釣り日記2009 実釣取材

釣行日 8月12日午後5時〜
8月13日午前10時
場所 篠津湖
時間 天気 くもり〜雨


前回釣行を終えた月曜日。釣行記を書くキーボードを手にする前に、前日の釣行の要約を纏めたノートを読み返す。
 これまでの結果は2連続ボウズ。ただのボウズならまだしも、せっかくのヒットをバラしての坊主という一番悔やまれるパターンである。今は真夏場とはいえ、今シーズンのこの不調。自分には全くもって無意味なのはわかっているし、釣りをするにあたっては無い方がいいだろう。けれども、なんとなく焦るようなこの気持ちがどうしても湧き上がってきてしまう。

 今期の鯉釣りは9月からのオータムシーズンにかけ、夏が終わるまでは小休止しようか・・。最近は疲れていて、気分的にもあまり良くないのを感じている。このような状態で、特にこの時期の鯉釣りは楽しめないだろう。次回釣行はソウギョにしよう。ソウギョなら、もともとそんなに釣れない釣りであるし、ボウズでも悔しくない(笑)それにこの時期にしかできない釣りだ。それとも海とか、もっと別の釣りに行ってみようか・・。そのようなことを考えながら、釣行記に書く内容を要約したノートを持ち、パソコンに向かった。

 そんな中、突然の電話。電話をかけてこられたのは数年前にもお世話になっている北海道の総合釣り雑誌 つり人社「ノースアングラーズ」の方で、内容は篠津湖でのソウギョ釣りの取材。ちょうどよかった、次回はソウギョ釣りとしよう。次の休みである8月13日の前日の夕方からという約束で実釣取材は決まった。

 12日午後。この日は短時間のバイトであったために時間に余裕がある。取材は16時からとなっているのだが、その数十分前に到着してしまった。

 いつものパーキングエリアに入って車を止め、入釣場所の様子を確認。水位は前回ここに来たときよりもいくらか減っているようだが、少なくはない。風はかなり強く、水温は温かいようだ。

 一通りの場所見を終えてから、待ち合わせ場所となっている篠津湖の温泉施設「たっぷの湯」へと向かい、今回取材してくださる、つり人社のKさんと落ち合った。今回はソウギョをタモに入れることができるだろうか・・・。

 再びパーキングエリアに戻り、荷物を下ろす。まずは寄せエサの準備から始めよう。
 竹竿を2本出し、その先に結びつける葦を採取しにいく・・がここで初めて異変に気づいた。下見の時は気がつかなかったが、いつも葦を取っている場所の草が全て刈られているではないか・・。仕方がなく、別の草場で葦を探し、少々小振りながらもなんとか寄せエサ分の葦を採取。それをタコ糸で竹竿にくくりつけて、ポイントに設置して準備は完了。前々から、ソウギョに引っ張られて竹竿を取られてしまうということがあったので、今回は竹竿に紐とペグを取り付けてしっかりと固定しておいた。

 続いてタックルのセットに入る。ラインにセットしぱなしの鯉用オモリを外して草針を装着。前日、全ハリス遊動式の草針を作ったのだが、まだ試したことがないので心配事が多く、今回は雑誌の取材なので、初めて試みるやり方は避けたい。いつもどおりの草針を使うことにした。

 ハリスは鯉ハリス6号にチヌ8号3本針。やわらかい葦の葉を取り付け、寄せエサの葦に添うようにして浮かせる。これまでの様子はすべて、Kさんに簡単に説明しつつ、所々で写真撮影が入る。撮られてばかりで、自分の釣行記用の写真をほとんど撮っていないことに気づいたのは、すっかり暗くなってからだった・・・。

 今回はセット完了までに1時間を要した。この釣りでは竿立ての位置と角度で仕掛けを下ろすポイントが決まってしまう。寄せエサのすぐ近くに仕掛けを下ろすが、その寄せエサの「どの」位置に下ろせばいいのか、というところが迷いどころだ。寄せ葦の先端か、それとも横か、中か・・。どれが正解というのはないだろう。寄せ葦を見つけてどこから食うかはそのソウギョが決めること。葦を全て食べてしまうくらいに旺盛なソウギョなら然程問題ないが、食い飽きて、または警戒して途中でやめてしまう奴もいるだろう。そのような奴には、どこに仕掛けを置いておけばヒットの確率を稼げるのか。今回はその点においての葛藤が大きくなり、時間をかけて考えた結果、1番竿は寄せ葦の横、2番竿は先端に仕掛けを浮かせるようにセットすることにした。

 あとはソウギョが現れてくれることを願うのみ。ここからは運の勝負となる。
 セット完了後、岸際の草の食みあとなど、ソウギョの気配を探しに散策に出るが、沼周りの柳にはこれといった捕食の痕跡は見あたらない。途中排水口にて小魚が群れているのを見つけ、水槽で飼える魚ならばと、カゴを仕掛けてみることにした。一度釣り場に戻り、カゴとエサ、ナマズ釣りのルアータックルも用意。釣り場から少し離れた排水口まで歩き、カゴを仕掛けて、そのあとはKさんとともにナマズを狙ってルアーをキャスティングする。風が強く、キャスティング時にルアーが煽られ、なかなか思うようなポイントに打ち込むことができない。しかも私はキャスティングミスにより、お気に入りのルアーを水中のネットに引っ掛けて無くしてしまうというトラブルに見舞われ、Kさんから貸していただいたジッターバグで釣りを続行することになった。いつものようにゴロ石のあるラインを横から攻めようとするが、強い向風で舞ったラインが岸際の木に引っ掛かって釣りの邪魔をする。それに今日は魚の岸寄りが悪いのか、しばらくキャスティングを続けるもナマズのアタックはない。前回のようにソウギョが人の気配に警戒して逃げてゆくという光景も見られず、この夜の苦戦を暗示するかのようだった。

