釣り日記2012 ホームグラウンド 
釣行日 4月30日 場所 創成川 学園都市線、北五番橋
時間 午前6時〜午後7時半 天気 晴れ〜くもり(南東の風)


 連なる雨の合間に見せた晴れ間。コブシの木が辛うじて蕾を膨らませるが、寒さに強張るように花弁を閉ざしている。

 悪天の続く中、この土曜日は空が明け、夜までは次の雨がこないという予報であるが、晴れた青空に浮かぶ雲の動きは速い。午後には風が強くなることが予測されるが、気温はあがり、一日じっくり釣りを楽しむには十分なコンディションであろう。夜が明ける頃に目を覚ました私は、まだ早いうちから、勇んで玄関のドアを開けた。

 創成川の思い出深い所にて。

 まとめた荷物を持ってポイントへと担ぎ込む。今回は足での移動ができるように、必要最低限のものだけをいつものタックルバッグから選び出し、持ってきている。もちろんピトンや70枠ワンピースのタモなどは持ちまず、タモは折り畳みで、竿立てはバンクスティックを用意。また今回は、この冬に捨て竿用に購入した新しいタックルのテストもかねており、ロッドケースには振り出し式のシーバスロッドが入っている。少々その弾力とリールとのバランスに疑問があり、一度このタックルで鯉とのバトルをしておきたい。

 学園都市線の橋をくぐり、少し歩いたところで足を止めた。10年前に幾度か竿を出したことのあるポイントであり、鯉が溜まっていることの多い場所のひとつ。しかし今日はどうだろう、雨の後であるが、思いのほか水が澄んでおり、減水している。ここで鯉を見ないことはないというような場所であるが、目を凝らしてみてもその気配すらない。

 少々竿出しに戸惑ったが、日が高まれば戻ってくるだろう。ひとまず一投目をこのポイントに入れよう。あとはそれから決めればいい。そもそもここを選んだ理由は鯉がよく溜まっているからではない。単純にここが懐かしく、竿を出しながら物思いに耽りたいだけだけだ。釣況が悪ければ、すぐに何処にでも移動できる。時刻はまだ6時。明日まで他に予定はない。いくらだって、好きに釣りができるのだ。

 持ってきているエサはバズベイト、ペレット、食わせコーン。魚が出てきてくれないのでどうしていいやらわからないが、とりあえずはバズベイトと一緒にペレット入りのPVAを一緒に投げ込んでおこう。全体的にかなり浅い上に減水中であるものの、一部深くなっているポイントがある。鯉が通るとすればここだろう。10センチほどのウグイの群れが居ついていて、エサに対する集中攻撃を受けそうであるが、バズベイトなら問題ない。

学園都市線を横目に バズベイト(ロイヤルハニー)とペレット

 2本のタックルをセットしたら、土手上から川の様子を眺める。後ろの高架に隠れていた朝日が高まり、釣り場に光を入れた。この高い位置からなら、竿もポイントもその奥の水中の様子もすべて見ることができる。

 ポイントに入れた仕掛けは、PVAが溶解し、ペレットが少しずつ崩れて山状に積もっており、それをウグイたちが銀鱗を光らせながら啄んでいる。その周囲には、まだ鯉の姿はない。今日はいったいどうしたことか、いつも様子を見に来るときはたくさん居るのに、いざ竿を持ってきたらこれだもの。


 草の褥に横たわり、釣り仲間にメールを送る。掲示板にて茨戸に泊まり込むと書き込んでいたニャーゴロくんは、ネット裏にて続行中とのこと。しかし状況は芳しくなく、午後からは創成に移動するようだ。川崎の高橋さんには「釣れないよ〜」とメールを送ってみた。高橋さんは釣行中、私に「釣れないよ〜」とメールを送ると、その直後にアタリが来るというジンクスを持っているが、今回は逆にこちらから高橋さんに「釣れないよ〜」メールを送ってみた。

