釣り日記2011 冷たい金色 前編 

釣行日 5月2日午後8時〜
5月6日午後6時
場所 創成川 伏籠川合流点
時間 天気 雨のち曇り 北西の強風

 第一部 5月2日夜〜5月3日夕

 この夜の合流点は荒んでいた。住宅街ならそこまで感じなかった風も、ここでは激しく打ち付ける。その強さに、雨が降っていることさえ忘れてしまいそうだった。ゴールデンウィークにも関わらず、もはや雪と呼んでいいような質の冷たい雨も来る。

 水が安定しやすく、数も期待でき、更に広く複数人で入れる場所といえば、まず創成川と伏籠川、発寒川の合流点が思いつく。去年のゴールデンウィクと同じよう、Tadashiくんと弟のNoboruくんが準備を始める現地に到着したのは午後8時になろうとする頃。ひとまずベースを設営しようとテントを広げるも、風の強さに負けてしまう。はっきり言ってこれでは釣りどころの話ではない。荷物を降ろし、車の下に突っ込んだら、空いたスペースの座席を倒した。とにかく状況が治まるまではここに非難だ。

 Noboruくんは釣り場まで連れてきてくれた親御さんの車に入り、Tadashiくんは私のエスティマへ。去年もテントを立てるのに苦労する強風だったが、これほどではない。雨風が弱まるまで待つしかない、そんな幕開けとなってしまった。

 冷える車内は談笑の場。夜が更けてもアタリ待ちの場となることはなかった。センサーに起こされることがないとなれば、悲しきことかなグッスリと寝付けてしまう。

 空が白んでしばらく経った頃、ようやく雨が上がり、風も力を落とした。やっと始められる。一晩中じらされた分やる気が高ぶるが、魚は動いているのか。水は対岸の白い欄干を超える増水状態で、水温は11℃、跳ね、モジリはいまのところ見られない。
早朝、ようやく雨が上がった やっと準備が出来る

 Noboruくんはまだ熟睡しているようで起きてくる様子はない。私とtadashiくんは早速準備を始め、創成川最下流の角にtadashiくん、その上隣に私がセットした。

 竿は二人とも創成川と伏籠川の水が入り混じる点に穂先を向け、遠浅になっている対岸の浅瀬と、カケアガリの下の両方を狙える。私は基本的に1番竿を浅瀬に、2番竿をカケアガリの下に打つようにしており、その他、創成川の中や足元の護岸縁を狙う場合は捨て竿を出す。

 一投目は視認性の強い「白虎」と匂い付けに「スーパー1スペシャル」を配合したダンゴを打つ。食わせはレーズンやコーンなどを使うが、それらに若干浮力性を持たせるために発泡材を針に刺す。針は夜尾長グレ12号。

白虎ベースのダンゴと発砲材入りの食わせ 増水で対岸の白い欄干が水没状態

 午前9時25分。長丁場になるかと思われていたところに、2番竿からファーストヒットの報せが届いた。40センチほどの小型だが、とりあえず魚を見ることができた。

 ここからどう展開してゆくだろうか。今回はこのゴールデンウィークをたっぷりと使った連泊を予定してるため、時間はいくらでもあるようなものだし、いろんなことを試してゆける。

 打ち返しのあと、前回使った捨て竿のシーバスロッドを2本取り出し、本命竿のすぐ上隣にセットしてみた。創成川の真ん中と手前に、ホームグラウンドスタイルのコーンを打ち込んで反応を伺ってみる。この捨て竿ではこの後、いろいろと試してみたいことがあるため、コーンの撒きエサは控えめに、反応があるまでは手を付けないで置いておくことにする。

思ったより早いアタリ 捨て竿をセット。奥はTadashiくんのウキ釣り

 Tadashiくんは磯竿を出してウキを眺めている。同じころNoboruくんが起床して、ロッドポッドに大鯉専科を並べ始めた。去年はヒット数最多であったにもかかわらず、スッポ抜けや掛かりに入られたことで釣果を重ねられなかった彼だが、今回はどんな釣りを見せてくれるのか。

 午前10時30分。2番竿が2度目のアタリを捉えた。これも小さいが、出足は好調といったところだろう。

 アタリが出なければ、更にダンゴのアピール力を増すことも考えていたが、次の投入も同じ配合でいこう。「白虎」と「スーパー1スペシャル」のダンゴを作り置き、打ち返し分は除いて残りを濡れタオルに包んでおいた。

二度目のアタリも二番竿 2匹目

 昨日の今日であるからか、私達の他には延べ竿での五目釣りが一人入っているのみで、日が高くなっても釣り人が現れない。もっとも対岸は水没状態であり、わざわざこんな所を選んで釣りをする人もいないだろうが・・。

