鯉釣り日記2008 ひとりしずかに
 釣行日 6月7日午後6時〜
6月8日午後4時
 場 所  茨戸川
 時 間


 
翠緑の季節。河原の草木も茂り、夏の気配を感じられるようになった。

 私が一番好きな季節。鬱蒼とした壁に囲まれた日常生活から逃避すべく、静かな河原へと向かう。今週は単独釣行で、この季節を満喫することとしよう。

 7日午後6時、到着したのは前回好調だった茨戸川グラウンド裏。創成川か、新川に入ろうと思っていたのだが、やはり一人静かに過ごすには、この場所のロケーションが好ましい。前回と同じ場所にピトンを打ち、釣り方も大きく変更した点はない。

 袋仕掛け(チヌ10号1本針)の仕掛けとダンゴのコンビネーション。ダンゴは、龍王+どすこい+GTSの配合で、食わせはいつもどおりの乾燥コーン+食わせコーン。

 投入点は1番竿を岸から5〜6メートルのちょい投げ、2番竿は15メートル先の深くなっているポイントに打ち込んだ。まだ空が明るく、細かい作業ができるので、音楽を流しながら、これまでの釣行で消耗した仕掛けを作り補充しながら夜を待つ。

 前回とは雰囲気が一変して、風は弱く、気温もちょうどいい。のんびりアタリを待つには最高のコンディションであるが、水中の世界のコンディションが釣り人にとって良いものであるのかはまだわからない。前日の雨により水位は増していて、活性は良いようだが、グラウンド裏ではこのように静かな日ほどアタリが遠くなることが多い。明日の朝までにアタリが無ければ、創成川にでも移動しよう。


 仕掛けをすべて作り終えたころ、ちょうど空も暗くなってきた。木々の茂る対岸では、もう夜だというのに鳥の囀りが止め処なく聞こえてくる。曇り空で月明かりもなく、不気味ともいえる雰囲気だが、可愛らしい鳥の声が、それを丁度良く調和してくれている。

 軽い夕食をとり、一度目のエサ換えも済ませた。さて、センサーが鳴るまでどのようにしてこの夜を過ごそう。誰かと一緒なら、何気ない雑談でいくらでも時間を潰すが、今日はこの釣り場に私一人だ。基本的に私は、誰かと一緒に釣りを楽しみたいタイプなのだが、たまにはこういう釣りも悪くない。本は暗くて読みにくいので、散歩や、持って来た楽器で暇を潰すことにする。

 音楽のセンスや知識などは全く持っていないが、楽器に触れるのが好きで、普段もよく、ピアノや管楽器で遊んでいる。まともな技術や知識がないので、自分流で、オリジナルの曲を作成して、様々な楽器でそのメロディを奏でて、自己満足で楽しむ。釣行時にも、持ち運びがしやすい楽器を鞄に入れていることが多く、今回もリコーダーを持ってきた。

 BRESSAN&STANESBY JUNIORのオリジナルリコーダー。もともと綺麗な単音を奏でられる楽器が好きで、お手ごろな値段だったので衝動買いしてしまったものだ。

小鯉がようやくヒットした 話しかけてくださった方に手伝っていただきながらリリース

 誰もいない河原で、しばらくこのリコーダーで遊んでいると、あることに気づいた。

 刺す虫がいるということをすっかり忘れていたのである。袖を捲り上げて露出した腕にはもう2箇所も刺されたあと。虫避けスプレーも蚊取り線香も用意していないので、虫に肌を刺されないよう、上着を羽織って対処した。次回の釣行からは忘れずに防虫グッズを持ってくることにしよう。それにしても、蚊ほど恩を仇で返す奴を、私は他に知らない(笑) まぁ、鬱陶しいことこの上ないが、虫の羽音も、夏の始まりを感じさせる風情のひとつだろうか・・・・?