 その効果なのか、ここで初めてポイントに鯉が出現。食い気のあるエサを探している鯉のようで、そのまま2番竿のバズベイトに食いつくかと思いきや、その横にある何の関係もないただのゴミに食いついてマズそうに吐き出し、そのまま去って行った。

 状況の変化を望んでしばらく待ってみたが、やはりダメなようだ。もう十分に懐旧に耽ることができたし、そろそろ釣ることを考えよう。

 さて、どこへ移動しようか。ニャーゴロくんのいる茨戸ネット裏に参戦するのも良いが、ここは1年ぶりにホームグラウンドへ帰ってみるのも悪くない。北五番橋・・・同じ創成川でもあのあたりなら間違いなく鯉は入っているだろうし、少なくともここよりは良いはずだ。

 再び荷物を担ぎ、来た道を戻る。食わせコーンを持ってきているので、北五番橋ではやりなれたコーン釣法で行くとしよう。移動の途中、トライアルに車を止め、自分の食糧と冷凍のカーネルコーンを購入。

 時刻は10時半。やはり風は強くなってきているが、思ったほど冷たくはない。これなら防寒着など必要なく、むしろラフな格好で釣り場に居られる。

 北五番橋から水面を覗くと、上流部とは打って変わり、水に濁りが入っていた。そして水位は多く流れも緩やか。大きなゴミなども流れてくる様子はなく、かなりやりやすそうな状態であった。ボラが入っているようだが、鯉も姿を見せてくれる。ゆったりと上流へ向かって泳ぎながらエサを探す鯉のスクール。その出現頻度も少なくはない。これらの鯉をここで足止めして数釣りといこう。状況としては理想的なホームグラウンド。何をやっても釣果を望めそうだが、ここは中学生の頃からの此処でのやり方で行きたい。

スーパーでコーンを購入 北五番橋に移動した

 ヘアーリグに3粒の食わせコーンを取り付け、鯉が最も頻繁に通るラインに投入。いつもどおり柄杓でカーネルコーンを撒くが、魚の数が多いことで、その量も多めにばら撒いておいた。

 こういうときこそ、警戒心を誘発させてはならない。集団で動く生物では当たり前のことだが、数匹でまとまって入ってくる鯉も同じ。一匹が警戒すると周りの他の鯉にも警戒が伝達してしまうのを、ここで嫌というほど見ている。より効率的に釣りを遂行すべく、ラインには落としオモリを装着しておいた。

 水面に浮かぶ泡の数が増し、ほどなくしてバイトアラームが叫びだす。1番竿にヒット。このタックルを使っての初めてのファイト。9Fミディアムライトのシーバスロッドは少々柔らかすぎたようだが、普通に鯉と引き合いする分にはパワーに余裕がある。大きな流れのある場所や、掛かりの多い場所ではやはり少し不安であるが、このような釣りでは十分使えるだろう。

 60センチほどの鯉が浮き上がり、タモを差し出したとき、2番竿のアラームもけたたましく鳴り始めた。ダブルヒット。ひとまず最初の鯉を掬い上げ、タモから出してから2番竿を手に取る。こちらはなかなかの重量感で、この時期の鯉にしてはよく走ってくれた。目測で80センチに届いているのではと思ったが、メジャーを当ててみるとほんの少し足りないみたいだ。

茨戸での釣りを終えたニャーゴロくんが釣り場に訪れた。彼はしばらく川の様子を観察し、横新道の上流にて再び竿を伸ばし始める。ここで二次会を開くようだ。

 鯉の動きの良さは思った以上であり、私のポイントに寄せた鯉に加えて、下流から次々と新しい鯉が入ってくるようになっていた。ニャーゴロくんが竿を出す様子を遠目に見ていると次の鯉がヒット。これも60センチの創成アベレージサイズだが、写真を撮るのを忘れてリリースしてしまった。

写真撮り忘れ
いきなりダブルヒットしてくれた 3匹目の60台だった

 早くも正午。橋の上から鯉の寄り具合を確認し、それに応じて寄せのカーネルコーンを追加した。この分であれば、いくら多めに撒いているとはいえすぐに食われてなくなってしまうだろう。次に入ってくる鯉を足止めすることを考えて、頻繁にコーンの打ち返しが必要になりそうだ。