 11時半を回ったころ、三度2番竿のスイッチが入るも、これは空アタリだったようだ。回収しても小さい魚がついているわけでなく、発泡材がそのまま針に残った状態で上がってきた。それから間もなく、Noboru君のバイトアラームが反応。しかし当の竿主は外出中であり、代わりにTadashi君が魚を仕留めた。竿主が帰ってくるまでの間、アンフッキングマットでキープされたこの鯉は60センチくらいか。形の整った綺麗な一尾だ。

竿主が居ぬ間にヒット Noboruくんが少し痩せた

 夜に比べればかなりマシになったが、依然風は強い。晴れてくれた分過ごしやすいものの、冷たい風は上着を脱ぐことを許してくれない。しかしここまでポツポツとアタリが出ているのは、これが向かい風である恩恵か。

 対岸の様子を見に行っていたところ、先のNoboru君に次いで、私にも外出中のアタリが来てしまったようだ。釣り場でTadashi君がこちらに向かって手を振っている。戻ってみると竿先はすでに動いておらず、二度目の空アタリを匂わせる雰囲気だった。しかし釣り場に残っていた2人曰く、確かにラインが走っていたというので、小さい魚が付いているかもしれない。竿を手にしてみると案の定、50センチ程の鯉が針を咥えていた。

 これまでアタリをとっている私の2番竿とNoboruくんの共通点はダンゴとポップアップの食わせエサであること。Noboru君はお気に入りのマルキュー「鯉師」と、氷いちごを思わせる香りのバークレイ「イミテーションコーン」を針に付けている。いまだ小型ばかりであるが、この組み合わせが強いようだ。

 飛ばされてしまった発泡材を針に付け直し、濡れタオルに包んでいたダンゴを取り出していると、私を呼ぶ声が聞こえてきた。Tadashiくんにヒットしている。バイトアラームの音が聞こえなかったと思ったら、彼の本命の竿ではなく、ウキ釣りのほうに食っていたようだ。それもウキ釣りのターゲットとしてはなかなかの良型であり、70センチまであと僅かというサイズ。

外出中のヒット 3匹目 Tadashiくんはウキ釣りで70

 珍しく本竿にアタリのないTadashiくんだが、やはりサプライズを起こしてくれる。

 全員が釣果を得たところでアタリのペースは落ちてしまい、やっとNoboru君にヒットが来たかと思ったら、残念ながら掛かりが甘くスッポ抜け。そのまましばらく、電子音のない時間が続いた。

 そんな中、釣り場には伊藤君が訪れ、少し遅れてSASAYANも登場した。彼ら二人はここで待ち合わせて、これから海へ行くのだという。しばしの談笑の後、小樽へと向かう二人を見送って、自分たちの釣りに戻る。

 捨て竿につけていたコーンには依然何の反応も見られていない。すっかり滞ってしまった今、少し目先を変えてみよう。2本の捨て竿の仕掛けを回収し、ハリスを外す。オモリ部分の片天秤風管付き固定式はそのままに、いままでコーンを付けていた1本針仕掛けから、大針の2本針仕掛けへと交換した。続いてボックスから取り出したのはペットショップの茶色い紙袋。このなかにはグロテスクなジャイアントミルワームがうごめいている。もちろんこれをエサにするつもりなわけで、各針に1、2匹のミルワームを付け、捨て竿のエサ変えを終えた。

 ジャイミルは硬い表皮に覆われ、虫エサとしての針持ちが最高であることを知っているが、まだこれで釣ったことがない。2008年10月12日の釣行で伊藤君が使用し、一投目の投入直後に70台をヒットさせたのを見て、釣れるエサであると認識しているのだが…。

  閲覧注意・ キモいGミルワームをエサに  

 NoboruくんがTadashiくんのウキ釣りタックルの異変に気付いた。固形のエサをつけ、打ち返しをしていないために、もはや完全に置き竿の向こうアワセ。竿掛けの上で大きく曲げられる磯竿を竿主が掴むと、50センチほどの鯉が2本ある両方の針を口にくわえて上がってきた。そしてアタリが戻ってきたのか、私の本命竿にもヒット。相変わらずの小型であるが、これまで2番竿に集中して食っていた中、浅瀬に打った1番竿にアタってくれた。

Tadashi君はウキ釣りで好調 このサイズばかりだが、アタリが戻ってきた

 日が暮れ始めてきた。Tadashiくんはウキ釣りタックルへの向こうアワセを見込んで、磯竿にもバイトアラームをセットした。これなら暗くなってからもこの竿に期待ができる。