 そうこうしていたら、ドンドン!と釣り場に轟く重低音がひとつふたつ・・。ガトーキングダムで花火が打ち上げられた。去年の単独釣行でも、公園前の釣り場からガトキンの花火を仰いだことがあった。釣り場がガトキンから近かったので、花火を間近で見ることができたが、少し離れたこのアングルから見るのもいいものである。釣竿の前、水面に映る夏の風物詩。

 魚を寄せるために、大きめに握ったのダンゴを短い間隔で打ち直しているが、いまだ竿先に反応はない。静かな釣り場で、花火も見れて、これで前回のように釣れれば最高なのだが・・・・。できるなら、ここで釣りを続けたいが、釣れなければ何をしに来たのかわからないので、午前7時までにアタリがなければ、創成川合流ポイントに移動することに決めた。

 眠気が差してきたので、最後のエサ換えをしてから車に入り、寝袋に潜り込んだ。明るくなるまで睡眠をとることにしよう・・・・。


 日付が変わって午前0時ごろ、突然のセンサー音で飛び起きた。完全に眠っていたのでわけがわからず、とりあえず明かりをつけ、落ち着いたところで靴を履いてドアを開けた。

 1番竿のリールから勢いよくラインが出ている。ファイト中も右へ左へと走り、元気よく暴れまわる。懐中電灯で水面を照らし、鯉の位置と体勢を確認してからタモに掬い入れた。

 あまり大きくはなく、60センチほど。手早くリリースして、作り置きしておいたダンゴで再投入。まだ朦朧としているので、手を洗ったあと再び寝袋に潜るが、またすぐに1番竿のラインが出された。今度もさきほどのものとほぼ同じくらいのサイズだろう。検寸はせず、写真も撮ることを忘れ、そのままタモを使ってリリースした。

画像無し
1尾目、60センチほどの小型 2尾目も同じくらいのサイズだった

 連続的にアタリが出たということは、魚が寄ってきているのだろうか。これからが期待できる。夜間は睡眠をとりたいので、頻繁なエサの打ち返しはできないが、その分ダンゴを大きめにし、ウグイなどに取られずに底残りする大粒粒子を多く含ませた。

 いまのところ竿先を揺らすような大型のウグイやフナのアタリはなく、釣りの邪魔をするものはない。針に触ってもアタリも出ないような小さいウグイが集まっているのなら、小さな粒子はあっという間に無くなってしまうが、大粒の粒子は口に入らず、飲み込めもしないくせに仲間と取り合いながら口にくわえて泳ぎ回り、そのうちどこかに落としてしまう。そうなれば、エサは広範囲に広がって鯉を誘い込むインビテーションになってくれるだろう。そういった意味で、ダンゴが纏まりにくくなるくらいの配合バランスで大粒粒子を混ぜている。そのために、ウニ通しなどでダンゴを傷つけずに到着でき、ゆえに空中分解がない袋仕掛けを使用する。大粒粒子は、龍王を振るいにかけて取り出した麦やコーン、またハトのエサなど。

 さて、寝床に戻ろう。少々寝苦しいので、窓を開放したのだが、蚊が入ってくるのを恐れて線香を焚いてみた。蚊取り線香ではなく、お墓参り用に車に置いてあった「青雲」。はたしてこれは効果があるのだろうか・・・というか、これを自ら枕元に立てて眠る私はモラルに欠けているのだろうか。でもそのお陰か、蚊が入ってくることなく、青雲のアロマテラピー効果で(?)よく眠ることができた。


 空が明るくなりはじめた午前3時30分頃。三度一番竿のセンサーが反応した。赤と青のセンサーランプが派手に光り、クリック音が響く。お呼びのようだ。

 車から飛び出し、竿を立て、魚の抵抗を受け止めてみると、なかなかの重量がある。走りや突っ込みはさほど強いほうではないので、単にゴミが絡んで重みが増しているだけということも考えられるが、心の中では「大物」の二文字の期待感であふれる。しばらくして浮き上がってきた鯉を懐中電灯で照らすと、ゴミが絡んでいる様子はない。水面から姿を現せた重量級の魚体。「でかい!!」と思ったが、タモに入れてよく見てみると、下半身が極端に短いのである。まぁ、よくあることだ。

