鯉釣り日記2010 夏草

釣行日時 7月31日15時〜
8月1日17時
釣行場所・ポイント名 篠津湖
  瑞々しく葉を揃えたサンショウの木。それを好むアゲハチョウは年二世代型で、春に飛び立った蝶の子供が、雄々しい夏型の姿で蛹の殻をやぶった。しかし彼らの羽によく似合う日照りは少なく、蒸し暑いだけの湿った空気が乾かない。7月と8月をまたいだこの週末もまた然り。

 前回釣行から2週間。川崎の高橋さんは内地に戻り、SASAYANは自作センサーの研究に勤しんでいる。今回は伊藤君からのソウギョ挑戦の申し出があったことで、再び篠津湖への釣行を決めた。またジュンちゃんからも篠津へ向かうという連絡が入ったため、この3人でソウギョに挑む。先に出発したジュンちゃんがベースキャンプを作り、私は午後から伊藤君と待ち合わせ、一緒に向かうことになった。

 14時、国道沿いのコンビニ前で伊藤君と合流。青空に多少雲が被るような天候で、いまのところは晴れている。しかし今後の予報もやはり芳しいものではない。この土曜日はなんとか持ちそうであるが、深夜から明日にかけては雨が心配されている。

 伊藤君の前を先行しながら田園風景の中を走っていると、木や草が大きく揺さぶられていることに気づいた。札幌よりも風が強く、その勢いは前回釣行時のものより上回っている。草針のセットには苦労させられそうだ。

 いつものパーキングに到着すると、この前と同じ場所にテントが立っているのが見える。今回もここをベースキャンプとして楽しい時間を過ごすことになるのだろう。風で飛ばされそうになる帽子を押えながら、ジュンちゃんと2匹の釣り猫姉妹に挨拶をして、共に篠津湖の水面を眺めた。まずは一杯と、ジュンちゃんに缶ビールをいただいて開始前の乾杯を挙げる。そう、時間はたっぷりある。ゆっくりじっくりと、準備を進めていこう。
 

 前回は高橋さんからお借りしたカスタムセンサーによって、いつものスペースで竿を出してもベースキャンプまで電波を送ってアタリを取ることができたのだが、今回はそれができない。私のセンサーでも受信できる距離に竿を置かねばならないので、いつもよりもキャンプ寄りのヤナギの間に竿を出すことにした。伊藤君もジュンちゃんからセンサーを借りて釣り場を決め、ジュンちゃんは前と同じようにボイリーを使うユーロタックル2本と、草針を使う鯉竿を1本を離れたところに出す。私の戦法は去年、一昨年から変わらず、竹棒に縛り付けた数本の寄せ葦のそばに草針を浮かせる方式であるが、草針がうまく浮いてくれなかったり、寄せ葦から離れてしまったりと、風が強いことでそのセットがなかなかうまくいかない。特にこうしなくちゃいけないという決まりはないが、なんとなく草の浮き方や位置関係に拘ってしまい、そこを疎かにすると釣れるものも釣れなくなってしまう気がしてならないのだ。しまいにはピトンの角度や2本の竿の並び方まで気になってしまい、こんなことで竿出しに時間をかけてしまうのは悲しくも毎度のこと。気づけばもう夕刻。この風でルアーは厳しいだろうとナマズは諦め、ひとまずは火を熾して夕食を取ることにした。伊藤君は2本あるタックルすべて鯉用のダンゴを付けて投げており、ソウギョ狙いの草針は夕食の後にセットすると言いながらウロウロしている。どうやら彼が一番お腹をすかせているようだ。

 まだ空が明るいが、腹が減っては戦はできぬ  網の上が段々変な方向にいってしまっているが・・

 持ち寄った焼肉を平らげたら、網を鉄板に代えてジンギスカン。単独の釣行ではなかなか火を熾そうという気にはならず、コンビニ弁当などで済ませているが、仲間と一緒ならこのように美味しく楽しい宴になる。この頃は同行者の皆さんのお陰で、豪勢な食事ばかりしている気がする。これがメインにならないよう、食べた分は気合を入れて釣らなくては・・・。
 お腹をたっぷり満足させたあと、伊藤君のソウギョ仕掛けのセットを手伝い、ここからいよいよ本番に入る。とはいってもやることはやりつくしてしまっているので、何か変動が無い限りは魚次第ということになってしまうのだが・・。うまい具合にソウギョのスクールがこちらの岸に寄ってきてくれることを祈ってから、私と伊藤君は釣り場を離れた。