 昼食の弁当を開いていると、4匹目のヒットコールでその手を止めることになった。なかなかの重量感で締めたスプールを回してくれるのが嬉しい。70センチ。このサイズが混ざってくれるのならもはや文句はない。


 アタリ出せば次から次だ。70センチがヒットした1番竿を打ち返していると、今度は2番竿にヒット。そして間もなく打ったばかりの1番竿にもアタッてきた。どちらも50センチ台の小型であるが、久しぶりのブッコミ釣り、こうした連続ヒットは、この冬籠りで溜まったものを吐出すのに十分すぎるほど楽しませてくれる。

連発! 6匹目

 さて、やっと弁当を開くことができる。鯉にエサをやることにかかりっきりで、自分のエサを食べらないじゃないか、と贅沢な不満をもらしてみた。もう十二分に満足であり、ここで止めてしまってもいいくらいだが、釣れるのなら、このままどこまでいけるか見てみたい。

 食事中にまた呼び出されるのではないかと思ったが、連続したアタリは止まったようだ。竿の前、土手の傾斜に体を横たえて昼食後の休息をとる。こうして微睡むアタリ待ち…こんな釣りもしたかった。

 帽子を顔に乗せて休んでいると、近くに住んでいる友人が釣り場に遊びに来た。彼との談笑中、2番竿の穂先が軽く引き込まれたのをみてその場から走り出す。50センチほどの鯉で、今日のアベレージにはこのサイズになる。今年初の抱っこ写真を撮ってもらっていると1番竿も反応。浮いてくる魚影は鱗の不規則なドイツ鯉。何度も姿を見ているが、釣り上げたのは初めてのこと。

遊びに来た友人に抱っこ写真を撮ってもらった 初めて釣ったミラー

 このドイツ鯉からアタリのペースが急速に落ちてしまった。何等かの拍子で寄っていた魚が散ってしまったのだろう。しかしそれでどうにかしようというような状況ではない。待っていれば必ず魚が入ってきて、必ず反応してくれる。何も考えずにただ待つだけ。

 ドイツ鯉から1時間の間をあけて2番竿が唸った。魚は粘り強くよく走るナイスワン。今は障害物もないし、パワーの劣る安いシーバスロッドだから、こんな魚が相手なら大いに楽しめる。70センチの綺麗な鯉だった。

 その場で新しいコーンを針につけて、ポイントに投げ込む。その瞬間、まるでナマズのように落ちた仕掛けを引っ手繰った魚がいた。突然のことに戸惑いながらもアワセを入れてやるとガッツリとフッキング。60台の鯉。20号のオモリの着水音に反応し、フォールするコーンに飛び掛かってくるようなコンディション。これほど活性も食い気もいい中での釣りは久しぶりだ。

よく走った9匹目。綺麗な鯉 ナマズのようなバイトをした10匹目

 アタリだしたら止まらない。多少の警戒からか、うまくフッキングしない空アタリが多くなったが、10分に一度はヒットを貰える。アベレージサイズは上がらず、60センチを超えるものすら少ないが、ホームグラウンドの数釣りパターンにはまった、ホームグラウンドらしい釣りができたといえよう。

このサイズが次から次へと・・ ダブルヒットした2匹
 遊びに来た友人に竿を渡して  楽しんでもらえて良かった
 相変わらずサイズは上がらないがこれで16匹目 いいかげんもう十分かな・・ 

 連続アタリに、友人が遊びに来ていることもあって、時間を忘れてしまっていた。2005年度の山アくんや村上さんとの釣りを思い出す。

 16匹目の小鯉を見送った後、暗くなった川面でタモを洗った。この一日で、ここまで思い入れある創成川を堪能できるとは。これでまた旅に出られる。ここを離れ、今年はどの釣り場でどんな風に竿を出そうか・・。竿を納める私の中で、また鯉釣りの世界が無限大に広がってゆく。