鯉釣り日記2008 クロスグリと鯉
 釣行日 4月8日午前10時〜
4月9日午後3時
 場 所  創成川
 時 間


 冬ごもりのフラストレーションを一気に発散すべく、また例年よりも早めの麗らかな春季を感じるべく、学生特権である春休みの最後の2日を使い釣行にでることにした。

 気合は十分。夜間はやはりまだ冷え込むため、一応日帰り釣行の予定ではあるが、寝袋や電灯などのアイテムも準備し、向かうはもちろんホームグラウンド創成川。

 午前9時に出発し、平日の混みあう道を数十分。北五番橋の見慣れた風景。まずはここで車を止め、川を観察してみる。

 北五番橋付近は創成川でもかなり水深が浅いので、水中の観察をして魚などの動きをみるのに適している。創成川の下流部で釣りをする際には別の場所で竿を出すにしてもその前にまずここに来るようにしている。

 風があり、川の水面はざわめき、水中をよく観察することが難しいが、いまのところ流れは弱く、水位は前回よりも増している。魚の活性は高そうだ。平日なので釣り人も少なく、場荒れもなさそうだ。今日も相変わらず北五番橋で竿を出す予定だが、いつもとは少し違った、計画的な戦法をとってみる。

 まず寄せ餌に用意しておいた、ルジェ・クレーム・ド・カシス (カシスリキュール)に浸したカーネルコーンをポイント数箇所と橋の下流30メートル、50メートル、100メートルに撒いておいた。そして車に乗り込みこの場を離れ、午前10時、北五番橋より1つ下流の橋 、上茨戸中間橋下流にてタックルセット完了。別の場所で、別の方法で釣りをしながら、北五番橋のポイントを休ませる。

オモリ部
オモリ:スパイク25号
サキ糸:巨鯉ハリス8号
(固定 捨てオモリ式 フロックボール仕様)

リグ
ハリス:巨鯉ハリス8号
針:チヌ10号
(袋仕掛け)

ダンゴ
龍王+麦茶(ティーパックの中身)

食わせ
乾燥パパイア

 上記の仕掛け、エサでスタートを切る。乾燥パパイヤを食わせにして、一番竿は川の手前側に、二番竿は真ん中に打ち込んだ。ダンゴの場合、早いエサ替えで魚を寄せたいところだが、不自然にエサの存在をアピールすれば、ここの鯉は警戒するだろう。創成川の鯉は年々かしこくなり、小型の鯉ですら私たちの罠を見切る。食わせ、仕掛けのチェックをかねたエサ替えは3時間に一度とした。

 今日はやたらと強風が吹き、小道具が幾度も飛ばされた。風が思ったよりも冷たいので、待ち時間は車の中で読書をして過ごすとしよう・・。暇つぶしグッズとして、いつも持ってくる鯉釣り雑誌「鯉釣りマガジン」「Carp Fishing」の数冊に加え、講談社の「日本の生きもの図鑑」、北村雄一著「深海生物ファイル」をもってきた。

 「日本の生きもの図鑑」は生物分類検定を受ける際、学校の先生に進められて購入した。植物、昆虫、鳥類、哺乳類、魚類その他、1000種が載っている。このように外に遊びに出かけるときには是非、鞄に入れて持ち歩き、意外とわけのわからないその辺の奴らについて調べてみたい。

 もう一冊、「深海生物ファイル」は私が表紙を見ただけで衝動買いしたもの。深海の見えないところにいる奴らは、実にシュールでその生態も謎めいている。妖怪図鑑でも見ているような気分。これらが実際に海にいるのだから面白い。ポケモン並みに個性豊かだ。

 ひさびさの入釣 上茨戸中間橋 アタリ待ちは読書の時間

 3時間経過。昼食前にエサ換えを行う。配合も食わせも投入点もそのままにセット。強風でピトンヘッドの向きが曲がってしまっている。とくに問題はないが、釣り美学的になんとなく納得いかず(笑)きっちりまっすぐ2本そろえた。

 それからさらに2時間が経過したが、何事もないまま竿先は魚信をキャッチしない。そろそろホームグラウンドに戻ろう。今日は川の状況もいいし、うまくいっていれば、今回の食わせエサに対する警戒も、いつもよりはいくらか解かれているかもしれない。

 そもそもそれが今日の作戦。最初に北五番橋のポイントと、ポイントから離れた場所にもカシスリキッドコーンを撒いたのは、このあと食わせに使う予定のコーンに対する警戒心を少しでも解くため。

