2010年 納涼

釣行日時 8月14日22時30分〜
8月15日22時
釣行場所・ポイント名 茨戸川
  雨の足跡が満ちた潮に重なり、今夜の茨戸川は水が欄干を越えている。無風だが水面は凪ておらず、ある程度強く下流へ向かっているようだ。真夏場のネット裏。私達以外に釣り人の姿はなく、やはりあまりこの時期に好ましい場所としては見られないようだ。それに、お盆の夜だから尚更なのだろうか。しかし今夜はそこまで悪いコンディションではないように見える。

 13日22時。茨戸川に到着したTadashiくんからの電話で、グラウンド裏周辺の状況を知る。水が多いことと、去年よりも草が多く、夜中から釣りを開始するには少々厳しい状況と伝えられた。Tadashiくんはグラウンド裏よりも草や掛かりの少ないネット裏へ移動し、うまくいけそうならその場で釣りを開始するとの事。その電話の後、私も準備を終えて茨戸川へと向かい、22時30分頃、今回の釣りを一緒するTadashiくん、弟のNoboruくんと合流した。

 水面には茨戸大橋の明かりが揺れ、かなりの量の草が流されてきている。創成川などに生えるガマ科の植物が抜け、塊となって流れてくる、通称 「軍艦島」、「島」と呼ばれるものが上流に点在して見え、これからしばらくは釣りの邪魔をされることになるだろう。これでは作るのに手間のかかるダンゴエサなど使っていられない。寄せエサ無しの生餌オンリーでいくのが無難そうだ。Noboruくんの隣にピトンを立ててから、網をもって水面を電灯で照らしてみる。この増水でエビやヌマチチブが多量に岸寄りしており、それらを採って虫かごにキープしておいた。ひとまず、潮が引ききるまではエビや小魚を餌にして、早めの打ち返しで島に対抗してみよう。

オモリ部(管付き固定式 片天秤風)
オモリ:小田原20号
サキ糸:巨鯉ハリス8号(2本縒り)

仕掛け(2本針)
ハリス:巨鯉ハリス8号
針:キンリュー ヒラマサ16号

エサ
スジエビ、ヌマチチブなど

 網ひとすくいで、大型のエビやヌマチチブを大量に捕ることができた。仕掛けは2本針で、エサが大きい分、針も大型のものを選び、今回使うのはヒラマサ針の16号。これは川崎の高橋さんお気に入りの針であり、使ってみては?と数種類いただいたうちの一つ。これまで使ってきたチヌ針やソイ針に形状は似るが、シャンクが短く、針先から返しまでの長さがあること、また針先のカーブが大きいことなどが特徴で、このように大型の生エサを使った釣りに向いていると思われる。

 1番竿はエビをつけ、カケアガリに向かって40メートルほど投げた。2番竿も同じく40メートルほどのキャストだが、こちらはエサ持ちのよいヌマチチブを1匹ずつ針につけている。しかし案の定、この距離まで投げれば流れてくる草の影響を多大にうけるわけであり、ここは浅いのでラインを沈めても島に持っていかれることが多々ある。投入してまもなく、ラインに草が引っ掛かったことでセンサーが鳴ってしまい、投入ポイントを岸から7メートルの近投に変更。ちょい投げすればうまく草をかわせることもあるのだが、今回の流れと草の量ではいずれにしても、またセンサーを鳴らされることを踏まえなければならない。隣のNoboruくんを挟んで一番上流に竿を出すTadashiくんのバイトアラームもしつこく鳴らされていた。

 前回、前々回と比べると、この夜は穏やかなもので、風もなく、暑くもなく、雨も来る予報は入っていない。少々雲がかかってしまい、せっかくの流星群が見えないのが残念だが、そもそもこの場所なら、背後にあるゴルフネットのライトが
眩しくて、星を眺めるには向いていない。それよりも、久々にじっくりと耳にしたツユムシの鳴き声を聴きながら、過去の夏の思い出をよみがえらせている方が心地よい。自分の釣り場の前にテントを張ったが、それに潜り込まなくてはならない理由もなく、このまま心地よい夜風が朝風に変わるまで、竿を前にしての談義は続いた。

 午前3時。Tadashiくんが出していたポップアップボイリーの捨て竿が、明らかに草ではないアラームの鳴らし方をした。茨戸川にしては珍しくよく走る鯉で、Noboruくんにタモ入れされた魚体は目側アベレージを超えている。アンフキッングマットに乗せてメジャーを当てて見るとサイズは75センチだった。