 上半身の体形が尾鰭まで維持されていれば確実に大物のボーダーラインを超えているだろう。タモに入れるまでは、ついに90オーバーゲットか!?と期待していたので、その体形につい笑ってしまった。サイズは74センチ。恐らく、もともと太った体形であるうえに抱卵しているのであろう。

3匹目、74センチ 十分すぎる重量

 抱卵しているということもあり、すぐに写真を撮ってタモでリリース。このまままた、線香くさい車に戻って眠ろうと思っていたのだが、目が覚めてしまい眠れないまま夜明けを迎えた。朝食を買うのを忘れていたので、近くのコンビニでパンなどを購入し、天気がいいので釣り場に折りたたみ椅子を広げて食べる。晴天で、ここちよい一日をおくることができそうだ。

 午前6時、いままで沈黙を守り続けていた2番竿が乱舞した。魚はラインを出し、藻に突っ込みながら走ってゆく。さきほどの鯉と比べればまだまだ軽いが、引き味は最高に楽しませてくれた。上がったのはスレンダーボディに力強い尾びれを備えた鯉だった。サイズは70センチほど。

小鯉がようやくヒットした 話しかけてくださった方に手伝っていただきながらリリース

 この鯉も、稀なくらいに細身で、カッコイイ印象を受ける一尾だ。
 新しくダンゴを作り、1番竿も一緒にエサ換えをする。1番竿の投入点は根掛りがひどく、ちょっと間違えればすぐに仕掛けが動かなくなる。なにやら生活用品や、倒木、投棄された木材なども沈んでいるようだ。回収する途中で針が何かに引っ掛かってしまい、少し苦労させらることになった。

 さて次はいつセンサーが鳴るだろう。しばらく朝日に照らされる水面と竿先を眺めながらリラックスしていたが、だんだん暇になってきたので少し散歩でもすることにしよう・・・

 釣り場から少し歩いたところに、草や藻が群生し、水が淀んでいるところがある。植物が犇き合い、流れてきたゴミなどもひっかかり、少々汚い場所ではあるが、ちょっと覗いてみると、その下に魚の気配がある。鯉が口先を出し、草についた生物を食んでいるようだ。釣れるかもしれない・・。すぐに車に戻り、パンプカ用のシーバスタックルをセットする。ウキはつけず、ラインとハリスと大きめのガン玉、そして針。針には乾燥コーンを付け、さきほど鯉がいた場所に戻った。だが、そこに鯉の姿は消え、すこし離れた場所に移動していた。キャスティングすればなんとかとどくだろうが、着水音に驚いて警戒されてしまうだろう。藻がビッシリと生えていて、キャストしたあとの融通もきかない。鯉は一尾だけでなく、水面の草の間から顔を出しているものはほかに三匹いる。だが、とても狙える距離ではなく、しかたなく諦めることにした。


 車に戻り、転寝や読書などをしていると、とくに何があるわけでもなく時間は過ぎてゆき、何度も竿先に変化はないかと見てしまう。

 これまで3時間置きにセンサーが鳴っていたのだが、午前6時に釣ってから、午前9時、午後12時と、期待はするものの、アタリはない。

 エサ換えのペースを早め、寄せ用のダンゴも数個投げ込んでみたのだが、竿は揺れることなく、時間ばかりが経過して、竿を熱く照らす太陽の位置は刻々と変わっていった。夕方から暗くなるまでの時間をもう少し期待したいところだが、夜から用事があるので長くは続けられない。午後4時、使った検寸台やバケツを洗い、ゆっくりと納竿する。

 明るくなってからの時間はアタリが止まり、寂しいものだったが、今回もいい釣りをすることができた。これからは学校の試験などが私の行く道に仁王立ちしているので、無理やりにでも釣りのために空けていた週末も、それらをクリアするために使わなくてはならない。まぁ、試験勉強ならアタリを待ちながらでもできるのだけど(笑)