 今になってせっかくアタリが戻ってきてはいるが、今夜もまた寒くなるのだろう。夜には再び雨が来るという予報も出ている。それでももちろん、ここで連泊をするつもりでいるが、Noboruくんは体調が優れないようで、親御さん達と一緒にこの夕方で切り上げてしまった。私も夜までに一度この釣り場を離れなくてはならない用事がある。かなり面倒だが、家にやり残してきた所用があるので仕方がない。Tadashiくんがここに残ってくれるので、タックルや荷物はそのまま置いて一時帰宅してしまおう。その前に車内の整理をせねばならない。昨夜の避難場となっていた車の中はどこになにがあるのかわからない状態で、私物はもちろんTadashiくんの小荷物もあるため、今ここで下手に触るのも憚られる。とりあえず運転席の周りだけを綺麗にしておいて、必要な私物はまとめて助手席に置いておいた。

Tadashiくん、ウキ釣りタックルにバイトアラームを 釣り場全景

 Tadashiくんのウキ釣りタックルにセットされたアラームが持続的な電子音を発した。コーンやブドウムシを付けた普通のウキ釣り仕掛けなのだが、今日はこの竿に本当によくアタる。ブドウムシに食ってくるのだから、私のミルワームにもそろそろ何かあって良いのではと思うが、仕掛けを回収してみても、奴らは無傷で帰ってくる。

 そして、ついにTadashiくんの本命竿にもヒットが訪れた。この一日、不思議なほどにアタリがなかったTadashiくんのカープロッドだが、これだけ待たされると、どこかしらから大物の期待感が湧いてくる。それも、いつも真っ先にアタリを取ることの多いTadashiくんの本命竿だから尚更なのであろう。そんな勝手な心づもりをしつつ、カメラの電源を入れる。だがあろうことか、魚を引き寄せる前に糸先の躍動感が消えた。スッポ抜け…?残念・・・とその時、初めて私の捨て竿のアラームが鳴る。「こっち!?」

初めてTadashiくんの本命竿にヒットがあったが・・ え、そっち!?私の捨て竿のアラームが鳴り出した

 ミルワームを対岸近くに打ち込んでいた捨て竿にヒットしている。ラインは下流へ向かって走り、スプールが私の右手の中で滑り出す。パワーの劣る捨て竿であるが、魚もなかなか良い引きをしてくれている。これは良型を期待できるかもしれない。

 ドラグテンションを微妙に調節しながら魚を制御し、時には従う。それを繰り返し、そろそろ疲れて頭を上げるだろうと思うのだが、岸寄りしても水面に姿を見せようとしない。そんなに大きいか?いや、この走り方といい、少々怪しい。顔の横などに変な掛かり方をしてしまっているのはないだろうか。仕掛けは2本針だ。口の針が外れて遊びの針が横っ面に掛かり、そのまま走っているのではないだろうか・・・。

 ようやく護岸の暼に浮き始めた魚は良型で太ましい鯉だが、やはり暴れ方を見てもおかしな状態で針掛かりしていると見える。それに私の仕掛けとは別に、何やら見覚えの無い仕掛けまで絡まっているではないか。いったい何がどうなっているのか、タモを構えるTadashiくんが魚を捕らえ、絡まったラインをほどきにかかる。

 一応80ほどあると見て、私は車へ検寸板を取りに行く。現場に戻ると絡んでいた仕掛けはほとんどTadashiくんが外してくれたようだ。いくつかの針が折れ、かなり古いと見られる吸い込み仕掛け。これはいったいどこから?というより、もともとこの鯉の口に掛かっていたのか。自らラインを切った吸い込み仕掛けをぶら下げながら、ミルワームに食いついたのだろう。そう思ったのだが、Tadashiくんの口からショッキング一言が飛び出す。

 「安田くんの仕掛けはどこにも掛かっていませんでした。」

 えー

検寸板に載せると、サイズは80ジャスト。この鯉はもともと体に吸い込み仕掛けをぶら下げており、その遊びの針が私のラインに絡まって暴れていただけのようだ。せっかくの80であるが、これでは釣果とは呼べない。

早朝、ようやく雨が上がった やっと準備が出来る
釣果にならない80。複雑な気分だ  この吸い込み仕掛けが私のラインに引っ掛かっただけ 

 今日イチの魚を釣果にできないとはなんとも悔しい思いだが、これがメーターオーバーの鯉でなくて本当に良かった(笑)自己記録を更新するような魚にアラームを慣らされ、ファイトしてタモに入れ、それを記録にできないなんて悲しすぎるだろう。

 時刻はすでに午後6時。さて、私はやることがあるのでそろそろ一時帰宅しなくてはならない。このお騒がせの鯉にいいだけ暴れられても、なお針に付いているミルワーム。その仕掛けをもう一度同じポイントに入れ、釣り場を離れた。私が居ない間にヒットがあってもいいように、センサーの受信機をTadashiくんに渡し、車に乗り込む。できるだけ早くここに戻りたい。第二回戦は、どんな展開になるのだろうか。