 午前3時、Tadashiくんの捨て竿にヒット 良い抵抗を見せた75センチ 

 朝マヅメを迎える少し前、ここに来て魚の活性が上がりはじめたことが水面をみてもわかるようになった。土手上の砂利道を散歩中に、聞こえてきた私のセンサーメロディ。こっちも草ではなく、エビ餌に食った鯉が沖に向かってクリックを唸らせる。センサーが反応して私が駆けつけるまでにかなり走っており、大きくないがTadashiくんの一尾目と同じように、スタミナのあるうちはよくラインを出してくれた。夏の鯉がよく走るのはここでも同じなのだろうか。これまで幾度か真夏場にグラウンド裏からここネット裏にかけてのエリアで釣りをしているが、まともに釣れたことがなかった。だが今回は、開始からさほど時間がたたないうちに、2匹の鯉が短い間隔で釣れてくれている。この時期のコンディションとしては上々だ。

 私の鯉の40分後、再びTadashiくんにアタリ。これは鯉ではなく、大型のフナ。20ミリボイリーに食らいついたこの魚は、顔つきはヘラだが、若干マブナの雰囲気をもっている。所謂半ベラというやつ。

 活性向上か?私にもヒット Tadashiくんにヒットした尺鮒

 さっき消されたばかりのゴルフの照明が再び灯された。はやくも始業時間、ネットが上げられ、同時に茨戸大橋の陰から朝日も顔を出す。青白い水面に島は減って、水の流れも穏やかになっており、水位も下がってキッチリと欄干の向こう側に納まる。依然魚の活性は続いているようで、ここから気温が上がり始める頃までが勝負どころだろう。

 午前4時30分、Tadashiくんへの知らせが届く。静かな川面に飛沫を上げながら走ろうとするのは40〜50台の鯉だった。その後すぐに私のセンサーも反応。掛かっているのかいないのか分からないくらいの手ごたえで、半信半疑だった私に顔を見せたのは、2番竿のヌマチチブをつけたヒラマサ針をガップリと咥えた小鯉。40センチにも届いていないような小さな鯉が、よくこの針にフッキングしたものだ。

 Tadashiくん好調の2匹目 私のハゼ餌にヒット。小さな口に金針を咥えて
   

 日の光が戻ってくると虫たちも動き始め、ノシメトンボやモンキチョウが釣り場を舞う。連続してアタリが出ている中、竿のすぐ横で高々と声をあげるキリギリスには幾度となくドキッとさせられた。今日も暑くなりそうだ・・。明るくなってから急に出てきた眠気。その意に反するかのように温度を上げてゆくテント内。パラソルで日差しを遮り、入り口を全開にしておくが焼け石に水。寝心地のよいエアーマットの上で休んでおきたいが、水位上昇で小魚たちが岸寄りしている今、それを我慢してウキ釣りを楽しむのも手だろう。これからどう過ごそうか・・・。

 そんな眠気を、一瞬にしてバイトアラームが吹き飛ばす。Tadashiくんに3匹目の鯉がヒットした。こちらに向かって泳いで来ているのか、岸に寄せるまでカープロッドが重量感のない曲がり方を見せていたのだが、魚が水面に浮くとなかなか良型であることがわかった。それに篠津のソウギョさながら、もう少しでタモに入るという距離になってから抵抗を始め、頑なに顔を出そうとしない。いい粘りっぷりの目測80。ランディングして計測するとピッタリとジャスト80センチだった。さすが実力派。

 さすがTadashiくん、3匹目は良型 ジャスト80。いい鯉だ

 一晩を明かし、そろそろ私達のお腹も減ってくる頃。昨夜のセット終了後にまたもご馳走になった焼き肉の余りを、残り火に寄せた新しい炭の上に広げる。朝から肉という、いろんな意味ですごい朝食の最中、ここまでノーフィッシュだったウグイ大将Noboruくんの竿に異変が見られた。投入点からラインが大きくずれ、明らか魚が触った形跡がある。「これは巨大なウグイなんじゃないか!」と謎めいた期待の視線をTadashiくんと共に送っていると、上がって来たのはヘラブナ。夜明け頃にTadashiくんが釣り上げたフナを凌ぐサイズで、私のモエレ沼でのへら釣り自己記録とサイズ、体形ともによく似た魚だった。そしてTadashiくんの勢いも止まらず、またも50台をヒットさせ4匹目を両手に収める。ここまでアタリが出るとは誰も期待していなかったこと。6匹中4匹はTadashiくんの釣果だが、この前半戦の釣況は理想的といえよう。