 普段からコーンを食わせに、寄せエサにもカーネルコーンなどをそのポイントに撒く方法をよくとっているが、コーンはもともと水中には存在しないもの。そんなものがある一箇所にだけ集中して落ちていたらあからさまに怪しいだろう。ましてや、その近くに仕掛けの存在を知ってしまえば、まず食ってこない。そこで、ポイントの数十から百メートル離れた下流の範囲に点々とコーンを撒き、鯉に慣れてもらうことにした。下流に撒いたのは、上流からの下りの鯉よりも、下流からゆっくりと遡ってくる上りの鯉の方がエサを意識している傾向が強いため。その中に、狭い範囲内を上ったり、Uターンして戻ったりしながらエサを探す遊びの鯉が居てくれれば御の字。北五番橋のポイントも仕掛けを入れず、カシスコーンを撒いて5時間休ませ、プレッシャーを落とすようにした。その間、私は暇なので様子見がてらに上茨戸中間橋で竿を出したが、これから使うコーンは一切使わずにやりすごした。まぁ、この場合、北五番橋より上流で竿を出せばよかったのだが、どうしても上茨戸中間橋のポイントが気になっていたので、まぁいいかということで(爆)

 素早く道具を車に収納し、予定通り北五番橋に戻った。午後3時ごろ、ここから本番スタート。仕掛けを下記のものに変更した。

オモリ部は上記のものと変わらず。

リグ
ハリス:巨鯉ハリス8号(25センチ)
針:チヌ10号 (一本針)

エサ
食わせコーン(ウグイが多いのでエサ取りに取られない乾燥のものもつけておく)

 普段観察していると、仕掛けのオモリ部にも鯉が警戒しているように感じるため、針からオモリまでの距離を長くしている。ただ、普通に投げると絡みやすいので、近場から中心部に打つときはフィリッピング、奥に打つときは橋の上からそっと入れる。1番竿の仕掛けを奥に二番竿を真ん中に入れ、そのまわりにまたカシスリキッドコーンを少量撒いた。

 すると投入からものの5分。二番竿にヒット!リールから勢いよくラインを出しながら下流に向かって走る。
 無理をかけずにやりとりをするが、魚も負けずに粘る。こんなエキサティングなファイトは久々だ♪まさに鯉らしい引き。寄せられてもタモを逃れ、誇り高く戦い抜く。淡水の王者はやはりこうでないと。創成川や茨戸川の鯉はあまりこのような引きを見せずにネットインされることが多いが、このような鯉がヒットしてくれるとは嬉しい。上がったのはアベレージオーバー。71センチ。これなら満足だ。

 北五番橋に移動 そしてセットから5分で70台ゲット

 その20分後にアベレージサイズがまた二番竿にヒット。ボウズを回避したので余裕ができて、「こいつ、なんかカワイイ引き方するなぁ〜」とネットインをもったいぶって遊んでいるとスッポ抜けてしまった。・・・・・うん、マジメにやろう。連続ヒットは作戦の効果なのだろうか・・?とはいってもそこまで粘密な作戦ではないが(笑)

 続いて1番竿のセンサーが入り、竿が乱舞した。最初にヒットした鯉のような鋭い引きは見せないが、大きさは同じくらい。
検寸してみると70センチジャスト。ちょっと69.5か・・?ん・・しっぽを伸ばしたら71センチ・・?まぁいいや(笑)これまた立派な鯉だった。

   続いて70ジャスト!  

 このままアタリが続くことを期待したが、ここで止まってしまった。

 次のアタリを待ちながら、釣り場をウロウロしていると、小学生2人組みと遭遇。「お兄ちゃん何釣ってるの〜?」と声を掛けられたので、釣った2匹の写真を見せると、「また釣れたら俺達にちょうだい!」 という。鯉のみならず、ウグイなどももし釣れたら欲しいという。魚が好きなようだ。しばらくその子たちと談笑を続ける。

 「むかし、おじいちゃんが飼ってた金魚が成長して1メートルくらいの鯉になったんだよ〜」

 な・に・そ・れ (笑)

 「ねぇ、そのタモ網貸して〜。」

 「何に使うの?」

 「あそこに落ちてるフナの死体を取りたいの」

 ヤだよアレ汚ねぇもん!!

 とこんな感じのやりとりを続けていると、そこに、なぜか食パンを一枚だけ手に持ちながら「このへんでカモみかけませんでしたか?」と走ってやってきたお姉さん。何事ですか・・というか何者ですか・・・。

 話を聞くと、下流でカモを題材にしたテレビ中継をしているとのこと。よく見ればそのお姉さんが着ているジャンパーはテレビ局のロゴが入っていた。てっきり、「うちのガー子ちゃんがいなくなっちゃったんです!」みたいなアクシデンタルな人に声を掛けられたのかと思ってしまった。しかし残念ながら、いつも釣りの邪魔をしてくる、狙えば鯉よりもヒット率が高いであろう、人馴れし過ぎたここのカモさんたちは、今日は一度も見かけない。いいロケができたのだろうか。。


