釣り日記2009 冷夏の終わり

釣行日 8月29日午後6時〜30日午後5時 場所 石狩川公園
時間 天気 晴れ〜くもり


 私好みの夏らしい夜釣りというものをほとんどせずに、この夏も過ぎていった。サンショウの木に集うアゲハの幼虫達の中には、この時期になってもまだ、青虫の姿である終令を迎えていない固体もある。それだけこの夏が、悪い意味で過ごし難いものだったのだろう。肌寒い風がオータムステージの始まりを告げている。

 29日、日が沈み行くころ。初夏の釣りを行った石狩川公園にて今回の釣り場を探す。下見の釣行を含めて2度、この沼に訪えど、まだここの鯉を拝んでいない。今回は小型でも、鯉の姿を見られることを願い、底探り用の竿を取り出した。

 前回のここでの釣りで竿を出した岬の様子を見てから、その他に竿を出せそうなスペースを回ってみる。下見釣りを行った流れ込み付近に目をつけていたのだが、沼に合流している水路からの流水はなく、水路の中では完全に水が死んでいる。水辺には背の高い植物が聳え、一応竿を出せるスペースとそれに続く獣道のようなものがあるのだが、少々やりにくさを否めない。それに、この場所では水辺から車を置ける場所まで、若干の距離がある。センサーがあれば問題ないのだが、今回はセンサー無しの捨て竿も2本出そうと思っているので、ここでやるなら、テントを立てて竿のそばで釣りがしたい。しかしこの草では、それは難しそうだ。もう暗くなるので、草刈りをしている時間も無いし、スペースに続く獣道には、なにやら人○らしき汚物が・・・(汗)あぁ、絶対踏む。この場所は却下しよう。

 しばらく底探りを続けるが、なかなか良さそうな場所は見つからない。やはり一番可能性を見込めるのは岬付近のようだ。地元の人達からは、この岬付近は鯉を釣るに芳しくないという声がよく聞こえてくる。あまり良い釣果が出ていないそうだ。やはり岬よりも、流れ込みとその奥のワンド。そしてCの字型をしているこの沼の先端となる部分が良いとされる 《 もう片方の先端は広く、深い藪と葦に囲まれたワンドとなり、一部で石狩川と合流している。入釣できるかは不明 》 しかし私が探った範囲では、地形の変化が大きく、ポイントになりやすそうな場所があるのは岬。ここは風をよく通し、水に動きもつく。もう暗くなってきてしまった。今回もここで釣りをしよう。

 強い西向きの風は岬の右岸を沖へ向かって撫でつけるように吹き、水はそれに従って流れ、数十メートル先の対岸にぶつかっている。岬の左岸では地形上、風はあまり当たらず、水面に大きな変化はない。岬先端(左寄り)に竿を出し、1番竿はカケアガリ下に。2番竿は、風が当たって水面が揺れている所と、岬で風が遮られ、静かな所の境目に打った。ここはカケアガリの上に位置していて、水深は100センチと浅い。カケアガリの下では240〜300センチほどの水深になっていて、私が探った範囲では一番深い。どこにも水草らしい水草は生えず、底には柳の枯葉が沈殿しているようだ。

オモリ部 《完全固定式 中通し》
ヒシ型25号

仕掛け 《袋仕掛け》
針:チヌ10号 ハリス:巨鯉ハリス8号
針:チヌ8号 ハリス:鯉ハリス6号

ダンゴエサ

「どすこい」+「龍王」+カーネルコーン

食わせエサ

乾燥コーン+生コーン(ピュアホワイト)

 まずはチヌ8号の袋仕掛けでスタート。ウグイ、マブナ、ヘラブナなどのエサ盗りが多いので、ダンゴは大きめの粒を多く配合している。変に魚を寄せてしまわぬよう、エサ換えのペースは3時間置きと遅めにした。捨て竿も2本出し、こちらは食わせに本命竿と同じく乾燥コーン+生コーン。それをPVAにカーネルコーンを入れたものと一緒に投げ込む。こちらは岬の左岸側手前と奥 (水深200センチほど)に打ち込んでおいた。

