創成川で大雨の後はかなりの期待が出来る。濁流をかわすために広い下流に出ていた鯉が、戻ってきたところを狙い撃ちたい。実際川の様子を見ると、いくらか水は引いているようで、大きなゴミも流れていない。これなら丁度良さそうだ。あとはどこで竿を出すかだ。居れば食うはず・・。

  川沿いの道を走り、場所探し  

 大型がいることの多い上流を中心に見て回るが、このあたりに魚はいない。昨日までしばらく水が荒れていたようだから、まだ下流にいるのだろうか。途中、なぜかジョイフルAKでクレープを買い食いしながら、本日の前哨戦の場を決める。

 竿を出したのは北五番橋の一つ下流の上茨戸中間橋下流。釣りが出来る最上流の処理場から、ずっと同じ白い欄干の風景が続く創成川の中で、唯一景色が変わる一点だ。

 SASAYANに先に場所を決めてもらい、彼がフィールドの角に場所を取ったあと、私が上流に捨て竿用のタックルを出す。篠津湖へ行くまでの短い時間の勝負は、やはり手軽にセットできるタックルと、ホームグラウンドスタイルの仕掛けとエサに限る。カーネルコーンの蓋を開け、スライドブランチパワーについた一本針仕掛けに2粒つける。


オモリ部(スライドブランチパワー)
オモリ:小田原20号(カモフラージュカラー)

仕掛け(一本針)
ハリス:鯉ハリス6号(プロブラック)15センチ
針:チヌ8号

エサ:スイートコーン(缶詰)寄せエサも同じもの

 ここを選んだのは、これまで数箇所を見てきた中でも最も魚の気配が感じられたからだ。まだ若干の濁りが入った水の中から、小さな泡が上がる。2本とも手前に打ち込んだら、いつもの手順で落としオモリをラインに流し、柄杓でコーンを撒いた。この感じなら勝負は早いはず。

 小雨をビニール傘で避けるが、すでに服が濡れている。夕方から夜の降水率は100%となっている。風が弱いのが幸いだ。


 開始から1時間。竿の様子を見に行くと、ラインの位置が投入点から大きくずれていた。アラームが鳴っているのは聞いていないが、恐らく一度フケたラインに流れてきたゴミがついて、再び張ったのだろう。竿を持ってもゴミが付いている感触しかないが、ラインがフケたということは魚が触ったということだ。竿を振ってゴミを切ると、確かに魚がついているのがわかる。40センチほどの小型かと思ったのだが、その予想を20センチはオーバーしているようだ。鱗の揃いの綺麗な60前半。そしてそのすぐ後、今度はしっかりとアラームを鳴らしながらラインが走る。雨が強くなる中、上がったのは40台の小型の鯉だった。

小さいと思ったが、ここのアベレージよりもやや大きめ そのあとすぐに40台の子鯉がヒット

 この雨では外にいるのも辛い。SASAYANが買出しに出かけたので、私は車に入ってシャツを脱ぐ。大雨注意報が出ていると聞いて、釣行前にカッパを購入したのだが、なんだこの安物…普通に水を通しやがる。濡れた体をタオルで拭いながらも、これはこれで楽しいと思っている自分がいる。最初からレインコンディションでの釣りをすると割り切っていれば、雨もシチュエーションを構成する良い材料になるものだ。

 シートを半倒しにして読書中、SASAYANが買出しから帰ってきたと思えば、何やら慌てた様子でこちらに走ってくる。ドアを開けると、

 「くぁっ・・かかった!」

 あぁ、ヒットしたのか。すぐに上着を手に掴み、それを着ながらSASAYANの釣り場へ走る。
 ヒットしてから時間が経っていたのか、ラインは真っ直ぐ下流へと引き出され、かなりの量の水草が絡んでいるようだ。この辺りは北五番橋周辺では見られない種類の草も生えていて、その密集度も高い。ラインの強度を目いっぱいに使い、絡んだ草ごと魚を引き寄せるSASAYAN。コンパクトロッドをメインタックルとしているのも手伝い、彼のファイトにはいつも豪快さに溢れる。そうして釣り場の水面に浮かせた魚を、これもまた豪快にハンドランディングして、茶鯉を抱き上げた。

SASAYANにヒットするが走られ、藻に絡んでいた 絡みついた草ごと引き寄せる
 浮いた。ハンドランディングでキャッチ 茶鯉! 