 Noboruくんの★HERA-BUNA★ Tadashiくん アタリペースは完璧

 やっぱり眠くなってきてしまった。エサ換えをサボっているので、1番竿のエビはもうなくなっていることだろう。TadashiくんとNoboruくんがウキ釣りを始める後ろで私はテントで休息に入る。その前に、頻繁な打ち返しを要する生エサをやめ、袋仕掛けに交換。ここからはダンゴエサで長時間待てる釣りをすることにした。ダンゴの配合は糠に鳩のエサ+「スーパー1スペシャル」で食わせに乾燥イモヨウカンと乾燥コーン。ダンゴは大きめに作ってこれまでと同じく7メートルほど軽く投げ込み、いつまた流れてくるか知れない島対策で、ラインを緩めて垂らしておく。

 それにしてもテントの中は暑い。外で寝たほうが少しは楽だが、それでは落ち着けないし、また肌の弱い私は草や虫にやられてしまう恐れもある。シャツを脱ぎ、冷感スプレーと保冷材で体を冷やしながらなんとかテント内で眠りについた。しかし少々危なかったかもしれない、今思えば熱中症になりかねない。しかもその状態でかなり熟睡してしまったので、周りには心配をかけてしまったようだ・・。


 思っていたより長い時間眠ってしまった。日は昇りきり、昨日メールをくれていた伊藤君がいつのまにか私の隣で竿を出している。灼熱のテントでグッタリしている間に、Tadashiくんは1尾追釣し、Noboruくんはプロの腕を発揮して、ウグイ ★UGUI★ をゲットしたらしい。私も新しいダンゴを作ってエサ換えをし、暑さの山を越えてからのことを考える。しばらくはあまり期待できそうにないだろう。4人かたまってテントの影で日差しを避け、携帯電話で鯉釣りの番組を観ながら過ごす。草の中から聞こえてくるバッタの乾いた声が、暑さを助長させているようだ。竿先は一点を見つめたまま、動く気配がない。

 15時を回った頃、弱い風が出始めた。空気が変わってくれたことに癒されるも、まだ気だるさが抜けず、それぞれ昼寝に入ったり、ただ空を眺めたりするだけ。その間、伊藤君がボイリーでマブナを釣ったりもしたが、釣況的に静寂しているのは変わらず、いつも頻繁に反応しているTadashiくんのバイトアラームも、ここしばらく聞いていない。

 伊藤君もボイリーでフナを・・ 軍艦島。司令官が乗っている(鵜)

 空が暗くなりはじめた。テントで熟睡して起きるのが遅くなってしまったので、後半戦はあっという間に終盤へと差し掛かる。Tadashiくんの隣には、いつのまにか中学生2人組みが入釣しており、話しかけてみるとなかなか礼儀正しい野球少年だった。釣り初心者の彼らが、茨戸川で初めて釣った魚となるフナに歓喜する様子に、こちらも昔の釣りを思い出してつい嬉しくなってしまった。野球少年が納竿すると、伊藤君も今日の釣りを諦めて早々と撤収。夜にかけての期待を捨てられない私とTadashiくん兄弟は、大まかな片付けと同時に打ち返しの準備をして続行する。その際にもう一度生エサに戻してみようかとも思ったが、リグボックスを片付けてしまったことと、作り置いたダンゴがまだ残っているので、このまま袋仕掛けを使い続けることにした。

 虫除けを兼ねた炭火を囲んでの談笑。昨夜よりも周囲が静かに感じられるのは、魚の活性がまだ戻っていないからなのだろうか。潮はおとなしく、水の動きに勢いが付かずにあるが、日中に比べれば良くなっている。終了時間を間際にした20時30分、Noboruくんが使うレトロなスピニングリールが、味のある音で変化を伝えてくれた。「よしっ来たぁ!」 待望のアタリに涼んだ空気が再び沸騰する。Noboruくんに初めて鯉のヒットが来た。30台の子鯉だが、このようなアタリが最も心躍る瞬間のひとつ。連続アタリも出て、80台も出て、更にメインメンバーでボウズの人がいなくなった。晩夏の釣りを十二分に満喫していると感じる。

 これからまた釣れ始めるとすれば、昨夜のようにまた夜明け近くになってしまうのだろう。明日は日曜日で休みだが、お盆の用事もあるし、夏休みの宿題を片付け切れていないNoboruくんもいる。釣り開始から24時間、Noboruくんのヒットが、今釣行のアガリ鯉となった。背後の暗い茂みで突然鳴き出したセミの声、ヘタしたらこれが聴き納め。この月はもう釣行予定を入れられないので、なんとなく納竿するのに憂いを抱いてしまう。虫かごの中に残っているエビや小魚は、またうちの水槽に追加することにしよう。昼夜逆転で涼しい夜風を楽しむ釣りになったが、この空気を涼しいと感じられるのもあと僅か。日中、熱々のテントで寝てしまったのもあって、少々夏バテ気味だが、数ヵ月後にはこの暑さを恋しく感じているはずだ。次回の釣りは残暑の中か、それとも秋色の中か・・。



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