 センサーをセットした頃には暗くなり、月が明るく浮かんでいる。ここでの初鯉を、ゲットすることはできるだろうか。


 午後8時ごろ、鈴の音に呼ばれて車を飛び出した。竿鈴を使っている捨て竿にアタリがあったようだ。懐中電灯で竿を照らすが、竿に動きは見られない。鈴音は左の竿のもののようだが、車から出た時にはすでに止まっていた。ラインがふけているわけでもなく、再び穂先が引き込まれるわけでもなく。ウグイだったのだろうか。しばらく竿の前にしゃがみ込み、反応を待ってみたが竿は静まったまま。車に戻ろうと立ち上がったとき、二度目の鈴を聞くことができた。しかしラインは出されず、竿先が小突かれているだけ。竿を持ってみるが、ヒットしている気配はなく、針は空の状態で帰ってきた。

 この夜は時間の流れがとても遅く感じた。単独の夜釣りではどうしても暇をもてあましてしまう。肌寒いので車の中で読書や友人とのメールで時間を潰すが、段々と窮屈になってきてしまった。ナマズ釣りにでも出てみようか・・。

 この沼は全体的に浅く、ルアーを投げられる範囲では水深90センチほどのところが多い。足元から深い篠津湖と違い、トップウォーターのゲームでは魚へのアピールが十分に出来て面白いかもしれない。夜中に岸辺に近づけないソウギョ釣りとは違い、いくらでも外で遊ぶことはできる。

 だが、今日はなんとなく外をうろつく気がしない。ナマズのタックルを出しても、多分すぐに帰ってくることになるだろう。今回はナマズ釣りは辞め、少しだけ散歩をするだけにしよう・・。


 懐中電灯を手に、沼のC字の内側となる柳の林を散策する。公園というだけあって足場はよく、歩きやすいのだが、夜となると雰囲気が全然違うものだ。ここに生えている柳の木はどれも歪な形をしていて、公園化されていなければ、夜は「怪しの森」といったような感じだ。低い位置に太い枝を張る木々は、見ていると忌まわしいものを連想してしまう。ここはかつて、首括りの名所となっていたと、何度か耳にしたというか、何かに書いてあったのを読んだことがあった。それはかなり前の話で、それを思い出したのはこの夜が明けてからだったのだが・・。普段、そういったものをあまり気にしないタイプの私であるが、この暗闇を出歩く気にならなかったのは、「何か」あるから・・・というのは少々、オカルト信者的な考え方だろうか。結局、散歩に出るもあまり歩かずに戻ってきてしまった。一度目のエサ換えをして、また車の中に戻る。寝袋を敷いたが一切眠れる気はせず、何も考えることなくセンサー受信と鈴の音を待つという時間を過ごした。

 午前0時、2度目のエサ換え。この投入から竿先を揺らすような反応が出始め、ジャミの多さを窺える。ダンゴの配合は大粒の物を多く入れているし、食わせエサは生のコーンと乾燥コーン。多少なら大丈夫だろう。このままほっとくことにして、私は車の中で寝袋に包まった。

 時折、車の外から物音が聞こえてきて驚かされる。今夜はぐっすり眠れないかもしれない。いつも夜釣りの時は、明け方近くまで起きて遊んでいることが多いのであるが、今回は寝たくても眠れないような気がして早めに床につくことにした。

 柳の木の真下に車を置いているので、枝の軋む音や実が落ちて天井に当たる音がよく聞こえてくる。しかし、木の生えていない出口側からも人が歩くような音や声のようなものが聞こえてくるので、なんだか落ち着かない。しまいには、「何がどうなったらこんな音が出るの?」と聞きたくなってしまうような奇怪な物音まで聞こえてきて、せっかく眠りに落ちたところでまた覚めてしまう。

 夜間はこの繰り返しで、グッスリ寝入ることができたのは明るくなってからだった。目を覚ましたのは午前9時ごろ。しばらくエサ換えをサボってしまったので、全ての仕掛けを回収した。

 捨て竿2本は食わせがしっかり残った状態で戻ってきたのだが、竿先に反応が出ていた本命竿のほうは生コーンがすっかりとなくなっていた。2番竿は乾燥コーンまで無くなってしまっている。さすがに9時間近くもほったらかしにしたのはマズかったか。捨て竿はPVAを着けてそのまま投入。本命竿は仕掛けのサイズをチヌ8号、鯉ハリス6号から、チヌ10号、巨鯉ハリス8号に交換。大きな針を使って食わせをたくさんつけて投入することにした。ダンゴの配合は少し変え、「龍王」+少量の麦茶で試してみる。