 ここまで悪いペースではない。期待していたような連アタリの爆釣モードにはなかなか入らないが、真夏場の雨と程よい増水というコンディションを楽しめている。この調子で2匹目の追加を狙うSASAYANの要望で、ここを引き上げて篠津湖へ移動する時刻を16時半とした。残り1時間半。これだけあれば十分だ。早速私の竿に小さなアタリがあったが、これは空で終わってしまった。

 捨て竿用に使っているバイトアラームは無線式ではなく、この街中の川で況してや雨となると、いざ音が鳴っても車に居ては聞き取り辛い。せめて窓を開けたいのだが、少しでも開けると車内が濡れてしまう状況。あとは自分の胸騒ぎからアタリを感じ取るしかない。高が捨て竿用だが、気が向いたらこれらも無線式に買い換えようか・・。SASAYANは、現在大沼で実釣中の高橋さんの協力を経て改造した、ワイヤレスドアチャイムのセンサーを使い、車でも安心していられるようだ。いつのまにか自分の車の中で、だらしのない体勢で仮眠を取っていた。


 16時。できるだけ耳をすませていたが、土手下からのアラームは聞こえてこない。外に出てみても、竿に動いた形跡はなし。でも私はもう十分だ。早いところ篠津湖へ行って落ち着きたい。

 SASAYANが熟睡中の中、再び雨に濡れながら自分のタックルを収納する。早くも16時半。全く自分で起きる気なしのSASAYANを叩き起こしてやらねば・・。奴が熟睡中の車のドアを開け、声をかける。

 「SASAYAN、行くぞ。」

 「・・・・・んぁあ?・・・どこに?」

 「どこって!篠津湖だろうが!!」

 「・・・あれ?・・・ここ篠津湖じゃないの!?」

 なんでもう行った気になってんだよ!


 寝惚けたSASAYANが納竿準備を始めるのを確認してから、私は車で待機する。しばらくして、またこちらへ向かってくるSASAYAN。ドアを開けると、「掛かってたけど糸切れた。それだけ」。 また知らぬ間に鯉がヒットしていたらしい。これもかなりラインを出されており、それに絡みついた障害物を振り解こうとした時、ラインブレイクしてしまったそうだ。



 17時。SASAYANが支度を済ませ、ここから本番の釣りが始まる。篠津湖での釣りでは、つるたろうさんも合流して共にソウギョを狙う予定だ。つるたろうさんも別の場所で前哨戦の釣りをされており、夕方には篠津に着くとのメールが入っていた。

 重たい色の空の下、篠津湖のいつものパーキングに入った私達は、車から降りずに窓越しに今回の場所を見定める。パーキング前か、馬頭観音か迷ったが、今回は馬頭観音の十数メートル下に決めた。釣行記としていない釣行だが、前回ここに来たときも同じ場所に入っている。

 遊んでいる余裕はなく、18時に放送される夕焼け小焼けのメロディーをバックに、私達はエサに使う葦を集めた。
 竹竿に寄せ用の葦を括り付けていると、つるたろうさんが登場。軽く立ち話をした後、つるたろうさんは少し離れたお気に入りのポイントへと向かった。私よりも先に準備を終えたSASAYANは「俺、もう寝るわ」と言い残して車に閉じこもる。この一日ずぶ濡れになりっぱなしで疲れたらしい。さすがの私もセット完了後すぐに車のシートを全て倒して、そのままドアを閉めた。

18時、篠津湖にてセット完了 SASAYANの釣り場

 カエルの声は聞けず、窓も開けられない。やることをやりきってしまえば、あとは本当にチャンスを待つだけとなってしまうこの釣り。雨も良いものだと思ったが、このような泊り込みで降り続けられると、やはり少々辛いものがある。人によっては全く問題ないのかもしれないが、せっかくの休みに釣りに出て、車でじっとしていなくてはならないというのはもったいない。普段と違う空気を吸い、普段と違うものを見て、普段と違うことを考えられる。それが叶うのは、私にとって唯一、釣りをしている時間だけなのだ。それも、特別思い入れた魚に出会うまでの過程、このアタリ待ちの時間だけ。こんなところで壁に囲まれるのは不本意だ。

 木の下にいるために時たま大きな水滴が落ちてくる。車内に点したLEDのランプの明かりで夕食をとり、雨が上がってくれることを願って床に就く。おっと、その前に仕掛けの最終チェックをしなくては・・。ビニール傘を開いて、釣り場の様子を見に行くが、私、SASAYAN共に、寄せエサや食わせエサに異変は見られない。早く止んでほしいこの雨の大きな利点は、魚の活性向上と、増水によるオーバーハングと魚の遊泳範囲の接触。絶対に食いにくる奴がいるはずだ・・・。

