鯉釣り日記2010 三度目の正直

釣行日時 4月17日 釣行場所・ポイント名 望月寒川
 全国的に不安定な天候に見舞われているこの4月。ここ1週間も、雪やら強風やらといった好ましくない予報が流れていたが、今週末の天気はある程度落ち着いてくれているようだ。都合の良いことに、釣りに使う時間を十分に取れる土曜日の天気予報には晴れマークがついている。日曜日は多少の崩れがあるようで雨も降るらしいが、何れにしても予定が入っており、釣行しても短時間で切り上げなければならない。今回はできるだけ時間を使って、小さなポイントをじっくり攻めたいと目論んでいるため、余裕のある土曜日に天気が落ち着き、暖かくなってくれるなら有難いことだ。

 今回のテーマは、ひとり静かに充実した釣りを遂行すること。前回は楽しく賑やかな釣りをしながら終日を過ごしたが、それとは対照的に、忍び足でポイントに入り、こっそりとエサを入れ、鯉の警戒心に本気で対抗する。今回はそんなシチュエーションの釣りをしたい。

 午前9時、到着したのは月寒川、望月寒川合流点。06年度より幾度か挑戦したことのあるフィールドだが、今回入るのは3年ぶりとなる。去年秋に様子だけ見に来たことがあり、その時は、合流点で鯉が溜まって、エサを探しているのを見ることができた。しかし、フィールドの狭さ、浅さ、透明度から、警戒心はかなり高く、あっという間に居なくなってしまうのは、06年に初めて訪れた時から相変わらずだった。

 車を止め、偏光グラスだけを持って土手を降りてみる。この川の鯉はいつでも同じ場所にいるというわけではなく、居る時にしかいないし、動かない日は回ってもこない。今日はどのようなコンディションなのだろうか。この時期にここで釣りを試みることも初めてなので、しばらく作戦を考える時間が必要になりそうだ。去年秋に見に来たときのように、3年前に入釣した合流点の釣り場(月寒川側右岸)で鯉を確認することができれば、すぐにでも竿を出したかったのだが、今日は魚影が見られない。タックルはライトにまとめてきているので、多少の移動や担ぎ込みはできる。良さそうな場所を探してみよう。

 以前よりも岸辺の景色が殺風景に感じるのは、単に冬枯れのためだけではないようだ。対岸の月寒川左岸、望月寒川右岸側の木が広範囲に刈られてしまっていた。かなり寂しい気はするが、入釣はしやすい。背の高い葦やイタドリなどの植物もまだ生えていないので、どこにでも入ることはできる。問題は魚・・。ウグイらしきライズは見られるが、鯉が現れてくれない。車を止めている東米里橋から月寒川をしばらく眺めたが、全体的な活性は望月寒川のほうが良さそうだ。米里十号橋へ移動し、同じように望月寒川を覗く。すると、ここでようやく60センチほどの鯉の摂餌行動を見ることができた。やはり今日は望月寒か・・。続いて米里十号橋から望月寒川右岸を上流へ進んでみる。06年度はこのあたりにもかなり鯉が溜まっていたのを確認してるのだが・・。しかし、今日は鯉の姿を見ることはできない。再び下流へ戻り、月寒川合流点へ向けてゆっくり望月寒川左岸を下ってみることにしよう。場所探しをしているうちに、すでに時刻は11時を回っていた。

 午前11時30分頃、米里十号橋下流右岸を歩いているところで鯉のスクールを発見。正確には、スクールがいた痕跡を発見した。数匹の鯉たちは、私が偏光グラスで姿を見つける前にこちらに気づいて、煙幕をあげて消えていった。かなり距離を置きながら、ゆっくり歩いていたつもりなのだが、やはり警戒心は創成川などよりも強い。そしてその更に下流、月寒川合流の少し上でも幾匹かの鯉を見ることができた。今日はこの辺りで間違いないようだが、さて、どうやって釣ろうか・・。望月寒川は月寒川よりも水量があり、流れも強い。その分、魚や水生生物の気配も濃いが、流れてくるゴミ、数メートルの川幅の真ん中に立ちはだかる障害物、流れの中の見えない障害物、考慮しておかなくてはならないことも色々とある。