 朝食中から対岸で鯉の跳ねやモジリが多くみられるようになった。1本だけ対岸近くまで投げてみようかと思ったが、向こうにはヘラ釣りの人がいるので止めておく。しかし沼全体的に活性はいいようで、モジリ、泡付けがかなり上がっている。夕方までには是が非でもアタリを取りたいのだが・・・・。

 正午ごろ、以前茨戸での釣行でお世話になったT橋さんが訪れ、私の竿の真後ろにあたる岬の右側に竿を出された。

 T橋さんは私とは逆にかなり強めのアピールができるダンゴを使用している。これまで私は、ジャミの猛攻と鯉の警戒心の誘発を恐れて弱めのダンゴを使っていたのだが、大物狙いというよりまず1匹を釣ることが重要な今回の釣り。私も少しアピール力を強めたダンゴを使ってみようか。

 T橋さんに早速アタリがあり、30センチほどの鯉がヒットした。これを機に私もダンゴの配合を変更。「龍王」+「どすこい」+「GTS」+「さなぎ粉」+「新べらグルテン」それにカーネルコーンの組み合わせ。ちょうど1番竿の30メートルほど手前で、広範囲に泡付けが上がるようになっていたので、そのポイントにキャスト。2番竿は変わらずにカケアガリの上に。

 続いて捨て竿のエサ変えへ。このエサ変えに立つ少し前に、左の捨て竿のラインが大きくフケていたのだが、針に魚の気配はなかった。この捨て竿は、岸から30メートルほどのところに投げていたのだが、糸フケを回収したときには仕掛けは足元に落ちていた。これだけ走られているということは、間違いなく鯉だろう。この左捨て竿はエサも仕掛けも投入点も変えずに打ち返した。右の竿は生エサを使ってみることにする。カゴを仕掛けてみたところ、モツゴやウグイなどが大漁だったので、2本針仕掛けにウグイを着けて投入してみる。ウグイだけではアピール力に欠けるので、ペレット入りPVAを添付しておいた。

岬の右側にT橋さんが入った。 2本の捨て竿のうち1本は生エサに

 ポイントでの泡付けは増え続け、いつアタリがあってもおかしくないような状態に持ち込むことができた。私の1番竿の投入点でも広範囲の泡付けとモジリが何度も見られる。談笑や、T橋さんからお借りしたトランペットで音出しの練習をして過ごしつつ、アタリを待つ。夜間と比べると驚くほどに時間の流れが早く感じる。時計を見るともう午後4時をまわっていた。

 T橋さんの釣り場に居座りながら、ふと自分の竿を見ると、1番竿が揺れているのを確認。そのまま食い込むか、それともフナやウグイのアタリなのか。小さな反応がしばらく続き、少し穂先が引き込まれたところでラインがふけた。竿を持ってみると魚の手ごたえ。かなり小さいが、鯉のようだ。サイズは40センチほど。その直後にT橋さんにもアタリがあり、同じくらいの鯉がヒット。これから夕マズメにかけて、まだ期待できそうだ。

40センチほどだが、ここでの初鯉だ。 T橋さんにも同じくらいのサイズがヒットした。

 とりあえず、この沼で初めて鯉を釣ることができた。あとはサイズアップを狙うのみ。

 アピール系のダンゴを使っているために小型の魚の寄りが早く、水面に現れる反応でそれがわかる。残り時間はあとわずか。あとは夕マズメのチャンスにかけるのみ。同じサイズでもいいから、また掛かってくれないだろうか。最後のエサ換えを済ませて、帰りの準備にとりかかる。

 日は暮れ始め、時刻は午後5時。魚は相変わらず寄っているが、アタリが出るペースは遅く理想的ではない。やはり針掛りしないような魚が多く寄りすぎ、鯉が入ってこれないのだろうか。次のアタリを待たずに終了時間を迎えた。

 まぁ、ボウズではなかったし、後半戦は十分に楽しめた。水面を染める綺麗な夕焼けに赤トンボがよく似合う。釣れたのは一匹で小型ではあるが、その光景を見ると、なんとなく充実した気分になった。自分で言えば言い訳がましいが、私の釣りは、釣るための技術の向上や結果よりも、他人から見ればやや抽象的でわかりにくい、哲学や美学などといった世界にあるようだ。というか、楽しめていれば何でもいい(笑)


 これで夏は終わり。シーズンオフはあっという間にやってくるだろう。

 この秋はどのような釣りになるだろうか・・・・