 ここから本番といいながら、気分的には遊ぶ気満々の私達は、土手を上がり、田園横のヤナギ並木へ踏み込んだ。目的は昆虫採集。本当は水銀灯などに寄って来る虫を採りたかったのだが、この風で蛾すら飛んでいない状態。そこで木の根元や樹液の染み出している部分に着目して虫を探すも、採れるのはカエルばかりであった。アマガエルなどが幹にへばり付いてじっとしている。最初はそれが面白くて虫かごに放り込んでいたのだが、あまりに採れすぎるのですぐに飽きてきてしまった。もっといろんな生きものに会える場所があるのではないか・・。そう思い立って、今度は車で移動。そんなこんなで篠津湖の周りの1時間程ドライブした後、何故か伊藤君が持っていた花火に火を着けて、少し風の強い夏の夜を楽しんだ。この時の私達の様子を見て、まさか釣りをしに来ていると思う人はいるまい・・(笑)自分達でも、釣り場から何キロも離れたところを虫網担いでフラついておきながら、「釣りをしています」とは言えなかっただろう。

 カエル大漁  夏らしく花火なんかしてみたり・・

 今夜も雨水からは逃れられずに明かすことになるのだろう。釣り場に帰ってきた頃、霧雨状の弱い雨が降り始め、開いていた携帯の画面に散る。遊びつかれた伊藤君はさっさとテントに潜り込み、私達が出かける前から車の中に入ったジュンちゃんも出てこない今、外には私一人となった。早めに眠ろうと思いつつも、もう少し外に居たいという気がして土手を登る。まだ湿り気のないアスファルトにしゃがみ込んでみたり、道路の上に点滅する↓マークをただ眺めていたりと、何もすることがないにもかかわらずテントにすんなり戻れないのはどうしてだろう。前回釣行の宴会中も、ジュンちゃんと高橋さんが談笑する中、気づけば一人テントを抜け出して雨の降りしきる外へ遊びに出ていた。自分がじっとしていられない性格であることを、初めて自覚する。よくこんな性格で、待ち伏せスタイルの釣りを趣味に選んだものだ・・いや、こんな性格だからなのかも・・。

 日付が変わったのを携帯の画面で確認した。雨は強まらずに降り続け、いいかげん帽子が湿ってきたのでテントに入ることにする。ジュンちゃんからお借りしたエアベッドにシュラフを敷いて寝心地を整え、ランプの明かりを切った。センサーのバッテリーはここのところ2回の釣行で使い続けているが、朝までは持ってくれるはず。今回はキャンプから竿までの距離も近いし、同行者2人とも静かに寝静まったままなので、私も安心して寝付くことが出来た。

 午前4時、目覚ましの音よりも先に、強まった風がテント上のパラソルを揺らす音で目が覚めてしまった。そして次に気づいたのは肌に伝わる気持ちの悪い感触。あぁ・・・マジでか。芝となっている地面から水が染み出し、テントの真下で水溜りになっている。当然テント生地を抜けて寝袋のなどに染みてきてしまっているわけで、酷い寝起きになってしまった。とりあえずはありったけのタオルで水分を吸い取り、床にシートを敷いてみたが、これで誤魔化しきれる状態ではなさそうだ。エアベッドのお陰で寝袋全体が濡れるという最悪の事態は免れているので、なんとか二度寝できそうではあるが・・。