 最終的に今回の釣り場として選んだのは、望月寒川右岸。月寒川との合流点の数十メートル上流の地点になる。以前までは藪の中で入ることすら考えていなかった場所だが、冬枯れと、多くの木が刈られたことで簡単に入ることができた。この右岸に入る決め手になったのは、鯉の姿をみたことと、岸際の地形。望月寒川の左岸はブロックに囲まれ、直線的に水が流れているのに対し、右岸は木が生えていたこともあって、やわらかい地質で水際のラインにごく小さな入り江状の凹凸がある。この凹凸は流れに変化を与えており、強い流れの流心をかわすのに使え、また水に淀みができて、そこで休む鯉が現れるという期待ができる。ただし、水位の多い時にしかこの地形は使えない。足元はかなり浅く、それよりも奥はすぐ流心となっている。もちろん流れの中にも鯉はいるが、流れてくるゴミの量は落としオモリなどでかわせるものではない。釣り場選びにかなり時間を使ってしまったので、水位が変わらないうちに始めるとしよう・・。

オモリ部(管付きオモリ固定式)
オモリ:小田原20号(捨てオモリ)
サキ糸:ライン直結またはPE8号(三折り)

仕掛け(1本針)
ハリス:鯉ハリス6号(20〜25センチ)スプリットショット
針:チヌ8号

エサ
マルキュー食わせコーン

 今回は低水温と高い警戒心に備えて、食わせやすいコーンを1本針で使用。ダンゴやPVAは使わず、寄せエサはカーネルコーンを少量撒くだけとする。障害物の多いこのフィールドでは根掛りが怖いので、いざとなったら外しやすい管付きのオモリを使い、アルミ線で捨てオモリにしておいた。ハリスは長めにとっているが、安定させるためにガン玉を打っている。

 1番竿、2番竿ともに投入ラインはほぼ同じで、岸際の淀みに仕掛けを置く。ゴロゴロとした石が点在しているが、その間の小さなフラットに仕掛けを振り込んで、落しオモリでラインを底に這わせる。流心をかわしているのでゴミが引っ掛かる心配はないが、ほとんど足元で、水深は60センチほど。ただでさえ鯉の警戒心が強いので、投入後は下手に竿に近づくことはできない。仕掛けの周りに少しだけカーネルコーンを撒き、離れた場所でアタリを待つ。

望月寒川(左)と月寒川(右) 釣り場を決めたのは望月寒川

 気温は8度前後。風はあるが南寄りのもので、弱く、あまり寒くは感じない。水温を計るのを忘れてしまったが、そう冷たくはないようで、カメが元気よく泳いでいた。地面には緑も姿を見せ、フキノトウが生えている。雲ってはいるが、雨は降らないようだし、落ち着いてアタリを待つことができそうだ。

 投入から15分後、思ったよりも早く反応をもらうことができた。1番竿の穂先が一瞬押さえ込まれる。しかし魚は乗らず、センサークリップを揺らしただけで終わってしまった。エサを取られてしまっただろうか。しかしまだポイントに魚がいるかもしれないので、竿に近づくのはやめておこう。まだ居るとすれば、隣の2番竿にアタってくるかもしれない・・。それを期待しながら昼食をとり、その後一度仕掛けを回収してみることにする。

 最初の反応から30分後の午後1時、思った通りに2番竿にアタリ。今度は竿先が下流へ向き、センサーが入ると同時にラインが出された。すぐさま竿を立て、ドラグを締めると、ヒットした魚が水面を荒らしながら流心へ突っ込む。そしてそのまま、流れに乗って下流へ走ってゆく。数十メートル下流では月寒川と合流しているので、その前には止めなくてはならない。スプールは回転し続けているが、ドラグテンションをそのままに、こちらもハンドルをまわす。やはり流れがある分、引きが強く感じる。スプールに手を添えて回転を調整しながら、魚をこちらに向かせ少しずつ寄せに入るが、魚はまた下流へ走り始めて、こちら岸にある木のオーバーハングへ入ろうとしていた。なかなか楽しませてくれる。だが次の瞬間、突然パンっと音を立ててラインが弾けてしまった。まさかのラインブレイク・・・・。全く抵抗のなくなったラインを回収すると、見事にズッパリ切られていた。障害物に思い切りスレたか・・。

 切れたラインの端を掴み、項垂れながらタックルボックスのある待ち場に戻る。傷付いた部分を取り除き、新しい仕掛けのスイベルにしっかり締め込んだ。ついでに1番竿も回収し、こちらも仕掛けももう一度結びなおしてから新しいコーンを付ける。鯉の食い気は悪くないようで、寄せのカーネルコーンもほとんど食われてしまったようだ。最初よりも少し多目にコーンを撒き、一投目と同じポイントに投入した仕掛けを底に落ち着かせて竿を離れた。今の騒ぎで、この辺の鯉は散ってしまっただろうか。またチャンスが来ることを願う。