 午前4時。ひとつのチャンスをモノにできなかったことに気づく。ようやくの雨上がりに外に出てみると、私の1番竿の寄せ葦が見事に全て無くなっていた。3本の葦を紐で束ね、更に竹ざおに縛り付けておいたのだが、その3本が紐ごと竹ざおから抜き取られていた。まぁ、竹ざおごとなくなっているよりは良いような気もするが、もっとも腑に落ちないのは、これだけ綺麗に荒らされていたにも関わらず、食わせの葉一枚だけがその場に浮いていたことだ。完全に見切られてしまった・・・。

あ?・・・あぁ!?全部ない!(食わせ意外) あんなところに本体が・・・
 取られた部分を回収。こんな綺麗に身包み剥がされて  面倒くさいからこれで再投入

 去年釣ったソウギョは、寄せの葦に一切口をつけず、ピンスポットで食わせだけを選んでヒットしてくれたのだが。そんなこともあれば、こんなこともある。それにそろそろ、江戸川式の草針にもスレてきているのかもしれない。とりあえず今はそれ以上考えないようにして、とにかく打ち返しだ。まだチャンスが来るかもしれない。今からまた葦を採取して竹ざおに括るのは面倒なので、仕掛けの上部に数枚の葉を食わせとは別に垂らし、これでアピールと針のカモフラージュを図る。

 少し離れたところから、車のドアを閉める音が聞こえた。つるたろうさんももう起床しているようだ。向こうの様子見と、こちらの寄せ葦が取られたことを伝えに、つるたろうさんの釣り場へ向かう。その道中、ルアーを流してみようとナマズのタックルを持ち、「鯰人」を泳がせる。すると数投目で早速40台のナマズが足元から飛び出し、アタックをかけて来た。写真を撮る前に勝手に逃げてしまったが、やはりトップで出せると面白い。

 さて、つるたろうさんに話を聞くと、午前3時頃から今しがたにかけて、竿が揺さぶられる空アタリが続いたのだという。確かに活性と食い気は良い。ただ、プレッシャーはかなり強いと見える。そして私が自分の釣り場に戻った時、SASAYANの竿にも空アタリの痕跡が残されているのに気づいた。噛み跡の残る葉が付いたままの仕掛けが、ポイントから外れて岸に打ち寄せられている。一時起床したSASAYANはそれを再セットし、まだ寝たりないのかすぐに車へ戻った。これで全員が空アタリを食らっていることになる。

 ソウギョを釣るようになってから3年間、ほとんど同じやり方で問題なくやってこれたが、そろそろ攻め方を変えるべきか。仕掛けと寄せエサのセット仕方や、針の付け方など、少し考えれば色々な方法が思いつくが、今度ここに来た時はどんなやり方で、ソウギョの見切りに対抗してやろうか・・・。

 午前7時のサイレンの直後、SASAYANの竿がついにアタリを捕えた。センサーが反応し、車から飛び出してくるSASAYAN。彼の初ソウギョは、泡と共に水中へと突っ込んでゆく。

SASAYANの初草魚ゲットシーンを動画撮影しました。私のタモの入れ方はワザとじゃありませんミスです

 特有の往生を繰り返すが、魚の抵抗はすぐ弱くなり、SASAYANが自ら構えるタモへと導かれた。もともと細身の魚だが、この個体は一段と顔が小さいように見える。最初水面で姿を確認したときは70台と錯覚してしまったが、上げてみると体長があり、90をオーバーしているのは間違いない。このヒットをつるたろうさんに告げ、3人揃ったところで検寸をする。記念すべきSASAYANの初の篠津ソウギョは92センチ。少々計り方が悪かったような気もするが、ともあれ釣ったことに変わりはない。


 ファイト中、止んでいた雨が再び降り始めた。似た様な状況で、去年私が釣ったときのヒット時間は午前9時だった。私は仕掛けをそのままに、SASAYANはこのソウギョに食われた葦を付け直して2匹目を狙う。

 今日のコンディションなら、まだいける筈だ。強くなり始めた雨をかわすべく、まだシュラフを敷きっぱなしの車に入り込み、気が付けば眠ってしまっていた。その間に、つるたろうさんは用事のために釣りを終了。この天気でなかなかお互いの釣り場を行き来することができなかったのが残念だが、またご一緒したい。

 午前9時、10時と過ぎ行き、今回の釣行も終了時間となった。その後2人の竿に変化は訪れず、SASAYANはバイトがあるため早々と道具を片付けた。私はゆっくりと散らかした車内を整理してから道具を積み込んでゆき、最後手にしたルアーロッドを見て、昼ナマズをやろうかと考える。しかし今日も雨。これ以上ずぶ濡れになるのを嫌い、ナマズの楽しみはまた今度来た時までとっておくことにした。夏ももう中盤。初の三桁台を手にした朝、悲しみに暮れた夜、あの日からもう1年が経とうとしている。