 外に人の気配を感じて、伊藤君が起きてきたことがわかった。早速この水溜り事件のグチでも溢してやろうと靴を履き、二人で宴会用のテントに入り込む。昨日残しておいたおにぎりを頬張って朝の空腹を満たしながら、共に寝惚けた口調で話し合い、未だ誰にも来ていないセンサー受信を待ち望んだ。まだ少し眠気が残っているので、少し話してから二度寝することに決めたが、その前にエサのチェックもしておくことにする。風が増していることによって、もう草針を水面に浮かせるのは危険だ。センサークリップを外して少しだけラインを出し、水気を吸って自身が重みを増した食わせ葦を、これまでよりも少し沈める形にする。見た限り食わせ、寄せ葦ともに異常はなく、ソウギョが来た形跡は残されていない。もう夜は明けてしまったし、チャンスは減ってくると思いながらも、万全の状態をとって軽く湿った寝袋に戻った。

 午前7時、伊藤君に呼ばれて飛び起きた。

 「掛かってる!糸出てる!」

 受信機からは一切音は聞こえてきていない。

 「センサーのスイッチも入ってる!」

 またこのパターン!? グチャグチャの髪に帽子をテキトウに乗せて竿へと走る。確かに、前回のようにヒットしながらもセンサーが入らないという特殊な状態ではなく、クリップも外れてラインも引き出されていた。なぜ鳴らなかったんだ?竿を持った感じ、前回の84よりも大きそうだ。適度にドラグを閉めて、あらがう魚に応戦すると、更に尾鰭を扇いで力強く潜られる。その時に現れた水面の歪みも大きい。90超えを確信するなり緊張を感じ、スッポ抜けだけは止めてくれと祈りながら竿を握る。

 粘り強い抵抗はないものの、これまでのソウギョではあまり無かった、首を振って針を外そうとする動作がしつこく、見るといつも以上に竿の穂先が暴れていた。もし浅掛りであれば、当然その首振りで針を飛ばされてしまいかねず、そればかりが心配で仕方ないのだが、前回のソウギョに比べれば、水面から頭を出した後の抵抗が大人しめな事で救われた。幾度か空気を吸わせた後に、伊藤君が構えるタモが魚を捕らえた。網の中に納まったその姿は、自己記録更新と見ていいようだ。興奮で弾んだ息を整えながら、タモに魚を入れたまま検寸台のあるベースキャンプへ運ぶ。



自己記録を確信


メータージャスト。初めてメーターの魚と対峙した


感無量


検量したところ、重さは10.2キロ

 鯉とは違う体形に検寸板当てに苦労したが、尾鰭の一番長い部分の先端が100を指した。メータージャスト、ジュンちゃんに検量してもらったところ重量は10.2キロで、去年の自己記録より10センチの更新。そして、ギリギリではあるものの、初めて三桁台の魚を手にすることができたことに感慨無量。

 前から見ると丸く、横から見ると細長い顔  リリース

 ずいぶんと明るい時間に食ってきてくれたなと思い時計を見ると、時刻は午前7時過ぎであった。雨が降り、前回以上に増水していることと、人や車の少なさが幸を奏したのだろう。仕掛けの再セットの際に、寄せ葦の状態を確認してみると、思いのほかほとんど口を付けられた形跡がなかった。見事に食わせを選んで食べてくれたらしい。午前4時に一度起きた時、仕掛けを少し沈め気味にしたことでアピールが効いたのか、それともただの偶然か・・。

 宴会用テントにて、再び炭を熾しつつ缶ビールで祝杯をいただいた。朝食は焼そばで、具材として網やカゴでとったスジエビを入れたエビソバ?。)鯉釣りのエサとしてしか考えていなかったスジエビだが、コンガリ焼くとかなり美味しく、好んで食べる鯉の気持ちがよくわかる気がする。焼くなり揚げるなりしてお摘みにするには最適だろう。皆空腹だったために箸が進み、見る見るうちに鉄板の上が空いてゆく中、もう少しで全て食べきるというところで口に運ぶ手が止まった。私のテントの方から聞こえてきたノイズ。何故かまた受信し切れていないようだが、間違いなく私のセンサーが反応している。