 そして午後2時少し前。再び2番竿が絞り込まれた。さっきと同じように下流へ走る2度目の相手。一瞬、金色の背中を見せてこちらを向いたが、首を振りながら流れに乗った。サイズは70センチほどだろうか。もっと走らせてやりたいところだが、川が狭いのでそれができない。竿を立てると、魚もさっきと同じように、数十メートル下流のこちら岸に寄り、また更に走り続ける。そしてまた、さっきと同じようにオーバーハングの下へ潜ろうと暴れ、ラインを唸らせた。ラインブレイクしたのはこのあたりだったが、今度はそこから魚を出すことができ、距離が縮まる。ここまで来たら大丈夫だろう。岸際の凹凸による淀みに魚を泳がせ、流れに乗らないようにコントロール。しかし、魚のほうも粘り強く、最後の抵抗を見せた。あろうことか、再度大きく首を振り出したと思ったら、また流心に入られてしまい、その直後にラインが力を落とした。・・・あぁ、勘弁してくれ…。ラインはいつもよりもサイズを落とした6号だが、この糸で、この短い間に、こんなにあっけなく2度もラインブライクするなんて、さすがに考えていなかった。

 2番竿をもって、2度目の仕掛け交換をする。流れに対する抵抗や警戒心を誘発するのではと懸念して、ダブルラインなどにはしていなかったのだが、これからどうしようか・・。仕掛けを手にして悩みながら、タックルボックスの前に佇む。しばらく考え込んでいると、受信機からメロディが流れ出した。ファイト中にあれだけドタバタしたのにもかかわらず、1番竿のラインが下流へ向かってゆく。三度目の正直になるか・・。送信機のスイッチを切り、慎重にラインを回収してゆく。鯉はやはり1度目、2度目と同じようなルートで走っていった。ラインの先がオーバーハングへ向かうが、今度はその手前で止める。2度目のファイトと同じように、このまま淀みを通してこちらに寄せたいところだったが、魚は逆に対岸近くを泳ぎ出した。このあたりも流れの抵抗を大きく受けていて、こちらを向かせるのが大変だが、金色の背中はうねりながらも、少しずつ寄ってきてくれている。サイズは2度目の奴と同じくらいだろうか。それよりも少し小さいか・・。今度はラインもほとんど痛んでいないだろう。大きい魚ではないが、かなり緊張しながらタモを出す。
フッキングは最高で、水面から鯉の頭が出れば、あとは安心して寄せられた。これで糸を切って終わりという結末からは逃れられる。

一安心・・・太くて綺麗な三度目の正直) 70センチにはちょっと届いていなかった

 リリース後の投入時に、逃げてゆく60台のスクールを発見。この調子で回ってきてくれれば、まだチャンスは望める。悔しい思いをしながらも、アタリ一回あれば御の字と考えていた当初の予想よりも、魚の活性が良いようだ。なんとか1匹上げることができて安堵に浸っているところだが、その前の2度のラインブレイクは痛い。帰りまでにもう1匹くらい釣れてくれるとありがたいのだが・・。時刻は午後3時。今日は5時には切り上げる予定。このアタリのペースが維持されれば、2匹目を上げるのに、あとの2時間で十分なのだが、状況は変わってきている。それにあわせて作戦を変更、実行から鯉が寄り、ヒットに至るまでを考えると、2時間では少し短いかもしれない。


 水位が少しずつ下がってきているようだ。これまでのポイントはほとんど足元で、この水位ではもう浅すぎる。最後の打ち返しとして、いままでよりも少し奥のラインに打ち込んで、寄せコーンもそれに合わせて撒き直す。しかしもう岸際の淀みは使えず、仕掛けは流れの中に入ってしまっている。見る見るうちにラインにゴミが引っ掛かり、更に水の抵抗を受けて下流に向かって弧を描きはじめる。そのうち、もっと大きなゴミが流れてきて引っ掛かってしまうことになるのだろう。ウグイや鯉のライズは絶えず見られるが、なんとなく期待感は薄れてゆく。それからの時間の流れは、いつもとは逆にとても早く感じられた。

 午後5時。まぁ、今日は充実した釣りができただろう。ラインブレイクはかなり気にかかるが、考えていたテーマに添った釣行になったと思う。センサーの電源は切らず、荷物をまとめて車へと運ぶ。次回もまたここに来ようか、それとも創成に戻るか、また違う釣り場を探すか・・。というか、次の休日はどのような天候になるのだろう。場所もそれ次第だ。竿を縮め、最後まで残した荷物を持って土手を上がる。今回も楽しかった。



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