 そんなこんなで黄昏時を過ごし、気づけばあたりはすっかり暗くなってしまった。
 いつのまにか風は弱くなり、川の水量も減ってきていた。お腹がすいたので、コンビニへ夕食の買出しにでも行こうとしたとき、二番竿のラインが少し弛んでいることに気づく。風が強かったのでその影響かと思ったが、センサークリップとスイッチをつなぐ糸も力なく落ちている。これはおかしい。竿を持つと同時に魚の感触。落としオモリを使用しているので、ラインのふけが顕著に現れなかったのだ。魚は小さく抵抗した後にすんなりと上がって来た。50センチほどだろうか。小顔のかわいらしい鯉だった。

   3匹目はかわいらしい鯉  

 リリース後、車の中で音楽を聴きながら夕食をとり、シュラフと懐中電灯を備えた。今日はちょっと遅くまで釣りを続けよう。できるならば明日の春休み最終日も使ってしまおう・・。

 夜がふけてゆき、気温が落ちてきた。外に出れば吐く息は白い。川の水量は減ると同時に流れは強くなり、上流からゴミが流されてくる。大きなゴミならば落としオモリでかわせるが、枯れて分解されかけた植物の塊のようなものが沈めたラインにまで絡まって蓄積され、流れの抵抗を大きく受けてしまう。落としは外すことにしよう。

 ついでにエサ替えもする。ラインにこびりついたゴミをとり、新しいコーンを針につけて同じポイントに投入。カシスリキッドのコーンも少し撒きなおしてみよう。空気の冷たさに、濡れた手が震える。余計なことは考えずに、すぐさま車に戻ってシュラフにもぐりこんだ。

 午後22時、突然のセンサー音に飛び起きる。窓から竿を見ると、1番竿のセンサーランプが点滅していた。だが、竿が動く気配がない・・。ゴミがひっかかってスイッチが入ったのか・・。2番竿も、大量のゴミがラインにこびりついてしまったのだろう、強くなっている流れに押されて、とんでもない方向に向いてしまっている。もう帰ろうか・・・・。

 アタリがとまり、川は水位が下がっておまけにゴミがひどい。寒いし・・・・。2番竿を手にもち、リールを巻きながら引いてみる。重い・・そうとう大きなゴミがひっかかっているのだろう。竿を持つ腕を胸に寄せ、一気に引きあげようとする。

・・・・ん?

 ゴミがひとりでに動き出した。

 なんだこれ・・・まさか

 ゴミが走りだしたぞ!(笑)

 やっぱりだ。魚が掛かっている。ホンモノのゴミがたくさんついている分、重量があり、なかなかよってこないが、なんとかゴミごとネットイン。60台の鯉が掛かっていた。

 どうしたことか、こんな魚が掛かっていたのにセンサーが入らなかった。掛かったあとにあまり走らずに、手前に寄ってきたりしていたのだろう。

 ちょっとまてよ・・じゃあ実際にセンサーが鳴った1番竿は?

 こちらも引き上げてみる。すると・・二番竿同様に暗い水面に魚の気配。こちらは40台のおチビさんが掛かっていた。

   40台と60台 2匹ともアタリらしいアタリを出さなかった  

 まだチャンスはあるか・・。このまま大型が現れるのに期待して、もうすこしだけ粘ってみよう。この2匹がヒットしてから気づかずにどのくらいの時間が経っていたのかわからない。さすがに場荒れしてしまっただろうが・・・。

 まだ針に残されている乾燥コーンをそのままに、食わせコーンのみ針につけなおした。もう一匹。次のアタリがあったら納竿しよう。夕方のような連続アタリでもあればいいのだが、このペースでは少々、寒さによるモチベーション低下に勝てない。明後日からはまた学校生活だ。風邪でもひいて授業に遅れでもとったらたまったもんじゃない。そんなことを考えていると、この近所に住んでいるという、学校の講師の先生が仕事帰りの車を止め、暖かいコーヒーを差し入れてくださった。車の中でシュラフを肩にかけてコーヒーで暖をとり、しばし時間を忘れて、くだらない思いにふけた。

 午前3時。車内に「エリーゼのために」が鳴り響く。スピーカーから流れる大きすぎるくらいの音量。気づけば二番竿のランプが点滅していた。ラインは下流へ走り出す。隣の一番竿をまたいで、橋をくぐって、更に下流へ走ろうとする鯉を食い止める。
 左腕でかまえる濡れたタモ網が重い。水面にしぶきをあげながら抵抗する相手をキャッチし、暗くてよく見えなかった鯉の姿をライトで照らすと、60センチのアベレージサイズが荒々しくまだ網のなかで暴れていた。

   6匹目 アベレージサイズ  

 鯉をありがたくリリースして、濡れた手をぬぐう。 このへんにしておこう。
 タモ網を洗って、露のしたたる竿を布でぬぐう。作戦が効いた、というか単にコンディションがよかっただけかもしれないが、6匹釣れれば十分満足だ。最初に70台を2本あげたので、そのまま大型が来ることも期待してはいたが、私の釣りは調子のいいときでもこんなもんだろう。午前3時20分、納竿。これからノッコミ期が終わるまでここを攻め続け、晩春からは茨戸にでもいこうか・・。