 時刻は午前9時。あると思っていなかった二度目のアタリ。さっきのと比べると、水面を荒らすその音は大きかったものの、長さ重量ともにかなり落ちる。ファイトも2分ほどで終わってしまったが、もっとも、これ以上のサイズアップなどおこがましい事は考えていないし、一度の釣行で2匹のソウギョを捕らえたことが最高に嬉しい。サイズは85センチで、吻端から背中にかけての丸みが大きいのが特徴的な一尾だった。

 2時間後の2匹目  リリース

 基本夜釣り中心のソウギョがこんな時間に連続で掛かってくるとは。今日なら時間に関係なく続いてのヒットを見込めるのではないだろうか。私はもう十分すぎる程なので、初挑戦の伊藤君や、前回惜しくも逃しているジュンちゃんにも釣果があってくれれば・・。残りのエビソバを完食してから続いてドライカレーを作り、腹が満ちるまで朝食を楽しんだ。ある程度日が高くなってからは風がおさまり始め、雨も降ったり止んだりを繰り返しながらも強くなることはなく、むしろ弱まり始めている。予報では午後から明日にかけて天気は落ち着いてくるようで、少しだが太陽が見える時間帯もあった。ヒルガオの花が映える。

ナマズ釣りをする伊藤君  夏の新篠津によく似合うヒルガオ

 場合によっては朝のうちに撤収することも考えていたのだが、早くも正午を知らせるサイレンとメロディが流れ始めた。昨日から何かしら食べてばかりいるが、昼になったと知れば昼食を取りたくなる。ナマズ釣りのロッドを置いて近くのスーパーへ買出しへ行き、ホタテとステーキを購入した。なんとなく豪華な(そうでもない安物)その食事の後、伊藤君は昨日の開始時に作り置いていたダンゴを使い、鯉狙いの釣りを始める。するとその投入直後、ルアーではなかなか釣ることが出来なかったナマズが吸い込み仕掛けにヒットしてしまってテンションが上昇。ナマズを見るのが初めてというジュンちゃんと、ナマズを見るたびにおいしそうと思ってしまう私からの希望で、そのナマズを貰い、捌いて、昼食の時の残りの炭火で焼いて食べてみることにした。皆ナマズを食べるのは初めてのこと。思ったとおりの綺麗で肉厚な白身に火を通し、タレを付けて食べてみるとなかなかの美味だった。若干の川魚らしい匂いはあるものの、それほど気にならず、肉はウナギよりも歯ごたえとボリュームがある感じだった。確かに不味いという話も聞いたことはないし、やってみるものだ・・。

伊藤君が吸い込み仕掛けでナマズゲット  そのナマズを食べてみようと宴会テントで・・・

 ナマズの調理中、丁度よく遊びに現れた私の高校時代の友人2人も、見た目かなりゲテモノなこの焼ナマズを食べさせられるハメになっていた。かなり抵抗を持っていたその2人だが、感想は「うまい」とのこと。それはよかった。これぞキャッチ&イート。

 次のナマズを釣ろうと、同じようにダンゴを再投入する伊藤君。いきなり釣れてしまったナマズに気を良くして、鯉もソウギョもそっちのけになってしまったようだ。

 ここからは友人達も含めて5人で談話を取っていたのだが、残念なことにその高校同志関係で突然の急用が入ってしまい、私も含めて急遽札幌へ戻らなくてはいけないことになってしまった。しかしかなり遊んでいたので時間も時間。予報通りに雨も止み、濡れてしまったテントを片付けて撤収するにはよいタイミングだろう。雨水の滴る竿をタオルで拭く。


 唐突に終了が決まってしまい、それがかなり予想外ではあるが、今回の釣りの内容は私にとって記念に残せるものとなった。初のメーター、思わぬ2匹目、楽しい釣り談義に食事。最高に良い釣りをさせてくれた夏。雨が多い、冷夏、蒸し暑いばかり、セミが鳴かない・・。毎年のように、せっかくの夏なのに思わしくないと文句ばかり垂れているが、良い思い出は残り、しっかりと楽しんでいる。やっぱり私は夏が好きだ。次の釣りの時は立秋を迎えているだろう。お盆休みか、その次か。さぁ、晩夏を満喫しよう。



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