小魚採りの仕掛けカゴを設置、そのあとナマズ釣りへ・・ 葦を採取する草場が刈られていた・・・・・

 ナマズ釣りを諦めた私達は車に戻り、あとはソウギョのゴールデンタイムに備える。
 風は強弱を繰り返してなかなか安定しない。予報では明日には雨が降ってくるとのことで、午後7時をまわった今も、肌にポツポツと水滴を感じる。

 軽い夕食後、仕掛けの様子をチェックしに土手を降りるが、なんら異変はみられない。今は風が弱まり、ナスオモリ5号×2で十分安定しているようだ。だが、なんとなく仕掛けと寄せエサの位置関係が気に食わず、2本とも少し手直ししてから土手を登って待機場所に戻った。車に入るのが嫌だったので、夕食時からしばらく外で過ごしたが、風によって体感温度は低くなっている。夏の服装では少々厳しく、カバンに仕舞ってあった上着を羽織って肌寒さを凌ぐ。今年の夏はこのように、雨や寒さで夏らしく過ごした思い出が少ない。もう8月も中。9月に入ればあっという間に冬の気配が近づくのであろう。そう考えると、なんとなく寂しい季節だ。

 午後10時。ソウギョが食ってくるならこれからがゴールデンタイムとなる。車に入って雑誌を読んでいたのだが、風の強さは再び増し、少しだけ開放していた窓から高い風切音が聞こえてきた。そろそろ仕掛けの最終確認をしよう。風が強い状態で、仕掛けにどのような挙動が出るかも見ておきたい。弱目のLEDで水面近くを照らし、魚がいないことを確認してから、ライトを少しだけ強くして仕掛けの様子を見る。

 オモリはこの風の中でも、十分に仕掛けを安定させている。寄せエサにソウギョの痕跡が残っていることを期待したが、まだ一口も食われていないようだ。だがまだ夜は長い。チャンスはいつか訪れるだろう・・。このローテンションが、躍動に変わる瞬間が醍醐味だ。静かに待つとしよう。

車 内を照らしていたLEDの灯かりが少しずつ弱くなってゆく。次回の釣りのことを考えながら雑誌のページを無意味にめくり続け、もうかなりの時間が経っているように感じた。6月なら、すでに空が明るくなっているのではないだろうか。気がつけば天井には水滴の音。窓際の荷物が少し濡れていた。まだ来てくれないのか・・・・。ここまで眠らずに「その時」を待ち続けていたが、とうとう眠気を感じるようになっていた。ポイントのチェックはもう十分していているし、センサーのバッテリーは納竿時間までは持つだろう。灯かりを消して、寝袋に包まる。


 目を覚ましたのはすっかりと明るくなってからだった。雨は降り続け、タモ網は重く垂れ下がっている。結局、今回は来てくれなかったのか・・。時刻は午前6時をまわっていた。ここまでやって釣れなければ、あとは確率が薄れてゆくばかり。普段なら諦めているところだが、まだ可能性はゼロではないだろう。Kさんと相談して、もう少し粘ってみることにした。

 せっかくの実釣取材、どうせなら魚を手にしたい。食わせと寄せエサはしっかりと残っていたのでこのまま続けることにする。車に戻り、サンルーフを明けて車内に光を取り入れた。平日なので、釣り人の姿は地元のお爺さんがルアータックルを積んだトラックで土手を降りたのを最後に見ていない。このまま静かにしていれば、もしかしたら・・・

 しかし午前9時になってもセンサーの反応はなかった。窓の外ではいつのまにか草刈が始まり、釣り場の周りで数人が作業している。ドアを開けると、Kさんも車から降りてきたので、「ダメですね」と一言。「10時まで粘ってみるかい?」と言われたが、もう明るいし、草刈の作業が始まってからソウギョはここに寄りつかなくなっているだろう。さすがに諦めることにしよう。

 豪快なソウギョのファイトシーンを雑誌に載せてもらいたかったが、これでは仕方がない。まだ続けたいという気持ちを抑えて、納竿準備に入る。

 長靴を履いて水辺に立ちこみ、寄せ葦を結んでいる竹竿を回収した。1番竿用の寄せ葦は異常なし。しかし2番竿用の寄せ葦にはいくつか食みあとのついた葦が残っていた。これを見て悔しさが増した。


 寄せ葦の先端ではなく、中のほうに数枚、食いちぎられた葉があった。やはりチャンスはあったんだ・・。

 夜間の最終確認を思い出した。あのとき、食わせエサの位置と、寄せエサの葉の枚数が気になっていた。ダンゴの配合内容と同じく、食い気が浅い場合、多すぎる寄せの葉はヒット率を下げてしまう。最終確認のときに、葉の枚数を減らしておけば、ヒットにありつけたかもしれない。もしくは、食わせエサの位置を、寄せ葦の周囲ではなく、中に忍び込ませる形にしていれば・・。しかしこれをどう予測しよう。前もその前も、今回と同じやりかたで釣っているのだ。本当に悩まされる釣りだ。

 午前10時、実釣取材終了。こんなに明るくなるまでここに居たのは初めてだ。残念ながら魚の姿を見ることはできなかったが、北海道のソウギョ釣りの醍醐味の一部と難しさは食いちぎられた葦の葉が体現してくれたのではないだろうか。

 さて、次回はリベンジに来ようか。それとも息抜きもかねて、忘れ去られたコンテンツ「他魚釣行記」を更新しようか・・・。